伊藤 洋三郎 (俳優)
映画『秋の理由』について【1/4】
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2016年10月29日(土)より新宿K's cinemaにてロードショーほか全国順次公開
20代から舞台俳優として活動し、テレビシリーズ「あぶない刑事」や常連で参加する石井隆監督作品など、ハードボイルドな作品を中心に幅広いフィールドで活躍する伊藤洋三郎さん。福間健二監督の新作『秋の理由』では、声を失った親友の作家を支えながら、一方で彼の妻に恋心を寄せる等身大の編集者役で新しい魅力を見せている。そんな伊藤さんにお話をうかがった。色を消してたたずむように演じたというが、作品の解釈や現場の様子などをフラットでありながら熱い口調で語り、表現に対する情熱が伝わってきた。 (取材:深谷直子)
伊藤 洋三郎 1955 年生まれ、静岡県出身。早大中退後六月劇場にて裏方の後、自由劇場を経て映画 TVへ。1989 年松田優作演出の舞台「モーゼル」に主演。その後演劇ユニット「海のサーカス」「水銀」にてプロデュースと出演。CM ナレーションも多数。 主な出演作品に『ア・ホーマンス』(86)、『刑務所の中』(02)、『花と蛇』(04)、『百円の恋』(14)、『恋』(14)、『GONIN サーガ』(15)等。
STORY 宮本守(伊藤洋三郎)は、本の編集者で、小さな出版社「黙示書房」を経営しているが、経営は苦しく、事務所をたたむことになる。宮本の友人・村岡正夫(佐野和宏)は作家だが、代表作『秋の理由』以降、もう何年も小説を発表していない。精神的な不調から声が出なくなり、筆談器を使っている。宮本は村岡の才能を信じ、彼の新作を出したいと思っている。そして実は、村岡の妻・美咲(寺島しのぶ)が好きなのである。
ある日、宮本と村岡の前に『秋の理由』を何回も読んだというミク(趣里)が現れる。ミクは『秋の理由』のヒロインに似ていて、まるで村岡の言葉から生まれたかのような存在である。
ミクと過ごす時間の中で、宮本は美咲への思いをはっきりと自覚するが、美咲はそれを受け入れてくれない。けれど、美咲と村岡の関係は険悪になる。村岡は、正気と狂気の間を揺れ動き、難民的な男女の群れの中に自分がいる夢をよく見る。村岡は自分のそばに宮本がいることを苦痛に感じ、宮本にそれを言ってしまう。すると、宮本は怒りを爆発させる。村岡に、自分に、そしてこの世界のあり方に。
STORY 宮本守(伊藤洋三郎)は、本の編集者で、小さな出版社「黙示書房」を経営しているが、経営は苦しく、事務所をたたむことになる。宮本の友人・村岡正夫(佐野和宏)は作家だが、代表作『秋の理由』以降、もう何年も小説を発表していない。精神的な不調から声が出なくなり、筆談器を使っている。宮本は村岡の才能を信じ、彼の新作を出したいと思っている。そして実は、村岡の妻・美咲(寺島しのぶ)が好きなのである。
ある日、宮本と村岡の前に『秋の理由』を何回も読んだというミク(趣里)が現れる。ミクは『秋の理由』のヒロインに似ていて、まるで村岡の言葉から生まれたかのような存在である。
ミクと過ごす時間の中で、宮本は美咲への思いをはっきりと自覚するが、美咲はそれを受け入れてくれない。けれど、美咲と村岡の関係は険悪になる。村岡は、正気と狂気の間を揺れ動き、難民的な男女の群れの中に自分がいる夢をよく見る。村岡は自分のそばに宮本がいることを苦痛に感じ、宮本にそれを言ってしまう。すると、宮本は怒りを爆発させる。村岡に、自分に、そしてこの世界のあり方に。
――伊藤さんは石井隆監督の作品などでの個性の強い演技が印象的だったので、『秋の理由』での淡々とした演技はとても新鮮でした。
伊藤 普段はこんな感じなんですよ。地ですね(笑)。
――福間健二監督とは以前から面識があったんですか?
伊藤 初めてです。僕はキネ旬とか映画芸術とかをここ30年ぐらい読んだことがなくて、でも飲み屋でたまたまもらった雑誌に福間さんの記事が出ていて。沖島勲監督の追悼座談会の記事で、それを読んでしばらくしたらお会いしたのですごいなあと思いました。最近そんなことが多いんですよ。何かに操られているみたいな(笑)。
――(笑)。脚本を読んだときはどんなことを感じましたか?
伊藤 監督にも言ったんですけど、各シーンのストロークが短く、散文的にシーンを貼り合わせるような作品なので、人物の感情で引っ張っていく話ではないなと。だから宮本役に関しては、演じるというよりもベースになって、“ただそこにいる”という人になろうと。他の人物たちが浮き立つように、絵で言ったら白いキャンバスで、他の登場人物が色を載せて描いていくような感じ。多分そういうふうにしか宮本という役はならないですよ、ということを監督に言いました。
――どの監督にも意見は言われるんですか?
伊藤 言いますね。自分もときどき舞台の演出をしたり脚本を書いたりするので、言ってくれた方がありがたいと思っていて。言われたことをそのまま受け入れるわけじゃないですけど、一緒にやる人が思っていることを知ることは大事だと思うし、「じゃあどうすればいいと思う?」というキャッチボールですよね。基本的にはやってなんぼだから言わない方がいいわけで、黙ってやるときもありますよ。やって見せて、ダメなら違うことをやるだけで。だからすべてを言うわけじゃないけど、自分が主役のときは、脚本の段階で感想だとかを言うときもありますね。言えば「監督はまだ固まっていないのかな?」とか、「ここはお任せしよう」とか、そういう感触もわかりますからね。