第77回 ヴェネチア国際映画祭 オリゾンティ部門 オープニング作品選出
第56回 シカゴ映画祭 脚本賞|2021 ダブリン国際映画祭 作品賞
第93回 アカデミー賞® 国際長編映画賞 ギリシャ代表
林檎とポラロイド
2022年3月11日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界――。
それでも男は毎日リンゴを食べる。
「お名前は?」「覚えていません」――。バスの中で目覚めた男は、記憶を失っていた。覚えているのはリンゴが好きなことだけ。世界は、記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延し、治療として「新しい自分」と呼ばれる回復プログラムが行われている。毎日送られてくるカセットテープに吹き込まれた様々なミッションをこなしていく。自転車に乗る、仮装パーティーで友達をつくる、ホラー映画を見る。そして、その新たな経験をポラロイドに記録する。様々なミッションをこなして行く中で、ある日、男は、同じくプログラムに参加する女と出会い、仲良くなっていく。しかし、「新しい日常」に慣れてきた頃、男は忘れたはずの以前住んでいた番地をふと口にする……。「哀しい記憶だけ失うことはできませんか?」口数の少ない主人公が治療を通して心に宿した本当の思いとは――?
次回作は早くもハリウッド進出決定!
クリストス・ニク鮮烈のデビュー作!
本作の監督を務めるのは、リチャード・リンクレイター(『6才のボクが、大人になるまで。』)や、ヨルゴス・ランティモス(『女王陛下のお気に入り』)の助監督を務めていたクリストス・ニク。奇抜なアイデアと人間への優しい眼差し――彼らの持ち味を独自に昇華させ創り上げたデビュー作『林檎とポラロイド』は、ワールドプレミアとなった2020年ヴェネチア国際映画祭で上映されるや、「見事なまでに胸を打つ<ガーディアン紙>」「魂のこもった今日性のある映画<ヴァラエティ誌>」と、その独創的で普遍的な物語に、絶賛の嵐が巻き起こった。さらにその評判を耳にしたケイト・ブランシェットは、監督に才能に惚れ込み、エグゼクティブ・プロデューサーとして参加することを熱望し、新たにクレジットされた。次回作はケイト・ブランシェットプロデュース、キャリー・マリガン主演で製作が決定! 2作目にして早くもハリウッド・デビューを果たすクリストス・ニク。世界が注目する監督のひとりとなる。
監督オリジナル脚本による本作は、哀愁とユーモアが絶妙なバランスで調合され、近未来的な設定ながらも、人肌のよう
な温もりに満ちている。見る者は、主人公の寡黙で物憂げな表情、どこか滑稽で真面目なふるまいに笑い、そして明かされ
ていく過去に胸を熱くするに違いない。
ケイト・ブランシェット×クリストス・ニク監督 対談映像
「人とのつながりなしに、自分は存在するのか?」 C・ブランシェット
「記憶というテーマは、パンデミック後も残る物語」 クリストス監督
ケイト・ブランシェットは、映画の1シーンからパンデミック(コロナ禍)で、「人とのつながりなしに、自分は存在するのか?私たちは人の記憶の中に存在するのか?」と自分の存在について考え、「この映画はとても深いと感じた」と感想を述べた。
一方、クリストス監督は、コロナ前の製作でありながら、コロナ禍を意識させる作品となったことに対して「共感を得やすくなったと思います」「パンデミックの中で、人々は孤立感や将来への不安を抱き、喪失感、孤独感を持っています。」と映画との連動性を感じつつ、「記憶というテーマは、時を超えて、この先も通用する内容で、パンデミック後も残る物語」だと、本作が普遍的内容であることも強調した。
- 例えば猫がかわいい、自転車に乗った時の疾走感、忘れていったら?
記憶力の低下、固有名詞が出てこない、
この映画が誰にでも起こり得る記憶について寓話的に
描いて観る人の心に静かに問いかける。
記憶を失ってからの人間らしさ、幸せ、孤独との向き合い方。
随分こういう感触の映画に触れてこなかった。
久しぶりに味わいました。
いい映画。――岡村靖幸(音楽家) - ヌーヴェルバーグの映画を見て、映画におけるインテリジェンスを知った学生時代の原風景がフラッシュバックしました。
久しぶりに「鑑賞力」を試される映画。何度も何度も見返したい。
――シトウレイ(ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト) - 一体、自分は何を観ているんだろう?”と思い始めた矢先、
ぼんやりと流れていた時間がクッキリと輪郭を持ち始めた。
主人公のとある“決意”を知ったうえで、もう一度ファーストシーンから観たくなる。――山下敦弘(映画監督) - 日常のさりげないことが不確かな「私」に輪郭を与えていることを知った。
この映画を観ると「発見」の意味が変わる。りんごの皮を剥く感触や甘酸っぱさほど確かなものはないと思うようになった。
――鈴木康広(現代アーティスト《りんごのけん玉》)
- 消えていく記憶には消えていく理由がある。
忘れてはならない記憶は絶対に消えない。
見つめていくのだ、消えていくその日まで。
この映画は消せない記憶となりうる
静なる大エンターテイメントだ。――筧利夫(俳優) - ブルーグレーを基調とした画面の中に一人の男がいる。
それだけの、そして巧妙な物語。
観る者に添ってシリアスにもコメディにもなるだろう。
忘れたい現実に直面した時、日常茶飯事が最強のミッションになってくれる。
――佐野未央子(漫画家『日日べんとう』) - 生きていると、忘れたい記憶・消したい過去がゴマンとある。
この映画は、計算されたシンプルで無駄のない構図の美しさに惚れ惚れすると同時に、必要最低限のものしか置かれない寂しさや冷たさが常にある。
ふと思う。もしかしたら、無駄で邪魔に思えるようなことの積み重ねが、人生の彩りを生むのかもしれない。 ――枝優花(映画監督/写真家) - 静謐なトーンで淡々と描かれる喪失と再生の物語。
記憶を失った男がシュールな記憶再生プログラムを通して得たものとは……。
胸の奥に隠していた哀しみ(のようなもの)をそっと癒やしてくれる美しい映画です。――川上健太(CD ジャーナル編集長) - ポラロイドを撮るという行為によって、
過去を失った主人公の現在ですらも過去であることを突きつけられる。
ユーモアに溢れた物語と、静かで美しい映像の調和が素敵でした。
――嶌村吉祥丸(アーティスト/フォトグラファー) - 光の捉え方が繊細で印象的な色の記憶が残った。
「人はすぐ忘れる」という言葉が強く印象に残っている。
写真を撮ろうが撮るまいが人はいつか忘れてしまうと思う。
その時写真が残るか残らないかだけの違いだと思った。
身体的なことは全て体が記憶している。――東海林広太(写真家)