「the face」品田誠特集上映
『モラトリアム』トークイベントレポート【2/3】
登壇者:藤原季節(俳優)× 品田誠(俳優)
トークは引き続き『モラトリアム』の話題に。藤原が「登場人物がみんなスーパー孤独ですよね。その中でマコちゃんが演じていた葛城という役だけ孤独や悲しみの正体がわからないみたいな。吉原という女性との交流を通して悲しみの正体に近づいて、ようやく自分の本心を話すんだけど、そうすると吉原は離れて『私は……』となって。こういう混沌こそが映画だなっていう感じがしますよね」と感嘆。さらに「自分の言葉じゃない言葉を自分の言葉として言うわけだから役者は難しいですよね。そこはどう埋めています?」と品田に質問を投げかけた。
品田は「『モラトリアム』って基本的にキャラクターは役者に当て書きしているんですが、僕の役だけモデルがいたんですよ。僕だけが違う人を生きることになって、最初にまず自分との共通点を探しました。僕も上京して間もない時期で、表現に対する恥ずかしさみたいなものがあったんです。葛城も恥ずかしがり屋で自分自身をちゃんと見つめていない、ごまかしてうやむやにしてしまう人間で、『僕もこういう人間だった可能性もあるな』と想像を広げていきました。あとは動きから作っていったところもあります。ちょっと身体のくせみたいなものを出しながら、まわりにいる葛城により近い人間をイメージして動いていたら、正体が感覚で掴めてきた気がして。この作品に関してはそういう作り方をしていたな、と観ながら思い出していました」と答えた。
「自分の内面との共通点を探したり、外からのアプローチをしてみたり、と」と品田の話を興味深そうに聞いていた藤原。彼のほうは今までのところ「胡散臭さの一歩手前」といった極端な役柄を演じることが多かった。「動作から埋めていくようなのはすごくわかる。やってみて初めて『この人がこういうことをするのはこんな感情だからなのかな?』とか。『全員死刑』(17)をやったときも『頭をちょんまげにしたい』とか自分から提案して。あれぐらい外から埋めていっちゃうと、もう全然ハジけられる。舞台挨拶でバナナなんか食べちゃったりして」と笑いを取りながらも、現実離れした役にリアリティを持たせるための試みを語った。
そんな藤原は、所属していた大学の演劇部の後輩に頼まれてワークショップを行ったことがあるそう。品田が「何を教えたのかな?」と興味津々の表情で尋ねると、藤原は、「某監督のワークショップで教わったことを丸パクリしました(笑)。『こっちに行きたい』という人を『行かせたくない』という人が必死で止める。それを台詞に近づけていくと『もうお前しかいないんだよ!』ってめっちゃ白熱していくという。10代の子たちすげぇ!って感じでしたね」と振り返った。 品田は、「芝居って外側から埋めるのと内側から埋めるのと、色々あると思うんですけど、いちばんはゴールの方向を設定して『この人物は何がしたいのか?』という欲求を明確にすることだなと。そのゴールに行きたいと信じられたとき、『止める演技をしてください』と言われて頭で作る演技を超えたものが出てくる。いいワークショップをしたなあと思います」とうなずいた。