松蔭浩之 (監督) × 中村真夕 (監督)
映画『PLAY ROOM』について【3/6】
2018年2018年12月8日(土)~21日(金)まで、シネマート新宿にてレイトショー公開
公式サイト 公式twitter (取材:わたなべりんたろう 協力:熊野雅恵)
わたなべ 若林さんは根っからの表現者ですよね。参加監督の佐々木くんは「若林さんの肉体はストイックな筋肉質」と言っていました。だから撮影中はいやらしく撮りづらいので「ストイックな肉体美で行くか」「そうでない方向で行くか」を佐々木くんは迷ったみたいですけどね。
松蔭 佐々木くんの撮り方はガチでリアルというか若林さんの存在を引き出しているよね。特に冒頭の路地のシーンはそうで上手いなあと思いました。若林さんは長身で筋肉質ではあるのだけれど、夏のあの匂いというか……すごくいやらしい。佐々木くんのあの冒頭の若林さんの路地の佇まいは映像史上に残る衝撃的なシーンでした。衝撃的というよりもズン!ときたかな。中村さんの話に戻すと、CGというか何かいじっているのではないかと思うぐらい若林さんの顔の筋肉にオーラが走っていましたね。
中村 素で会うと気さくな普通の方なのですけど映画の中では豹変されるというか。
わたなべ 舞台に立つ仕事を通して人に観られているからではないでしょうか。
松蔭 そういう意味で言うと、ぼくは若林さんを引き出すというより、一つのオブジェクト、若林さんの完成された肉体を様々なライティングやアングルで撮っているという感じでした。かなり近づいたアップで撮ることが多かったので、どこまで寄っていいかモニターでチェックしてもらおうと思ったところ若林さんから「何でもいいですよ、ノーメークでも何でも」とのことでした。若林さんのストリップを観ている人、つまり『ドラミホ』を観ている人も全体像として彼女を見ているので、これだけ近くにじっくり寄った彼女を観ることはないと思います。だから、若林さんをじっくり撮ってじっくり観てもらうことを心掛けました。
わたなべ 今回の映画は若林さんの様々な面が出ていて若林さんにとって良いプロモーションになったと思います。それから何度も言いますが、この映画は疲れなくていいですよね。
松蔭 順番も良いのでしょうね。
中村 ジャンルも別々ですよね。
わたなべ 佐々木くんの作品が前後にドラマを挟んでいるのが効いています。
松蔭 佐々木くんの作品は怖いですよね。福島君のオフビートの作品を福島くん自身は「暗い映画だけどこれで行きたい」と言っていました。その中で若林さんが大声を出すシーンがあるのですが、あの若林さんは凄いです。あれは演出によるものなの?ということを別の映画のトークショーで福島くんに聞いた時に分かったのですが、粘って粘って何テイクも出させてから撮ったのかと思っていたところ「そうでもない」ということで。
『クローンハート』わたなべ 若林さんは自分が今何をやるべきかということが分かる、状況判断が適確に出来る方なのでしょうね。
松蔭 確かに無駄がないです。
わたなべ 現場感覚もあるし、瞬発力と動物的な勘、パフォーマーとしてつちかった本能的なものなのでしょうね。話変わって、チラシにクレジットがありますが今作のチラシのデザインは松蔭さんが担当されたのですか?
松蔭 そうです。僕はグラフィックデザインもやっていますから。償いといっては何ですが、撮影してから2年も完成させていなかったこともあって、みんな手弁当でやっていますので自分ができることはこれだなと思いまして。ナリオくんがチラシに使った素材を、ぼくが現代美術の作品として自分の展覧会で展示した写真を非常に気に入ってくれていまして「この写真をチラシで使いたい」と意見を押し通してくれました。だったらデザインもやりやすいなと思って。ロゴも何パターンか作ってFBメッセンジャーで投げてやりとりしました。チラシ作りは難航しなかったです。
わたなべ そうだったんですね。今回尽力されたナリオさんのことはどう思われますか?
松蔭 本来参加するはずだった2人の監督が若林さんで撮影をしながらも完成させなかったことで抜けて、新たに3人の監督が参加することになり、しかも映画館での上映まで持っていったというのは大変だったの言葉では片づけられないぐらい大変だったと思います。ぼくはナリオさんの人となりが実は最初は良く分からなくてナリオさんの今作の中の作品『などわ』の人情の温かみがナリオさんをよく表しているという感じです。
わたなべ そうだったんですね。より具体的に『などわ』についてはどう思いますか?
松蔭 脚本を読んだ時に若林美保さん主演でこれを撮るのかと思いました。「イギリス人」というバンドのPVが原案になっているというのは知っていましたが。ナリオ君はパンクとロックとかレゲエとかのPVもたくさん撮っているという話を聞いていたので、もっと攻め攻めの話が来るのかと思ったら、そうでもなくて。渋川清彦さんというとても上手な俳優さんを起用している、というのもあるのかもしれませんが、すごく柔らかいお話でした。
中村 作品を観て『星の王子様』が好き、という話を聞いて、『星の王子様』と作品の繋がりをよくよく聞いているうちに優しい人なんだなと思いました。参加した監督5人ともやってきた仕事やバックボーンが違うのですが、ナリオさんが最終的に決めるということが多かったです。
わたなべ 黒沢清さんが学校の教え子の学生に「個性はどうやったら出るのですか?」と聞かれて、「個性は出てしまうものだから気をつけなさい」と黒沢さんが答えたという話があるのですが『プレイルーム』がまさにそうだなと思いました。参加監督の個性が見事に出ていますよね。そこが本当に今作の面白いところであり、その違う作風の中に主演している若林美保さんが見所になっています。
中村 私は他の人に合わせようとは思いませんでした。
わたなべ こちらは佐々木くんのことは作品も含めて割と良く知っているので、やはり佐々木くんの個性が良く出ているなと思いました。それで面白かったです。今回の『プレイルーム』の公開で劇場にお客さんに来てもらうのは若林さんの従来のファンでない方をどれだけ取り込むか重要かと思います。そして、この多様な趣向の作品ならそのことが可能だと思います。
中村 今回は若林さんには脱いで欲しくなかったです。ストリッパーとしての背景をお持ちですが、そうでない資質を引き出した方が面白いと思っていました。
『などわ』 監督:ナリオ プロデューサー:川端直樹 原作:『などわ』イギリス人 ほか
『LION』 監督・脚本・撮影・編集:松蔭浩之 ほか
『クローンハート』 監督・脚本・編集:中村真夕 プロデューサー:ナリオ 撮影:木村和行 ほか
『熱海の路地の子』 監督・撮影・編集:佐々木誠 原作:帯谷有理『路地の子』 ほか
『Floating』 監督・脚本:福島拓哉 プロデューサー:本井貞成・岩本光弘・福島拓哉 ほか
、Pickpic、ベンジャミン・プリュボ、日本ロハス、ninetytwo13、木主弘之、PARIBAR、あおい書店、福島竜治、福島美歩、福島初奈 製作:P-kraft
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