西原 孝至 (監督) × 岩瀬 亮 (俳優)
映画『シスターフッド』について【4/6】
2019年3月1日(金)よりアップリンク渋谷にて公開中、全国順次公開
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岩瀬 僕は俳優をやっていますけど、決まった台詞をきちんと言う方が難しいなと思っていて。もちろんこの映画には台詞があるんですけど、自分の言葉になじませて言っても大丈夫ということだったので、演技がすごく難しいとは思いませんでしたね。逆にこれでいいのかな?と思ったりはしましたけど。
――監督はどのように演出していったんですか?
西原 僕は普段ドキュメンタリーの仕事をしているから、俳優さんへの演出というのが正直今もわかっていないところがあって。ただ、今回僕の中で気づきがあったのは、ドキュメンタリーって撮りながら問題やテーマを発見していくという感覚があるんですけど、俳優さんも多分、演じながら役を発見していくんだな……と岩瀬さんを見ていて感じて。もしかしたら演出というのは、俳優さんが役を発見するのを手伝うことなのかな?というのが、今回岩瀬さんとご一緒して、半分自分を投影しているような映画監督役をやってもらって気づいたことですね。
――なるほど。映画には岩瀬さん自身が変化していく姿が映っているんですね。
西原 そういう意味では岩瀬さんが池田という役になっていくドキュメンタリーを撮っていたような感覚ですね。設定はもちろんフィクションだし、しゃべってもらっている台詞も作ったものですが、そういう感覚がありました。
岩瀬 なんか嬉しいですね。
西原 終盤の編集室のシーンで、池田がBOMIさんの言葉を食らっている顔がすごくいいんですよね。
――ああ、確かに。感情がこみあげてきているのが表情だけで感じられました。
岩瀬 あそこは「表情を作ろう」みたいな意識は全然なくて、それを聞くということだけに集中していますね。自分の身体で消化することを心がけていたというか。
西原 あそこのリアクションは本当に受け止めてくれている感じがして、素晴らしいなと思いました。
岩瀬 いや、やめてください(笑)。
西原 (笑)。岩瀬さんにお願いしている以上、岩瀬さんを撮りたいという感覚が僕にはありました。岩瀬さんはそれに応え、自分が変化していく様子を見せてくれたなと思っていて。ドキュメンタリー的な撮り方のできる俳優ですね。
岩瀬 自分のやり方が正しいのかは全然わからないんですけど、そういうのが楽しいなと僕も思いますね。
――岩瀬さんは恋愛映画も合うなという気がするんですよね。それと岩瀬さんが韓国映画に縁があるというのもあって、この映画にはホン・サンス監督の作品を連想するところがありました。心理描写がとても生々しい感じで。
西原 ああ、ホン・サンス監督の映画は僕も大好きで何本も観ていますけど。今回はフィクションの部分をあまりカットを割らずに、一つのシチュエーションをまるっとそのまま撮りたいというか、その場に流れている空気感や時間を編集であまり壊したくないというのがあったので、長回しのフィックス主体で撮っているんですけど、それはホン・サンス監督やエドワード・ヤン監督の作品が頭にあったかもしれないです。
岩瀬 僕は池田が秋月三佳さん演じるユカと二人で歩いているところにナレーションが被ってくる終盤のシーンがすごく好きなんです。詩的な感じがして。監督はあのシーンをどういう意図で入れたんですか?
西原 僕は作品の中でナレーションを使うのが好きなんです。その場にない言葉が外から聞こえてくることで、スクリーンに投影されている映像が違ったふうに見えてくる感覚があって。この作品では池田とユカ、美帆と兎丸さん、それぞれの物語に一度ピリオドを打ちたかったから、ああいうシーンを入れたのかもしれません。僕も自分で作っておきながらあんまりわかっていないところがあるから、説明が難しいんですけど(苦笑)。
――ドラマの部分も結構飛躍を楽しむ部分があって。遠藤新菜さん演じる美帆の変化がすごいですよね、彼氏と別れたら外見も豹変してしまって。(笑)。
西原 そうですね、金髪になってますからね(笑)。遠藤さんのレインボーパレードのシーンは、2018年にフィクション部分の撮影をするその前の年に撮っていたものなので、遠藤さんの時間経過みたいなものも映画に反映されています。18年に撮影するとき「金髪なんですけどいいですか?」って言われて、「まあそれが今の遠藤さんなんだからいいんじゃないですか」って言って。確かに何があったんだろう?って感じですよね(苦笑)。
――(笑)。この映画だと役としてではなく遠藤さんとして見ているところがあるので、実はそんなに違和感ないです。SUMIREさんが出ているのも豪華ですね。
出演:兎丸愛美,BOMI,遠藤新菜,秋月三佳,戸塚純貴,栗林藍希,SUMIRE,岩瀬亮
監督・脚本・編集:西原孝至
撮影:飯岡幸子,山本大輔 音響:黄永昌 助監督:鈴木藍 スチール:nao takeda 音楽:Rowken
製作・配給:sky-key factory © 2019 sky-key factory
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