松蔭浩之 (監督) ×
中村真夕 (監督)
映画『PLAY ROOM』について【1/6】
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2018年2018年12月8日(土)~21日(金)まで、シネマート新宿にてレイトショー公開
女優であり現役ストリッパーである若林美保を主演にしたオムニバス映画『プレイルーム』が公開中の、松蔭浩之監督と中村真夕監督にインタビューを行った。 (取材:わたなべりんたろう 協力:熊野雅恵)
監督作品『L I O N』 メディアを選ばず自由な発想で表現活動を続ける現代美術家・松蔭浩之が描く、サイケデリックなSF奇譚ムービー。謎の男の手によって誘拐された獅子座の赤ちゃんは、「No.17」と名付けられ秘密結社の倉庫に監禁されたまま成長した。人造人間テロリストとなって街に放たれる彼女に課せられた使命とは?
わたなべ 先におこなったナリオさん、福島さん、佐々木くんの3人の参加監督と主演の若林さんのインタビューで松蔭さんの作品に勇気付けられたという声が複数ありました。「ここまでやっていいんだ」という意味でした。「大胆でスタイリッシュだ」とも。ナリオさん、佐々木さん、福島さん、松蔭さん、真夕さんが作品ができた順番ですがお互いの完成作を見ての話です。
松蔭 ナリオ君は手が早くて作品が最初にできたのですがクランクインは僕と同じぐらいの時期でした。ただ、企画がスタートしてからいろいろあって「これはすぐに話がまとまらないな」と思ったんですよ。ローバジェットで完成が目標ではあるけれど、どのように上映するかということもなかなか決まらない気がして、かなり長引くだろうなと。1年ぐらいの中で四季折々と言うと言い過ぎですが、いろいろなシーンを撮っておいて、いざという時に編集するという方法を取りました。結局、1年半のうちの5日間、若林さんと5回セッションをして撮りました。
撮影方法において、誰を意識した、というのはないけれど長いタームで撮って、髪型が変わろうが体型が変わろうが顔つきが変わろうがそれでいいと。女テロリストをストーリーの元に改造人間を作っていって最終的に何かを爆破するという軸になるストーリーは頭の中にあったので散文詩のような形でストーリーが繋がるような絵をたくさん撮っておけばいい、という方針にしていました。ナリオ君が色々と動いてくださって上映館が決まって編集しないと、となったのですが気持ちとしてはお蔵入り覚悟でしたね。
わたなべ 完成させなくてもいいと思っていたのでしょうか?
松蔭 思っていましたね。たくさん撮っていましたし。
わたなべ どれぐらい撮っていたのでしょうか?
松蔭 5日間で計2時間分ぐらいですね。テイクがいくつもあるものもありますし、かなり割愛したシチュエーションもあります。編集していく中で大きく変わったのは順を追ってストーリーを説明して行くということをやめたことです。低予算で行くという手段として、同時録音をせずにアフレコでというのは最初から決めていましたから、今回の作品は全てナレーションにしていて同時録音をしていません。また全て自分で作業するということも決めていました。音は二の次でアフレコで、ナレーションで行くのであれば若林美保さんの声でなくてもいい。一度ざっくり自分の中で他の女性の声に置き換えてストーリーをナレーションで流してみたのですが、説明くさくなってしまって。そこで、ナレーションがストーリーの説明になるようなことはやめて、ストーリーが主人公のつぶやきみたいなもので15~16分で出来ないかなと思って編集を終えた後にナレーションを入れました。
わたなべ ナレーションで構成した感じでしょうか?
松蔭 まずは音楽で構成しました。ものすごく単純でミニマムなサンプリングで作っているような感じで作りました。要するに人件費を削減するということです。
わたなべ ジョン・カーペンターもそうですよね。お金がなかったので『ハロウィン』の音楽を自分で作った。『LION』は音楽がすごいですよね。音楽は昔からたしなんでいたのですか?
松蔭 音楽はやっていました。今もバンドをやっています。低予算であるということは言わない方が良いのではないかという声も今作の参加監督からあったのですが、自分はどちらかというと現代においては予算がなくてもこれだけ大胆なことができる、アイデアとセンスがあれば作れてしまう…そのことをもって自分の作品を大胆だと言ってくれたのなら、とても嬉しいです。
わたなべ 「勇気づけられた」と言っていました。
松蔭 編集作業を始めた時には若林さんを撮影してから2年間が経っていましたが、参加する監督のメンバーがフィックスして劇場も決まったので、リーダー役のナリオ君や新しく加わってくださった監督たちのおかげもあり当初の予定と違う展開にもなって行き、参加監督同士のグループメッセジャーで「来週までに上げてください」という指示があったことに対して「あと1週間伸ばしてくださいませんか」と申し出ることもありました。「あと1週間あれば尺を縮められる、いや逆に伸ばすこともできる」、そういうやり取りをしながら締め切りを伸ばしてもらったというよりは、モチベーションがどんどん上がっていったという感じです。
わたなべ 「1週間後には仕上げる」と宣言することによって自分を追い込んでエネルギーを発揮したという感じでしょうか。
松蔭 今回はプロの監督達に囲まれていたのですが、プロの監督はいいものを作ることは当然のことながら早く上げてなんぼというのがある。そこを僕は芸術家気取りというか、現代美術をずっとやってきた悪い癖で、締め切りは当然守るのだけどギリギリになって見えてくるものがあって、そこをみなさんに甘えながら、相談しながら最終的にこれで手離れとなるところまで作れたことを他の参加監督の皆さんにはとても感謝しています。
わたなべ 最終的に何分ぐらいになったのでしょうか?
松蔭 最初は20分ぐらいでした。そこで「オムニバスだから2時間を超えた方が良い」「いや超えない方が良い」という議論が参加監督であって、それに左右されて尺を詰めたことがありました。尺を縮めてみたら、ものすごくテンポが早くなってせっかちになってしまった。 自分が学校で教えている生徒たちに見せたら「音楽しか頭に入ってこない」「言葉が頭に入ってこない」「映像が頭に入ってこないけど、そういう目論見なんですか」と言われて、それでは残念な結果を生む可能性があると思って、慌てて「あと1分伸ばすことはできますか?」とナリオ君に聞いて「1分ぐらいなら」という回答があって最終的に16分になりました。
『などわ』 監督:ナリオ プロデューサー:川端直樹 原作:『などわ』イギリス人 ほか
『LION』 監督・脚本・撮影・編集:松蔭浩之 ほか
『クローンハート』 監督・脚本・編集:中村真夕 プロデューサー:ナリオ 撮影:木村和行 ほか
『熱海の路地の子』 監督・撮影・編集:佐々木誠 原作:帯谷有理『路地の子』 ほか
『Floating』 監督・脚本:福島拓哉 プロデューサー:本井貞成・岩本光弘・福島拓哉 ほか
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