インタビュー
『クシナ』速水萌巴監督画像

速水 萌巴 (監督)
映画『クシナ』について【1/4】

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2020年7月24日(金)よりアップリンク渋谷ほかにてロードショー

デザイン、装飾などの美術部門から助監督まで、数多くの映像制作の現場で経験を積んできた速水萌巴監督のデビュー作『クシナ』が、7月24日よりアップリンク渋谷ほかにて公開される。監督自身が直面した母娘関係での苦悩を、人里離れた女性だけの集落を舞台とする物語へと昇華。主人公のクシナ役に抜擢された撮影当時9歳の郁美カデール、その祖母オニクマ役で16年ぶりに映画の現場に参加した小野みゆきをはじめ、廣田朋菜、稲本弥生らさまざまな世代の役者陣の共演で神話のような世界を紡ぎ出す。画面の隅々まで美意識が冴え渡り、自然と文明の共存やジェンダーについてなど現代的な問題も考えさせる。ファンタジーの奥深さと普遍性をぜひ本作で味わっていただきたい。公開を前に、速水萌巴監督に本作についてうかがった。 (取材:深谷直子)
速水 萌巴 立命館大学映像学部卒業後、早稲田大学大学院へ進学。在学中から映画やCMの現場で働き始める。助監督を務めた映画『西北西』(中村拓朗監督)は、釜山国際映画祭ニューカレンツ部門、JAPAN CUTSにて上映される。また、主人公の部屋のデザイン・装飾を担当した映画『四月の永い夢』(中川龍太郎監督)はモスクワ国際映画祭で批評家賞を受賞。本作で長編監督デビュー。
STORY 深い山奥に人知れず存在する、女だけの"男子禁制"の村。村長である鬼熊<オニクマ>(小野みゆき)のみが、山を下りて、収穫した大麻を売り、村の女達が必要な品々を買って来ることで、28歳となった娘の鹿宮<カグウ>(廣田朋菜)と14歳のその娘・奇稲<クシナ>(郁美カデール)ら女達を守っていた。閉鎖的なコミュニティにはそこに根付いた強さや信仰があり、その元で暮らす人々を記録することで人間が美しいと証明したいと何度も山を探索してきた人類学者の風野蒼子(稲本弥生)と後輩・原田恵太(小沼傑)が、ある日、村を探し当てる。鬼熊<オニクマ>が、下山するための食糧の準備が整うまで2人の滞在を許したことで、それぞれが決断を迫られていく。
速水萌巴監督画像1
――『クシナ』は日本映画にはなかなかないファンタジー設定の実写映画ですが、お母様との関係に着想を得て作られたということですね。

速水 私が19歳から20歳になるとき母親に対する見方が変わりました。女性って、歳を重ねるにつれて愛の形やベクトルや対象がどんどん変わっていくな……というのを感じます。私自身も変わっているし、母の中で変わっていくのも見てきたし、そういうふうに年代によって変わっていく愛の形を描きたいと思って、この脚本ができました。

――監督が大学生のときということになりますよね。お母様は40代ぐらいですか?

速水 私は大学2年生で、母はいくつかなあ……? 私は末っ子で、母と36歳離れているんです。それですごく過保護に育てられたというのもあるし、世代間のギャップから衝突することもいっぱいあったと思います。

――わりと年齢差があるんですね。そうすると、もしかしたら小野みゆきさんが演じたクシナの祖母のオニクマというキャラクターにもお母様の一部が投影されているのかな?という気がします。

速水 母の一部をオニクマとカグウに投影しました。オニクマ自身がカグウとの間に抱えている問題と、彼女の確固たる愛の部分です。私の母と小野みゆきさんは、顔が似ているところがあるんです。母とはそのくらいの年齢の差を感じていました。

――大学は映像学部に入られたのですよね。そのころお母様とどんなことがあったのでしょうか。

速水 もともと映画の道に進むことをすごく反対されていたんです。8つ離れた姉が美大に行ったんですが、就職でいろいろ大変だったみたいで、親が私にはどうしても普通の大学に行ってほしいと言っていて。結局は姉が裏で両親を説得してくれて映像学部に入りました。先輩の勧めでホドロフスキーやハネケなど今まで観たことがない映画に出会いましたが、そういうのを家で観ていると、母はさらに心配して「こういう映画を見せるために大学に行かせたんじゃない」みたいな。それで心がまたどんどん離れていきました。

――そういう母娘の葛藤を、山奥の集落の中で描いていますが、この風景も監督にとって思い入れのあるものなのでしょうか?

速水 私の実家はここまで山奥ではないので、故郷の風景かというとそういうわけではないんですが、私はいざ映画を撮ろうとなったときに、街中でのドラマにはまったく興味が湧かないんです。小さいときから映画や物語が好きで、空想の世界に没入していたから、どうしても物語と考えると非現実的な設定のほうがリアルで説得力があると感じるんです。現代はみんな建前のもと生きていて、それで描いても私はリアルに感じないなと思って、それでこういう集落を舞台にしました。

――映像美も素晴らしいです。撮影の村松良さんとチームを組んで作り上げたんですよね。お二人でATELIER KUSHINAという名義で活動もされています。

『クシナ』画像 『クシナ』場面画像(廣田朋菜) 速水 はい。村松さんとはお互い現場に出たてのころに、同じ現場で出会って仲よくなりました。その後しばらく会わなかったんですけど、あるとき「MVを撮ったから感想を聞かせてほしい」と連絡がありました。そのMVは私には全然響かなかったのですが(苦笑)、「じゃあどういうのがいいと思うか?」という話をして。私は大学院の卒業制作を撮らなければいけない時期だったので、そこから「じゃあ一緒に撮りますか」という話になって。

――それがこの作品なんですか? じっくり時間をかけて準備をしたのだろうなとなんとなく想像していたんですが、わりとそうでもなく、期限もある中で。

速水 そうですね、わりと急ピッチで作りました。2015年12月にちょうどここ、アップリンク渋谷1階のカフェ・タベラで村松さんと話し合って、翌年の5月には撮影していました。

――村松さんと一緒に美術館に行ったりしながらイメージを膨らませたとお聞きしました。絵画のように撮りたいというのがあったと。

速水 はい。最近の映画を観ていると、情報で物語をつなげていくものが多いなとすごく感じます。私は、初めての映画ということもあって、ワンカットワンカットが意味を持つように撮っていこうと思い、絵画から学ぶことも多いので、二人でいろいろな展覧会を見に行ったりしました。

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クシナ (2018 / 日本 / カラー / 70分 / アメリカンビスタ / stereo)
出演:郁美カデール,廣田朋菜,稲本弥生,小沼傑,佐伯美波,藤原絵里,鏑木悠利,尾形美香,紅露綾,
藤井正子,うみゆし,奥居元雅,田村幸太,小野みゆき
監督・脚本・編集・衣装・美術:速水萌巴
撮影:村松良 撮影助手:西岡徹,岩田拓磨 照明:平野礼 照明助手:森田亮 録音:佐藤美潮
整音:大関奈緒 音楽:hakobune ヘアメイク:林美穂,緋田真美子 助監督:堀田彩未,佐近圭太郎,宮本佳奈
制作協力:村上玲,小出昌輝 協力プロデューサー:汐田海平
配給宣伝:アルミード ©ATELIER KUSHINA
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2020年7月24日(金)よりアップリンク渋谷ほかにてロードショー

2020/07/22/19:51 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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