松蔭浩之 (監督) × 中村真夕 (監督)
映画『PLAY ROOM』について【2/6】
2018年2018年12月8日(土)~21日(金)まで、シネマート新宿にてレイトショー公開
公式サイト 公式twitter (取材:わたなべりんたろう 協力:熊野雅恵)
監督作品『クローンハート』 鋭い視点と女性ならではの感性で物語を紡ぐ中村真夕が、自らの奇妙な実体験を映画化。OLのみゆきは、謎の男・直樹と出会いデートを重ねるが一抹の不安を持っていた。そして友人のカウンセラー・ミホのアドバイスにより、みゆきは彼の予想外の実態に気づいてしまう。さらにミホは、みゆきに衝撃的な言葉を伝える…。
わたなべ 先のインタビューでも伝えましたが今作は5人で90分ないのがいいですね。海外の短編オムニバス映画でいいなと思ったのは『トワイライトゾーン』と『世にも怪奇な物語』ぐらいしか、こちらはないです。
松蔭 フェリーニも参加している『ボッカチオ'70』や、カルロ・ポンティのプロデュース作品の『昨日・今日・明日』はソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの同じ主演で3つの違うシチュエーションと違うキャラクターの話で監督はヴィットリオ・デ・シーカの1人なので『PLAY ROOM』とは違いますがいいですね。
わたなべ 共通の俳優が女性一人の短編オムニバス映画というのは珍しいですよね。日本ではテレビドラマですが『週刊真木よう子』ぐらいしかないかと思います。また、前回のインタビュー時のナリオさんの言葉にあったのですが、当初は若林美保さんの活動16周年ということで始まった企画で撮影を始める頃は17周年になっていたので各短編の上映時間を17分に設定していたとのことでした。
松蔭 ナリオ君から聞いた縛りは「若林美保さんが出演する」ということと「若林美保さんがデビュー17周年なので17分にする」「17を入れる」ということでした。なので僕の作品は「No.17」を逆から読んで『LION』なんですよ。それが、18、19周年になってしまい、来年はいよいよ20周年なので「17は関係ない」ということになりましたが、そのこともあって各々の作品は17分前後になっています。そもそもは16周年だったので、最初のプロットは、『十六夜』というタイトルでした。『十六夜』の時に撮った映像は『LION』にも入っています。脈絡なく撮っていた映像の中の月が入っていますがそれですね。
わたなべ お話を聞けば聞くほど今作の完成までの経緯は興味深いです。さて(中村)真夕さんの『クローンハート』ですが前回インタビュー時に佐々木くんから指摘がありましたが『クローンハート』は真夕さんの実体験なんでしょうか?
中村 実体験かということはさておき、実体験を要素にしたフィクションというか。作品を観たナリオさんからは「男だったらこういう相談をしないよね」と言われました。設定が恋愛相談する女性というのは女性っぽいよね、とも。唯一女性の監督だから、それでいいと思うのですが。製作意図は「恋バナ女子風に始まるが実は違っていた」というサイコドラマにしたかったのです。
わたなべ 長さはどれくらいですか? ゆおり長いヴァージョンのディレクターズ・カットのようなものはあるのでしょうか?
中村 15分ぐらいでディレクターズ・カットはないです。2日で撮った作品です。
わたなべ 「『クローンハート』を長編にしてください」と言われたらどうしますか?
中村 シリーズ化はできると思います。『ゾンビ』みたいな感じで。黒沢清さんの『予兆』(『散歩する侵略者』のスピンオフ作品)という作品がありましたが、ああいう感じのものをやりたいと思っていました。ローバジェットだけど怖い、みたいな。カーテンがさわさわ・・・不穏なカーテン、みたいな演出がある作品です。喫茶店のシーンは本当はホールなのですがカメラマンの木村さんは「アンリアルじゃない?窓はどこにある設定なの?」と言っていましたが「とにかく黒沢清がやりたい」ということでそのままにしました(笑)。 若林さんは、パフォーマーではありますが女優として訓練を受けてスタートした方ではないこと、また、何もしなくても目力や存在感があるということに着目してクローンがいいかなと思ったのです。『予兆』の東出昌大さんのように棒読み調で演じてもらえればいいな、と思いました。佐伯日菜子さんは今まで怖がらせる役が多かったので、逆に佐伯さんが怖がる役をやって頂こうと思っていました。佐伯さんや草野康太さんはベテラン俳優であり、受けの芝居も上手いので彼らに誘導してもらう形でやっていました。
わたなべ リハはやったのでしょうか?
中村 衣装合わせも含めて通しで1日ぐらいです。スムーズにできました。
わたなべ 3人のバランスが良いように感じました。俳優同士の悪い意味での駆け引きや力関係があるようにも見えなかったし、お互いに譲っている感じにも見えませんでしたし。
中村 佐伯さんと草野さんはタイプの違う俳優さんだし、若林さんも異なるバックグラウンドを持つ存在感のある方で、そうなったのかな。
わたなべ 若林さんは佇まいも良いですし、横顔も美しい方ですよね。
中村 佇まい、雰囲気を持っている方ですね。それから、整音さんが関わってくる中でカラスを使おうということになりました。代々木公園で撮影していたのですがカラスがものすごく多かったので、若林さんにはカラスの化身ということで黒のイメージで来てもらいました。状況を逆手にとってイメージや効果音としてカラスを使うことにしたのです。セリフが多い劇でしたので音楽に力を入れました。前作『午後の悪魔』という作品の音楽に引き続き今回の『クローンハート』の作曲も担当してくださったロンドン在住のYouki Yamamotoさんという方がいて、彼は映画専門で活躍されているので彼にもアイデアを出してもらいました。音楽で作品がかなり変わったという感じです。
わたなべ 音楽はもちろん、編集もかなり映画を変えますよね。カットの1秒、2秒で印象はガラッと変わります。日本人の監督作品は残念ながら、それが雑だなと感じる時があります。海外では低予算のインディーズ映画でも音にはとても気をつかっています。
松蔭 日本の映画は1シーン、1シーンが長過ぎます。
わたなべ 台詞と表情で何重にも説明していますよね。観客が頭の中で想像する余地がない。シーンの解釈が限定された、とてもくどい作りをしていると思います。
松蔭 意味もなく長く女優の顔、アイドルの顔、俳優の顔を撮っている感じがします。
わたなべ 顔で語らせるのはいいと思いますが、顔で語れない人の顔を長く撮っていますよね。カサヴェテスが言っているように「映画において顔は一番のロケーションである」なのに。
中村 編集している時にハッと気が付いたのですが、後半になって若林さんの顔がキラキラしてきて「恐るべし若林美保!」と思いました(笑)。また、別の作品でも若林さんとやってみたいです。豹変する方なので。
『などわ』 監督:ナリオ プロデューサー:川端直樹 原作:『などわ』イギリス人 ほか
『LION』 監督・脚本・撮影・編集:松蔭浩之 ほか
『クローンハート』 監督・脚本・編集:中村真夕 プロデューサー:ナリオ 撮影:木村和行 ほか
『熱海の路地の子』 監督・撮影・編集:佐々木誠 原作:帯谷有理『路地の子』 ほか
『Floating』 監督・脚本:福島拓哉 プロデューサー:本井貞成・岩本光弘・福島拓哉 ほか
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