第10回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門
第33回TAMANEWWABEある視点
杵村春希長編初監督作品
カフネ
2024年10月12日(土)~25日(金)東京・ポレポレ東中野
11月2日(土)~14日(木)大阪・シアターセブンにて公開
無駄なことなんてなかった。
高校三年生の瀬川澪(山﨑翠佳)は、彼氏である遠山渚(太志)との間に、子を妊娠してしまう。 澪は、妊娠したことを渚や家族に打ち明けられずにいたが、たった一人、親友である峯田夏海(松本いさな)には話すことができた。 澪は、様々な困難に直面しながらも、今まで言葉にしてこなかった気持ちを伝えるために、渚の元へ向かう。 世界遺産の街・熊野市を舞台に、この街に生きる彼らの、これまでと、これからを描く。
少女と少年の「恋ではない、なにか。」の物語。
「この街を舞台に映画を撮りたい。」
“大阪芸術大学を中心とした25名の大学生チームが挑む、オール地方ロケの学生映画”
映画『カフネ』は2021年10月に始まった。本作監督の杵村春希が、脚本の千葉美雨に「女子高生の妊娠について本を書いて欲しい」と話したことが全ての始まりである。コロナ禍において、若年層の“望まない妊娠”が増加したというニュースに、杵村が関心を持ったことで本企画が動き出した。
そして、本作が描き出すテーマは、「本音で語り合うことで生まれる真の対話」高校生の“望まない妊娠”という一般的にはセンシティブな内容を扱っているが、これは本質的なコミュニケーションを描く普遍的な物語でもある。心と心が触れ合う喜びと苦しみを感じながらも、そこに間違いなく存在する人間の“美しさ”と“温かさ”を感じてもらいたい。
2023年3月には第18回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門に最年少監督としてノミネートされた。また二日間行われた上映ではチケットが発売開始から半日も経たずに完売し、シネ・リーブル梅田にて満席での全世界初公開を迎えることになる。その後、 2023年11月に東京初公開となる第24回TAMA NEW WAVEある視点部門での上映や第1回きみの海南映画祭にて観客賞・主演俳優賞に輝いた。また海外では、 Chicago Japan Film Collective 2023 特別上映プログラムにて、インターナショナルプレミアを行い、オランダにて実施されたCAMERA JAPAN 2023でも上映された。
監督 杵村春希
大阪芸術大学入学後、撮影監督して数々の自主映画に携わる。自身初となる劇映画監督作品の「カフネ」は、三重県熊野市でのオールロケを敢行し、同大学教員の佐々木原保志撮影監督や三原光尋監督はじめ学科内から高い評価を受ける。また、 2023年3月に開催された第18回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門にて最年少監督としてノミネートされ話題を呼んだ。 2023年11月に東京初公開となる第24回TAMA NEWWAVEある視点部門での上映や第1回きみの海南映画祭にて観客賞・主演俳優賞に輝いた。
[コメント] 私たちは「教室」という鳥かごのなかでモラトリアムを過ごす。固定的な人間関係のなかで、どうしようもなく「満たされない」気持ちを抱えた少女と少年は、互いの「満たされなさ」を図り合い、心身を温める。そのとき、恋というあこがれは、なにか別のもの(これを表現する言葉を私は知らない)に変わってしまう、ような気がする。『カフネ』は、そうした少女と少年の「恋ではない、なにか。」の物語である。この物語を、感情を、私は「映画」ということばを借りて、伝えたい。
私たちがはじめて三重県熊野市に訪れたのは2022年2月。その頃、未完成ではあるが『カフネ』のシナリオがすでに存在していて、キャラクターたちはホンのなかで生きていた。ところが、山と海に挟まれた熊野の街を歩いていると、ホンのなかで生きていた彼女や彼が、ホンを飛び出し、この地で生きていることがはっきりと脳裏に浮かんだ。「『カフネ』はここで撮るしかない。」その時、私はプロデューサーの吉田にこう話していた。
『カフネ』を作り始めて、たくさんの素敵な出会いがあった。大阪芸大で切磋琢磨してきた仲間たち以外にも、他の大学や地域から、ともに『カフネ』を作り上げる人たちが集まった。私たちが熊野に行くたびに、熊野を愛する方々とお会いした。そんな方々の応援のお陰で、『カフネ』はここまで来ることができたんだと思う。私はこうして『カフネ』を作るなかで、生きていく理由を見つけた。私はいま、「人と出会うため」に生きている。もともとは私個人の小さな感情から出発した『カフネ』だが、今たくさんの方々の想いをのせて、映画『カフネ』は進んでいる。
プロデューサー: 吉田光歩
共同プロデューサー:眞鍋瞬 脚本:千葉美⾬,杵村春希 ⾳楽:井澤岳丸 撮影:⾼本優
照明:徳⼭魅⽃ 録⾳:中村駿輔 編集:柳本信鷹,杵村春希 美術:⽥中杏奈,駒澤樹
助監督:⼤井薫幾 制作:⽔⼝綾花
出演:山﨑翠佳,太志,松本いさな,木下隼輔,澤真希,渡辺綾子,杵村宙郎,桜一花,入江崇史
2023年/66分/DCP/日本/シネマスコープ
配給:ハルキフィルム