西原 孝至 (監督) ×
岩瀬 亮 (俳優)
映画『シスターフッド』について【1/6】
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2019年3月1日(金)よりアップリンク渋谷にて公開中、全国順次公開
『わたしの自由について』や『もうろうをいきる』など、近年はドキュメンタリー映画で活躍する西原孝至監督の最新作『シスターフッド』は、東京に暮らす女性たちの生き方をドキュメンタリーと劇映画を織り交ぜて描く、不思議な感触のモノクロ映画。歌手のBOMIとヌードモデルの兎丸愛美という表現者たちが、カメラの前で一人の人間として自分の考えを語り、ドラマパートに出演する岩瀬亮や遠藤新菜は、出会う言葉や出来事に役を超え本人として繊細に反応する。現実とフィクションが入り混じる世界で、他人の心の奥を覗き込んでみるような体験は、人に向き合うことの大切さに気づかせるとともに、反転して自分が肯定されているような心地よさももたらしてくれる。閉塞した日本の社会で、生きづらさを感じる人にぜひ観て、考えてほしい。西原孝至監督と、その分身のような池田役を演じた岩瀬亮さんに、4年をかけた製作のプロセスや、そのきっかけとなった#MeToo運動について、映画作りを通してのそれぞれの想いなどをうかがった。 (取材:深谷直子)
岩瀬 亮 1980年11月10日生まれ。2005年、「SEX GANG CHILDREN」にて舞台デビュー後、ポツドール、サンプル、ハイバイなど話題の劇団公演に多く出演。その後『イエローキッド』(09/真利子哲也監督)に主演、2015年には河瀬直美プロデュースの日韓合作映画『ひと夏のファンタジア』(16/チャン・ゴンジェ監督)の主演に抜擢され、同じく韓国で公開された『最悪の一日』(16/キム・ジョングァン監督)も異例の大ヒットで話題となる。その他の映画出演作に、『バクマン。』(15/大根仁監督)、『ディストラクション・ベイビーズ』(16/真利子哲也監督)、『過激派オペラ』(16/江本純子監督)などがある。
STORY 東京で暮らす私たち。 ドキュメンタリー映画監督の池田( 岩瀬亮) は、 フェミニズムに関するドキュメンタリー の公開に向け、取材を受ける日々を送っている。 池田はある日、 パートナーのユカ ( 秋月三佳)に、 体調の悪い母親の介護をするため、彼女が暮らすカナダに移住する と告げられる。ヌードモデルの兎丸( 兎丸愛美) は 、淳太( 戸塚純貴)との関係について悩んでいる 友人の 大学生・美帆( 遠藤新菜) に誘われて、池田の資料映像用のインタビュー取材に応じ 、自らの家庭環境やヌードモデルになった経緯を 率直に答えていく。独立レーベルで活動を続けている歌手の BOMI( BOMI)がインタビューで語る、“幸せ とは”に触発される池田。それぞれの人間関係が交錯しながら、人生の大切な決断を下していく。
――西原監督と岩瀬さんは以前からお知り合いだったんですか?
西原 いえ、今回の映画で僕がお声がけさせてもらって、それがきっかけです。
――監督の分身のような池田役に、岩瀬さんを選ばれたのはどうしてですか?
西原 岩瀬さんが出ていた『ひと夏のファンタジア』(16)という映画が大好きなんです。もちろんその前から岩瀬さんのことは知っていましたが。で、今回、僕が2015年ぐらいから撮っていたドキュメンタリーに加えてあらたにフィクション部分を撮って1本の映画にしようとしたときに、作品を貫く存在がほしいなと思い、半分自分を投影しているような映画監督役を用いることにしました。誰にお願いしようかな?と考えたときに、『ひと夏のファンタジア』のときの岩瀬さんのイメージが浮かんでご相談しました。
――『ひと夏のファンタジア』も現実と幻想が入り混じる作品で、白黒で撮影されているところもこの作品と重なりますね。岩瀬さんは、またちょっと変わった作品へのお話をいただいて、いかがでしたか?
岩瀬 「どういうことになるんだろう?」みたいなのがやっぱりあって(笑)。まずドキュメンタリーの映像を見せてもらったんですが、それ自体すごく感じるものがあって、ここに作られた台詞をしゃべる人が入ってくるというのはすごくチャレンジングなことだなあという印象がありました。それに挑戦するのは楽しみだと思ってお受けしました。
――監督が本作を作ろうと思ったきっかけを教えていただけますか?
西原 最初は漠然と、今の東京に暮らしている女性たちの日常生活を切り取るポートレートのような映画を作りたいなと思って、そのころ知って魅力的だと感じていた歌手のBOMIさんとヌードモデルの兎丸愛美さんを撮らせてもらっていました。その後、別の仕事などがあって撮影を中断していたんですが、2017年、18年に海外で#MeToo運動が起こり、報道で女性たちが声を上げ始めるのを見て、この世界的な動きと自分が撮ってきた素材とを組み合わせて1本の映画としてまとめてみたいという思いが湧いてきました。それで去年、2018年に、ドキュメンタリーの被写体だった兎丸さんにフィクション部分で演じてもらったり、岩瀬さんのように新たにフィクション部分に出てもらったり、BOMIさんはドキュメンタリーだけの出演なんですが、そういうものを全部混ぜこぜにして1本映画を作ったら、そうした複雑な作り方をすることによって東京という複雑な街に少しでも近づけるんじゃないか?と思い、脚本を書いて動いていきました。
――最初に現代の東京を撮ろうと思ったときに、被写体は女性に特化していたわけですが、それはなぜなのでしょうか?
西原 そう言われるとそうですね。あんまり男性に興味がないというか……(苦笑)。フィリップ・ガレルの『孤高』(74)という映画があって、それはジーン・セバーグとニコの二人がご飯を食べているところやボーッとしているところ、泣いたり笑ったりしているのを、顔だけ延々と撮り続けている映画なんですが、それを20代ぐらいのころに観て、とても印象に残っていて。
岩瀬 それはドキュメンタリーなんですか?
西原 そうですね、実験映画というか。その映画に近づきたい……と言ったらおこがましいんですけど、そんなふうに単純に「いいな」と思う人にカメラを向けて、表情を撮りたいと。それが出発点でした。
――なるほど。もともとドキュメンタリーというよりは、わりとアート寄りという意識で撮り始めたと。
出演:兎丸愛美,BOMI,遠藤新菜,秋月三佳,戸塚純貴,栗林藍希,SUMIRE,岩瀬亮
監督・脚本・編集:西原孝至
撮影:飯岡幸子,山本大輔 音響:黄永昌 助監督:鈴木藍 スチール:nao takeda 音楽:Rowken
製作・配給:sky-key factory © 2019 sky-key factory
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