ベルリン国際映画祭 3 年連続 銀熊賞受賞の快挙
名匠ホン・サンス監督の日本公開最新作 2 本同時公開
『イントロダクション』
『あなたの顔の前に』
『イントロダクション』
『あなたの顔の前に』
2022年6月24日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか 2 本同時全国順次公開
第 71 回ベルリン国際映画祭銀熊賞(脚本賞)受賞
『逃げた女』に続くホン・サンス監督の長編 25 作目
『イントロダクション』
思い通りにいかない人生の痛みと愛おしさ
先の見えない時代に生きる全ての若者たちへ
2021 年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(脚本賞)受賞した長編 25 作目『イントロダクション』は、モラトリアムな時期をさまよう青年を主人公に、前作『逃げた女』の変奏ヴァージョンとしても楽しめるモノクロームの青春映画だ。 2022 年にホン・サンス監督の最新作となる長編 27 作目『The Novelist’s Film』が、ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員大賞)を受賞し 3 年連続銀熊賞受賞の快挙を果たし、さらなる注目が高まっている。
将来の進路も定まらず、まだ何者にもなれないナイーブな青年ヨンホ。韓国とベルリンを舞台に、折り合いの悪い父、夢を追って海外に旅立ってしまった恋人ジュウォン、息子の進路が気がかりな母との再会と三つの“抱擁”を通して、一人の若者の人生が紐解かれていく。誰もが経験する青年期の迷いや喪失、孤独を抱え、恋に夢に破れながらも、やがて心安らぐ温もりに満ちた瞬間が訪れる……。
主人公ヨンホに、『逃げた女』の“猫の男”役で奇妙なインパクトを放ち、本作の繊細な演技で初主演を飾ったシン・ソクホ。その他、『お嬢さん』(16)のキム・ミニをはじめ、ソ・ヨンファ、キ・ジュボン、チョ・ユニほかホン監督作品の常連キャストが顔を揃えた。
監督・脚本・撮影・編集・音楽:ホン・サンス
出演:シン・ソクホ、パク・ミソ、キム・ヨンホ、イェ・ジウォン、ソ・ヨンファ、キム・ミニ、チョ・ユニ、ハ・ソングク
2020 年/韓国/韓国語/66 分/モノクロ/1.78:1/モノラル
原題:인트로덕션 英題:Introduction 字幕:根本理恵
配給:ミモザフィルムズ © 2020. Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved
ホン・サンス監督× プロダクション・マネージャー キム・ミニが魅せた新境地
国際シネフィル協会賞主演女優賞受賞イ・ヘヨン、圧巻のパフォーマンス
『あなたの顔の前に』
残された人生を、いかに心穏やかに生きていけるのか
たった 1 日の出来事を通して触れる 1 人の女性の心の深淵
2021 年カンヌ国際映画祭プレミア部門オフィシャルセレクションに招待された長編 26 作目『あなたの顔の前に』は、中年女性サンオクを主人公に一人の女性の心の深淵に迫るストーリー。日本でも、第 17 回大阪アジアン映画祭の特別招待作品として初上映された本作は、ホン監督の公私にわたるパートナーのキム・ミニがプロダクション・マネージャーを務めたことでも話題を集めた注目作だ。
本作でホン監督作品に初登場にして主演を飾ったのは、韓国歴代の名監督とタッグを組み、40 年のキャリアを誇る大女優イ・ヘヨン。観る者の心を揺さぶる圧巻のパフォーマンスでミステリアスかつ複雑な主人公を体現し、 2022 年国際シネフィル協会賞主演女優賞を受賞。最新作『The Novelist’s Film』でも主演を務めている。
長いアメリカ暮らしから突然、韓国へ帰国した元女優のサンオク。母親の死後以来、久しぶりに家族と再会を果たすが、帰国の理由を明らかにしない彼女の内面には深い葛藤が渦巻いていた……。サンオクはなぜ自分が捨てたはずの母国に戻り、思い出の地を訪ね歩くのか?捨て去った過去や後悔と向き合いながら、かけがえのない心のよりどころを見出していく、たった一日の出来事が描かれていく。
劇中の“告白”によって明かされるタイトルの意味に心揺さぶられながら、複雑で豊かな感情揺らめくサンオクの心の旅に、ホン・サンス監督の新境地がうかがえる珠玉のドラマが誕生した。
監督・脚本・製作・撮影・編集・音楽:ホン・サンス
出演:イ・ヘヨン、チョ・ユニ、クォン・ヘヒョ、シン・ソクホ、キム・セビョク、ハ・ソングク、ソ・ヨンファ、イ・ユンミ、カン・イソ、キム・シハ
2021 年/韓国/韓国語/85 分/カラー/1.78:1/モノラル
原題:당신 얼굴 앞에서 英題:In Front of Your Face 字幕:根本理恵
配給:ミモザフィルムズ © 2021 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved
ホン・サンス監督 公式インタビュー
映画『あなたの顔の前に』について
――本作『あなたの顔の前に』の中心にあるのは女優イ・ヘヨンの素晴らしい演技ですが、彼女はあなたの映画への出演は初めてでした。彼女の出演をどのようにしてお決めになったのか、それからもっと一般的に、あなたのキャスティングの仕方についてもお伺いしたいです。たいていの監督は、演じて欲しい役がまずあって、台本に描かれている役にふさわしい俳優を探しますが、あなたは台本なしに始めます。どのようにして台本がない状態で出演する俳優を決めていくのですか?
ホン・サンス監督まず、次の映画をいつ撮り始めるのか、その日を決めます。撮影の初日は 1 カ月後か、2 カ月後になるかわかりませんが、たとえば「9 月 5 日に始める」と決 める。後で変更しなければならないこともありますが、たいていはうまくいきます。撮影初日の 1 カ月前くらいから一緒に仕事ができる俳優たちのことを考え始めます。その時点では 2 つのことが必要になります。撮影場所と、主演俳優たちです。そこから映画のことを考え始めますが、アイデアや台本がまずあって、その役に合わせて俳優を決めるのではなく、その反対です。俳優たちと、場所がまず必要で、そこから始めます。その段階では 1000 個くらいのアイデアが生まれる可能性もありますが、主演俳優を誰か 1 人を決めてしまえば…それは直感で決めますし、特に理由はないのですが、男性か女性か…主演俳優が決まればアイデアも 5 個くらいに絞られます。それから他の俳優たちを決めていく中で最終的なアイデアが立ち上がってきます。アイデアがすべてではなくて、それは映画のアウトラインというわけでもありません。たとえば今回の映画の場合は、イ・ヘヨンに初めて会った時、彼女の姿を見て、予期せず、私は亡くなった姉のことを思い出しました。他にも私の人生にまつわることを思い出し、そして、これから作る映画のアイデアが生まれ、それが映画の出発点になりました。
――今回の主演のイ・ヘヨンとはこれが初めての仕事でしたが、彼女は俳優として長いキャリアのある 80 年代のスターですね。映画関係者の娘で、父親のイ・マンヒは、 60~70 年代に非常に有名な映画監督でした。
彼女の父親はとても有名な映画監督でした。ジャンル映画を撮っていますが、幅広く多様な映画でした。その仕事振りから、まわりの人たちは彼のことをある種の天才だと思っていましたが、私は彼の映画を一本も観ていません。
――まったく観ていないのですか?(笑)
あぁ…1 本観ていました。父と母が製作した映画です。私の両親は映画プロデューサーで、彼の映画を 1 本製作しています。イ・ヘヨンにカリスマということばがふさわしいかどうか分かりませんが、彼女はカリスマがある俳優として知られていました。女優としての演技力だけでなく人格も認められていました。人格が演技よりも重視されている俳優はあまりいませんが、彼女はそのような俳優でした。私が、映画の撮影を始める日を決めた時、イ・ヘヨンの名前が浮かんできましたが、それはたぶん彼女が私の母の葬儀に列席されたからだと思います。思いがけず、いらっしゃった。彼女の友人が私の母と友人で、その友人に誘われて母の葬儀に来られたのだったか。その時に数分ほど話しましたが、それが私の心に残り、のちに映画を撮ることに決めて主演俳優が必要になった際に、イ・ヘヨンの名前が思い浮かびました。電話をかけたら歓迎してくださって、ぜひ一緒に仕事がしたいと熱意を示された。
――あなたは俳優をキャスティングする時に、彼らの過去の仕事のことはあまり知らず、むしろ、その人がどんな人柄であるかに興味があるとおっしゃっていますね。俳優たちが過去に演じた映画の役柄や姿などはあまりよく知らないから、と。
私が見ているのは俳優たちの過去の仕事ではありません。特に、初めて仕事をする相手なら、その人がどんな人であるか、その人柄を見ようとします。彼女は素 晴らしい経歴の人かもしれませんが、それはどうでもいいことです。その人に会って得られる印象の方を大切にしたいからです。話を始めると 2 時間くらいになることもありますが、話しながら、ひとつの「手がかり(track)」と呼んでいいでしょうか。曖昧な、まだよく知らぬ人が私の目の前にいて、その一方で、私という人間もその場に存在し、その私が目の前の人から流れ出してくる「手がかり」を大切に受け止めて、物語か何かが私の中に浮かんでくるのを待つのです。そのとき彼女から私に示されるあらゆる「手がかり」を、私は受け止めます。イ・ヘヨンに初めて会った時もそうでした。
――あなたの仕事の進め方について面白いのは「反復」という点です。同じ映画の中で、あるいは、ある映画から別の映画へと枠を越えて、(出演する俳優や登場人物、場所など)繰り返し描かれることがあります。くだらない質問かもしれませんが、あなたは、繰り返しになることをそれほど気にしていらっしゃらないのでしょうか?
何かを繰り返そうとしても、まったく同じように繰り返すことはできません。しかし、見方を変えれば、すべてが繰り返すとも言えます。気にしても仕方がない。今していることを通して新鮮な何かを感じられるなら、繰り返しになってもかまいません。
――映画を後で確認しないのですか?
ある日、アシスタントがやってきて、私にとても気を使いながら「あの…別の映画にあったこのセリフが、そのまま出てきましたが」(笑)
ホン・サンス監督――変更しましたか?
いいえ(笑)。前にも言いましたが、何かまったく新しいことをしようとしても、それは不可能です。そして、まったく同じことをしようとしても、それも不可能です。大切なのはもっと違うことですから、気にしません。
――それでは、少し踏み込んだ質問をさせていただきます。本作に関して、もう 1 つ重要なテーマである「信念(belief)」についてお伺いします。「信仰(faith)」の問題ですが、映画『あなたの顔の前に』の中で主人公のサンオクは独白を繰り返します。感謝の気持ちを表すマントラの呪文のような、祈りのような言葉を繰り返しますが、彼女がどのような神を信じて、どのような信仰を持っている人なのかは明かされません。「信仰」は、あなたの映画にどのように入ってゆくのでしょうか?
その話題について話すのはとても長い時間がかかってしまいますから、今はこんな風に言っておきましょう。彼女の振る舞いや言葉、独白は、あの建物にある他のすべてと同じようにあの場所で私が受けとめたものでした。私は、自ら探し求めて見つけたものではなく、与えられるものには敬意を払うことにしています。心を開こうとすると必ず何かがやってきますが、そうして授けられるものに対しては敬意を払います。それを私は、与えられたものを私が受け入れるプロセスと呼んでいます。彼女のあの独白や言葉や祈りは、同じプロセスを通して受け入れたものです。それは私の中で起こっていた何かを反映するものでもありますが、とてもとてもとても私的なことですから、言葉にするのは気をつけねばなりません。話はここでやめます(笑)。
2022年6月24日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか 2 本同時全国順次公開
- 監督:ホン・サンス
- 出演:オ・ユノン, ペク・チョンハク, イ・ウンジュ, チョン・ボソク, ムン・ソングン
- 発売日:2022/7/6
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