SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014
長編コンペ部門選出日本人監督鼎談
加藤悦生 × 草野なつか × 遠藤幹大
公式サイト (司会/鼎談まとめ:わたなべりんたろう)
草野なつか監督
『螺旋銀河』©Natsuka Kusano司会 個別に作品について聞きます。『PLASTIC CRIME』はタランティーノやそれ以降の映画、特にアクション映画の影響を感じたんですが、その点はどうでしょうか?
加藤 タランティーノは意識していなくて、さっきも言ったポール・トーマス・アンダーソンなどなんです。映画はなんでも見るので最近では『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』が面白かったです。
司会 『PLASTIC CRIME』は飛び蹴りシーンの唐突さと、あまりない画面つなぎの編集が新鮮で良かったです。
加藤 あのシーンは下にマットを敷いているのでああいう寄った画面になりました。面白い効果を生んでいるのなら嬉しいです。
司会 ラストは賛否も含めさまざまな感想があると思いますが、その点はいかがですか?
加藤 あのラストのこちらの解釈は言いたくないんです。監督が言ったら、それが正解のようになってしまいますから。観る人が自由に考えてほしいので。
司会 分かりました。『螺旋銀河』は完成されすぎているぐらいの完成度だと思います。ラストも含め伏線も見事でした。
草野 ありがとうございます。
司会 では撮影に関してで正面からのフィックスの構図が多いですが、その点に関してはいかがですか?
草野 実は撮影の段階ではレールなどで移動撮影したシーンもあったんですが、編集の段階であのようになりました。
司会 でもそれはいいことだと思うんです。当然のことですが監督のヴィションを何よりも優先するのが映画ですから。静的な作風はヨーロッパ映画好きかと思ったのですがどうでしょうか?
草野 時代も国も関係なく何でも観るように心がけてはいます。ただ、まだまだ観ることが出来ていない作品も多くて...これから観ます!(笑)。
司会 ラストのコインランドリーで主役2人がラジオを聴くシーンの人の出入りなどの動かし方が効果的でした。
草野 ありがとうございます。個人的にもとても気に入っているシーンです。
司会 では遠藤監督で『友達』は短いエピソードのつながりのような構成ですが、こうした意図は?
遠藤 最初は主人公の視点に拘って脚本を書いていたのですが、進めていく中で会社に訪れる来客の側を描くべきだろうと考え変更していきました。結果複数の視点が入り組むような形になったし、その事はこの題材を描く上で適しているなと思いました。
司会 顔の寄りが多いのはあまり回りを映したくないからかとも思ったんですがいかがでしょうか?
遠藤 回りを映したくないという意識は全く無かったです。というより劇中で描かれる会社の説明をどれだけしてもつまらないなと思ったのと、ならいっそ小細工せずに俳優に寄り添うことで、この特異な設定の会社にある種のリアリティーが生まれるのではないかと。
司会 ラストはテロを企てることを大きなアクションうや爆破(CG合成を含む)などを使わず日常の風景の中で描いています。エドワード・ヤンの『恐怖分子』やハネケの『タイム・オブ・ウルフ』などを想起しましたが、この点はいかがですか?
遠藤 予算上の問題も勿論ありますが、大きなアクション、爆破を使わずに決定的な出来事が「起きた」って感じをどう表現するかという所で、あのような形になりました。
司会 黒沢清さんの作品がそうですよね。こちらも大好きですが『タイム・オブ・ウルフ』などです。予算が無いのをデメルットでなくメリットにするという。
遠藤 そういう影響はもしかしてあるのかもしれませんが、主人公が「立派な」ラストをむかえ、自己実現する。それだとちょっとなんだか違うぞと。それが大きかったように思います。
監督:加藤悦生 出演:伊藤和哉、鄭美奈、辻しのぶ、小林真実、片岡功、小池真吾、鈴木タロオ
螺旋銀河 監督:草野なつか 出演:石坂友里、澁谷麻美、中村邦晃、恩地徹、石橋征太郎
友達 監督:遠藤幹大 出演:山本剛史、松本花奈、大庭裕介
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014
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