第 52 回インド国際映画祭(ゴア) 金孔雀賞グランプリ受賞
主演・笠松将(『花と雨』)×ヒロイン・阿部純子(『孤狼の血』)
リング・ワンダリング
東京・下町を舞台に、過去と現在が織り交ざる、切なく幻想的な物語。
2022年2月19日(土)、渋谷シアター・イメージフォーラム
ほか全国順次公開!
人間の「生」や「死」に実感のない若者が、不思議な娘と出会い「命の重み」を知る。過去と現在が織り交ざる、切なく幻想的な物語。
漫画家を目指す草介は、絶滅したニホンオオカミを題材に漫画を描いているが、肝心のオオカミをうまく形にできず前に進めない。そんなある日、バイト先の工事現場で、逃げ出した犬を探す不思議な娘・ミドリと出会う。転倒しケガをしたミドリを、彼女の家族が営む写真館まで送り届けるが、そこはいつも見る東京の風景とは違っていた……。
草介はミドリとその家族との出会いを通じて、その土地で過去に起きたことを知ることになる。東京の土地に眠る、忘れられた人々の想いがよみがえる、幻想譚である。
監督は初長編『アルビノの木』が海外映画祭で20もの受賞を果たした金子雅和。主演はいま最も勢いのある若手俳優・笠松将。ヒロインに阿部純子。
初長編監督作『アルビノの木 』(16)が海外映画祭で 20 の賞を獲得し注目された金子雅和監督。自然と人間の関係性を描いてきた監督が、はじめて東京を舞台に、町や人々の記憶と対峙した。美術監督は『Shall we ダンス?』(周防正行監督/96)で日本アカデミー賞最優秀美術賞受賞の部谷京子、劇中漫画は水で書き、そこに墨を落とす技法が特徴で、『花筐/HANAGATAMI』(大林宜彦監督/17)の宣伝ビジュアル画を担当した森泉岳土が務め、現実と幻想が入り交ざる世界観を作り上げた。主人公・草介を演じる笠松将は日本テレビ系「君と世界が終わる日に」や Netflix「全裸監督 シーズン2」、マイケル・マンがエグゼクティヴ・プロデューサーと第1話を監督する WOWOW のドラマシリーズ「TOKYO VICE」など話題作への出演が続き、注目を集める若手俳優。地に足がつかず漠然とした不安を抱える現代の若者のリアルを、絶妙なバランスで演じている。ミドリと梢の二役を演じる阿部純子は海外作品にも多数出演する国際派。本作では、幻想世界のヒロインの神秘性を体現した。ほか、主演映画が相次ぐ安田顕、金子監督の初長編『アルビノの木』でも存在感を放った長谷川初範、日本映画界に欠かせない片岡礼子らが脇を固める。
1952 年から始まったアジア最大の映画祭、インド国際映画祭(ゴア)で最高賞である金孔雀賞受賞の快挙!
さらに本作は、第 37 回ワルシャワ映画祭でのエキュメニカル賞スペシャル・メンション授与、第 22 回東京フィルメックスのメイド・イン・ジャパン部門での上映に続き、11 月 20 日から 28 日にインドのゴア州で開催された第 52 回インド国際映画祭(ゴア)コンペティション部門で上映され、現地時間 11 月 28 日 16 時(日本時間 19 時半)から行われた授賞式で、最高賞である金孔雀賞(ゴールデン・ピーコック・アワード)を受賞する快挙を果たした。
現地時間 11 月 26 日に INOX Panjim(シネコン)で上映された際は、517 席の会場がほぼ満席となり、上映後は「素晴らしい!」「美しい!」「この映画が好きだ」など、ストレートでポジティブな感想を、現地にいた金子監督まで伝えに来る観客が後を絶たなかった。
アジアでは東京、上海、そしてゴアのみが、国際映画製作者連盟が認めている長編コンペのある国際映画祭で、本作は同映画祭においてコンペティション部門に出品された唯一の邦画。日本映画の受賞は、今井正監督の『あにいもうと』(76)、降旗康男監督の『鉄道員(ぽっぽや)』(99)についで、『リング・ワンダリング』が史上 3 番目となる。これまでの金孔雀賞受賞作は、2014 年にアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の『裁かれるは善人のみ』、2015 年に、今年の審査員でもあるシーロ・ゲーラ監督の『彷徨える河』、2017 年にロバン・カンピヨ監督の『BPM ビート・パー・ミニット』など、日本でも劇場公開された世界的に評価される監督たちの作品が多く受賞している。
- 妖しく美しい怪異譚!
猟師が獲物を狙い撃つ様は、カメラマンが被写体にレンズを向けてシャッターを切る様を想像させる。
それは自然界から芸術を切り抜こうとする監督自身の姿なのかもしれない。
――乙一(作家) - 三つの時間、時空を超えた恋愛、戦争への反対声明。
静かな語り口だが描かれるのは大きな物語だ。それでいて間違いなく今を撃っている。
金子雅和の現在進行形の到達点であり、そして何より阿部純子の永遠性が素晴らしい。――瀬々敬久(映画監督) - 草介を演じる笠松将が秀逸だ。
写真はじめ、様々な痕跡を巡る旅路は、笠松の相貌へと収斂させる。
出来事や歴史は直接描写されず、最終的に笠松の表情という痕跡は、彼の役者としての成長の徴として刻まれた。
――ヴィヴィアン佐藤(ドラァグクイーン/美術家) - 幾つかの視座が交叉する。
過去の視座と現在の視座。
人の視座と動物や森の視座。
それらの視座が円環をなす。
そして私は世界に開かれる。
映画は超越的感受性が失われたと嘆く。
それをニホンオオカミの絶滅に重ねる。
時空を超えて出会ったミドリもそうだ。
ミドリ演じる阿部純子の芝居が絶品だ。
未規定性を享楽する笠松将も凄く良い。――宮台真司(社会学者/映画批評家) - 端正な劇中画。
特殊な描画法は版画の如く直接性を弱め、絵と二重写しの像を生む。
映画初見。物語から、映像から突然に引き剥がされ何かを見る瞬間がある。
ストーリーを知らぬ身が映画を踏み惑い一度きり出会う『映画の幽霊』。
――山口晃(画家) - 時空を超えたり、劇中マンガの物語に出入りしたり、幾層もの世界に誘ってくれて、1作に映画数本分の刺激が満ちている。ナチュラルで、スピリチュアルで、ドラマチック。鮮やかなエンディングにも脱帽!
――矢田部吉彦(前東京国際映画祭ディレクター)
- この映画は、冒頭から崇高なラストショットまで、我々に魔法をかける。
それは感動的な詩情とマジックリアリズムの感覚を持ち、シンプルな作りは古典的風格だ。
そして俳優たちの演技には、物語を実現するための確かな技術と繊細さがある。
――ベンジャミン・イリォス(カンヌ国際映画祭 監督週間) - 『リング・ワンダリング』は、現代の日本社会に木霊する過去からの残響を映し出し、幻想と漫画と現実の織り交ざりを美しい画作りで表現する。
この映画では、複雑で多面的な日本の苦悩に満ちた過去の傷の物語が、演出と演技によって非常に繊細に描かれ、心躍るような体験となっている。
戦時中の記憶を蘇らせようとしているが、本作は戦争映画ではない。
むしろ人間同士の関係を軸としながら、理解出来る限界を超えたものへの思索を、我々に促しているのだ。
――ラフシャーン・バニー・エッテマード(映画監督/イラン)、シーロ・ゲーラ(映画監督/コロンビア)ほか、第 52 回インド国際映画祭 審査委員一同 - 金子監督の映画の中の自然は映像に包まれて眠りたいと思えるほど、実際に見る自然よりも美しいと思っていたのですが、今回は東京の街並みも、またそこにいる人間もまた実際よりも遥かに美しかったです。
絶滅した生き物、叶わぬ夢が支える美しさ。
リングワンダリング状態に陥った私たちにこれからも新しい地図を与えて頂きたいと思います。――石橋英子(音楽家) - 私が生まれる前からそこにいて、私が死んだ後もきっと、そこにいるもの達。
自然のものに触れるとき、いつもそれを思います。
この作品の中で出会ったもの達を見てよりそれを実感しました。
昔に会ったあの山や風の音の事を思い出しました。
――山本奈衣瑠(女優、モデル) - 私たちは漠然とした不安に苛まれながらも、不自由ない生活を当たり前のように生きていて、その豊かさに疑問を抱くことなく日々を過ごしている。
漫画家を目指す若き青年が不思議な人々と出会い紡いでいく物語は、今私たちの生きる場所が尊い命の上にあるということを気づかせてくれた。
笠松将という役者の細やかな芝居に引き込まれ、主人公が辿る時空を超えた物語を追体験した心地よい感覚が残る。 ――柴崎まどか(写真家) - 過去に、創作物のなかに、そして現在に、迷い込んだのは一体誰だったのか。
言葉を交わすから忘れられなくなり、言葉を交わさないから記憶にこびり ついて離れない。
金子雅和はいつだって人、動物、時間に優劣つけることなく対等に見ようと挑戦し続けている。
この闘い方〈映画〉はかっこいい。――睡蓮みどり(女優、文筆家)
監督:金子雅和 脚本:金子雅和,吉村元希 劇中漫画:森泉岳土 音楽:富山優子
撮影:古屋幸一 照明:吉川慎太郎 美術:部谷京子 録音:岩間翼 音響:黄永昌 VFX:高橋昂也
スタイリスト:チバヤスヒロ メイク:知野香那子 イメージボード:金子美由紀 助監督:土屋圭
制作主任:名倉愛 アソシエイトプロデューサー:松井晶子 ラインプロデューサー:武石宏登
キャスティング:大松高 エグゼクティヴ・プロデューサー:松本光司
プロデューサー:塩月隆史,鴻池和彦 製作協力:中山豊,中田直美
製作:リング・ワンダリング製作委員会(Monkey Syndicate、ラフター、プロジェクト ドーン、cinepos、kinone) 2021年/日本/103分/カラー
©2021 リング・ワンダリング製作委員会 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
2022年2月19日(土)、渋谷シアター・イメージフォーラム
ほか全国順次公開!
- 監督:金子雅和
- 出演:松岡龍平, 東加奈子, 福地祐介, 増田修一朗, 尾崎愛
- 発売日:2019/1/5
- おすすめ度:
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