『ひと夏のファンタジア』初日舞台挨拶レポート【1/3】
韓国の俊英、チャン・ゴンジェ監督の長編第3作となる『ひと夏のファンタジア』が6月25日、渋谷のユーロスペースで公開初日を迎え、来日したチャン監督と女優のキム・セビョクさん、そして日本人キャストの岩瀬亮さんと康すおんさんが、上映後の同劇場で舞台挨拶を行った。(取材:深谷直子)
なら国際映画祭の映画製作プロジェクトNARAtive2014年度作品として製作された本作は、奈良県五條市にシナリオ・ハンティングにやってきた監督と人々との邂逅を描く第1章、そしてそこから生まれた淡いラブストーリーの第2章からなる2部構成を、同じキャストが演じるというもの。チャン・ゴンジェ監督の作品が日本で劇場公開されるのはこれが初めてとなる。
主人公の友助が柿農家であるという設定にちなんで柿色のタオルを肩にかけて登壇したチャン・ゴンジェ監督は、「この映画は、みなさんご存じの河瀨直美監督プロデュースのもと、2年前に奈良の五條で撮った映画です。日本のみなさんがどんな感想を持ってくれたのかな?というのがとても気になっています」と感慨深げに劇場を見渡した。
また、撮影時のエピソードを尋ねられて「この作品は第1章と第2章に分かれていて、第1章はシナリオがありましたが、第2章はシナリオがない状態で撮らなくてはならず、毎日俳優たちと相談して、即興で撮った部分も多い映画です。俳優にしてみたらそういう作り方は面白いものかもしれませんが、監督としては悩んだり大変な想いをしながら作った映画です」と振り返った。
第1章では通訳のミジョン、第2章では韓国からの旅行者ヘジョンを一人二役で演じたキム・セビョクさんは、赤いワンピース姿で可憐に登場。「海外で撮影するのも、監督や俳優が合宿のように一緒に寝泊まりしながら撮影するのも初めてだったので、その経験自体が楽しいものでした。すごく暑かったなあ……ということを今思い出しました」と、当時のことを語り、それからとても嬉しそうな笑顔で客席に目を向け「今日はこの作品の撮影監督に来ていただいているんですけど、監督が汗をダラダラ流して撮影していたことを思い出しました」と、藤井昌之撮影監督を紹介して再会を喜んだ。キム・セビョク藤井監督は、今年4月に行われた韓国のインディペンデント映画の映画祭「ワイルド・フラワー映画賞」で、 最優秀撮影賞を受賞したばかり。チャン監督も「トロフィーは受け取りましたか?」とお祝いの言葉をかけた。
岩瀬亮さんは最近脚を怪我したそうで、松葉杖をついて登場。万全の状態で来られかったことを残念がりながら、チャン監督の独特な撮影法を明かした。「第2章はシナリオがなく、シーンのスタートと終わりがはっきりしていなくて、ほぼワンシーンワンカットで撮ったのを切り取っているんですけど、実際はどのシーンも20分とか30分とか平気で回していたので、撮りながら『これは6時間ぐらいの休憩ありの映画になるんじゃないか?』と思っていました」と、笑いを交えながら語った。
監督・脚本:チャン・ゴンジェ プロデューサー:河瀨 直美、チャン・ゴンジェ
出演:キム・セビョク、岩瀬 亮、イム・ヒョングク、康 すおん
製作:NPO法人なら国際映画祭実行委員会・MOCUSHURA
配給:「ひと夏のファンタジア」プロジェクト2014-2016 © Nara International Film Festival+MOCUSHURA
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