第二の人生を模索する元大学教授と、家出した主婦
突然始まった小さな旅は、新たな自分を見つけるための第一歩

文学教授の職を引退し、念願のアジアへやって来たピエール。気功のワークショップを終え、残り一週間を沖縄の島々を旅して過ごそうと考えていた彼は、那覇在住の主婦、純子に出会い、一日の観光ガイドをしてもらう。それきりの縁に思えたが、夫の暴力に苦しむ純子がピエールのもとに逃げ出してきたことから、ふたりの関係は急接近。純子は家族を置いてピエールの旅に同行すると言い出して……。
思いがけない展開に戸惑う初老のピエールと、久しぶりに味わう開放感に胸を躍らせる純子。性格も境遇もまったく異なるふたりの道中は、様々なカルチャーギャップと静かな内省を繰り返しながら、ゆったりと進んでいく。

悠久の自然とおおらかな人々の営み
異邦人の目から見た沖縄の姿

舞台となるのは、沖縄本島と、本島の北西に位置するいぜな伊是名、いへや伊平屋、ぐしかわ具志川の島々。青く透き通った海、どこまでも続く白い砂浜、生命力あふれる草木などの自然美と、年季の入ったカラカラや、人間国宝の平良敏子が織る芭蕉布に象徴される土地固有の豊かな文化が、主人公ふたりの旅を鮮やかに色づける。また、異邦人の視点で映し出されるこれらの光景は、沖縄を舞台にした日本映画によく見られる陽気で賑やかなイメージとは違う、プリミティブな神秘性に満ちており、ロマンチックな旅情をかきたててやまない。

工藤夕貴×ガブリエル・アルカン×クロード・ガニオン×新良幸人
日本とカナダの才能のコラボレーション

純子役には、『SAYURI』『ラッシュアワー3』といった大作から相米慎二、ジム・ジャームッシュ作品まで、国籍を超えて数々の作品で圧倒的な存在感を放つ工藤夕貴。ピエール役には、フランス語圏のカナダ映画を中心に活躍し、カナダのアカデミー賞といわれるジニー賞を二度にわたって受賞している名優、ガブリエル・アルカン。世界の映画ファンを魅了してきたふたりが、円熟した演技で繊細な大人の機微を見せる。
監督は、日本、カナダ、フランス、アメリカと国境を超えて意欲作を発表し続けるカナダ出身のクロード・ガニオン。日本人女性の日常を赤裸々に捉えた伝説のATG作品『Keiko』（79）でデビューして以来、『ケニー』（87）、『KAMATAKI -窯焚-』（05）などでモントリオール世界映画祭、ベルリン国際映画祭などで数々の受賞歴に輝いている。本作では沖縄に対する深い思い入れをもとに、誰もが共感せずにはいられない普遍的な人間ドラマを描き、見事モントリオール映画祭でダブル受賞を果たしている。
サウンドトラックには石垣島出身で現代の沖縄音楽シーンをリードする新良幸人を起用。唯一無二の唄声が主人公たちの旅立ちを祝福する。