『クシナ』速水萌巴監督画像

速水 萌巴 (監督)
映画『クシナ』について【2/4】

2020年7月24日(金)よりアップリンク渋谷ほかにてロードショー

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『クシナ』場面画像(稲本弥生、郁美カデール)
――どの場面にも美意識が感じられますが、美術や衣装も監督が手掛けられているのですよね。中川龍太郎監督の『四月の永い夢 amazonリンク:『四月の永い夢 [Blu-ray]』』(17)でも主人公の部屋の装飾を担当されていました。

速水 もともと映画が好きになったのも、映画のセットとかにすごく興味があったからなんです。空間デザインとかをやってみたいと思っていて、小さいWEBのCMに制作部として参加したりしていました。そういう実績もあって中川監督を紹介してもらいました。

――和風の調度が素敵でした。この映画に通じますね。

速水 『四月の永い夢』の主人公はアパートに住んでいるんですが、私は窓にカーテンをつけなかったんですよね。「若い女性が住んでいるのになんでカーテンをつけないの?」みたいな話し合いになったんですが、彼女の古風な感じと揺れ動く心を映すにはガラス面をなるべく見せたいなと思ったんですね。それで窓ガラスを見せ、ガラスのものをいっぱい置くといった工夫をしました。話したらみなさん納得してくれました。

――なるほど。『クシナ』でも、調度などに古いものを使い、質感を大切にしているのが感じられます。

速水 クシナの部屋の家具や壁に貼っているものは、私が実際に使っていたものです。家から持ってきて映画に使いました。

――女性だけが暮らす集落のアイデアはどこから生まれたのですか?

速水 最初は女性たちの会話で成り立つワンシチュエーションものの映画を撮ろうかという案もあったんです。でも私の中にもともとない要素だったのであまり腑に落ちていなくて、村松さんと一緒にシナハンに行ってから考えることにしました。栃木県の湯西川や鬼怒川温泉を訪れたとき、ふと映画のラストカットになるようなイメージが浮かんできて、それは実際には『クシナ』では描かなかったのですが、それを終着点に物語を考えてみようかと脚本を書き始めました。舞台を女性だけの集落にしたのは、もともと女性だけの話にしようとしていたことに引っ張られたのもありますし、『アナと雪の女王 amazonリンク:『アナと雪の女王 MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]』』(13)で「男性は必ずしも物語に必要ではない」ということが提示されて、この作品でも確かに男性の存在がなくても母と娘の関係を描くことはできるなと思い、それがしっくりきたので。いろんな要素が重なってこうなりました。

――設定の説明がかなり省略されていて、たとえば予告編ではカグウが14歳でクシナを産んだということが字幕で説明されるのですが、映画の中では言及されていないですよね?

『クシナ』場面画像(小野みゆき) 速水 一言も説明していないですね。人それぞれ人生にはディテールがありますが、でも他者の人生を見るとき、「彼らは過去にどういう決断をし、それによって人生がどう動いたのか」というすごくざっくりした部分しか見えません。そこにある実際の心情だったり、葛藤だったりは、本人たちのものです。キャラクターが自分の思いを吐露するような映画もありますが、そこで生まれる感情の多くは「共感」あるいは「拒絶」だと思います。キャラクターが何を思い、考えているのか慮ること、それこそが私たちの現実世界に求められていることで、そこに人の成長があると思います。『クシナ』も、登場人物のディテールというよりは、彼女たちが何を決断していくかという現在進行形のことだけを描いていきました。

――母娘の間に様々な葛藤があるように、集落の他の女性たちも、自由を求めて山に入ったのに不自由な山の生活にやはり縛られているし、自給自足はできず外の世界の経済にも頼らざるを得ない。みんな矛盾するものを抱えて生きているんだなあということを考えました。

速水 『クシナ』は母と娘の話ですが、その中で「相互依存」というのも描きたいなと思っていて。私は娘として母親からすごく愛情を受けてきて、一緒に暮らしている間は私の選択には親の意思も必ず入っていたんですよね。そうすることで私の自立心はどんどんなくなり、何か失敗したときに親のせいにしてしまっていました。同時に、母親もすごく私の存在に依存してしまっているんですよね。自分ができなかったことを娘にやってもらいたいという想いがあり、私の自由にさせたいと思ってしていることが実はそうではなかったりする。この集落にもやはり相互依存があるんです。オニクマはみんなを守ろうとしているのですが、オニクマの立場は集落の女たちの存在があってこそ成り立ち、それぞれの自由意志だったものがいつしか依存になってしまう、切っても切れない関係となっているんです。

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クシナ (2018 / 日本 / カラー / 70分 / アメリカンビスタ / stereo)
出演:郁美カデール,廣田朋菜,稲本弥生,小沼傑,佐伯美波,藤原絵里,鏑木悠利,尾形美香,紅露綾,
藤井正子,うみゆし,奥居元雅,田村幸太,小野みゆき
監督・脚本・編集・衣装・美術:速水萌巴
撮影:村松良 撮影助手:西岡徹,岩田拓磨 照明:平野礼 照明助手:森田亮 録音:佐藤美潮
整音:大関奈緒 音楽:hakobune ヘアメイク:林美穂,緋田真美子 助監督:堀田彩未,佐近圭太郎,宮本佳奈
制作協力:村上玲,小出昌輝 協力プロデューサー:汐田海平
配給宣伝:アルミード ©ATELIER KUSHINA
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2020年7月24日(金)よりアップリンク渋谷ほかにてロードショー

2020/07/22/19:52 | トラックバック (0)
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