アテム・クライチェ (監督)
映画『スターシップ9』について【4/5】
2017年8月5日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
公式サイト 公式twitter (取材:常川拓也)
──たしかにジャンル映画的なアプローチで取り組みながらも、現実的な物語展開をしていき、特殊な状況下での男女の愛、あるいは人間の嫉妬やエゴ、裏切りといったものを描いているように思います。
クライチェ 非常に素晴らしい私の映画のX線写真を撮っていただいているような気がします(笑)。ジャンルをもっと自分なりに自由に解釈して、それを背景に物語を語るやり方だと自分では思っています。
──どの作品でもひとつのシンプルで強いアイデアに立脚したハイコンセプトな物語を描いてると思うのですが、最後の結末の部分は脚本を書きながら浮かんできているのでしょうか。もしくはアイデアと同時に浮かんでいますか。
クライチェ ハイコンセプトとおっしゃいましたが、どういう形でコンセプトと自分の中のアイデアが組み立てられてつながっていくのか自分でもよくわかりません。常にiPhoneやiPadなど色々なデバイスを持ち歩いて、自分の中に出てきた断片的な色々なアイデアを書き留めたり、写真を撮ったりして、溜めておきます。それがある時にそのアイデアがある程度形になって、自分の物語としてはじまりと中間部分と最後の結末が見え出す時があるのです。その時に初めて机に座って脚本を書き出します。それまではどんなにアイデアが溜まっていても、その関連性が自分の中に見えて来ない限り、机に座って書くことはしません。アイデアを決めている期間、溜めて机に向かうまでの期間が数ヶ月の場合もあるし、それ以上の時もあります。それはわからないのですが、いつも断片的なものがあって、それが溜まってくる中で段々つながりが見えてきて、机に向かって書く形です。でもそのアイデアが一体どこから生まれるのかはわかりません。
──書き始めた時にはもう話の終わりは見えているということですか。
クライチェ もう少し付け加えた方がわかっていただけるかもしれませんが、はじめと中間と結末がわかるというのは、すごく長い文章ではなく、たとえば3行だけの文章であってもよいわけです。はじめはこういう風に始まる、中間はこのぐらいの展開、終わりはこういう風になるといったように。ただ、自分の中でそういうアイデアが出てきて、それがつながった時に初めて書き出すわけですが、実際に書き出してみたら自分が想像していたような終わりにならない場合があることもたしかです。やっぱり書き始めると物語自体が生き物みたいなものなので、自分が想定していた風に登場人物が会話していかずに、最終的に思いもよらなかった発展の仕方をしていくことがあります。『ヒドゥン・フェイス』も『スターシップ9』もある意味では自分が最初に想定した終わり方とは違ったものになっています。
──『ヒドゥン・フェイス』はアルフレッド・ヒッチコック『レベッカ』(1940)もどこか彷彿とさせるような物語で、ジャンルを横断させながら視点を変えて三層の恐怖を描いているような作品だと言えます。これはどういったところから生まれたのでしょうか。
クライチェ 何かから具体的に着想を得たということはないのですが、自分の中でイメージとコンセプトがありました。『ヒドゥン・フェイス』の場合に最初に浮かんできたものは、ある人が自分の意思に反してどこかに閉じ込められているイメージでした。そして、人間が持つ嫉妬という感情やそこから生まれる三角関係を描くことがコンセプトとしてありました。そういうものに基づいて、自分の無意識のうちにひとつの木がどんどん枝分かれして成長していくように、イメージとコンセプトから物語がどんどん成長して広がっていきました。
監督・脚本:アテム・クライチェ
プロデューサー:クリスチャン・クンティ、ミゲル・メネンデス・デ・スビリャガ
撮影:パウ・エステヴェ 編集:アントニオ・フルトス 美術:イニーゴ・ナヴァロ 音楽:フェデリコ・フシド
出演:クララ・ラゴ、アレックス・ゴンザレス、ベレン・エルダ、アンドレス・パラ
配給:熱帯美術館 © 2016 Mono Films, S.L./ Cactus Flower, S.L. / Movistar +/ Órbita 9 Films, A.I.E.
公式サイト 公式twitter
2017年8月5日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷
ほか全国順次ロードショー
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