インタビュー
三宅流監督×上原拓治(企画・プロデューサー)画像

三宅流 (監督) ×
上原拓治 (企画・プロデューサー)
映画『がんになる前に知っておくこと』について
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2019年3月1日(土)~2月22日(金)、新宿K's cinemaほか全国順次公開

今作の企画・プロデューサーの上原さんはアップリンク在籍時から知っていて映像編集者として独立されてからは、こちらの監督作や関連の予告編の編集に関わってもらっている方だ。その上原さんが企画で、がんのドキュメンタリーを作ると上原さん本人から聞いた時に公式Webにある次の製作の動機を聞いた。

「義妹は4年前に「がん」が発覚し、その翌年に亡くなりました。その時、初めて自分が「がん」について何も知らないことに気づきました。がんに関する情報を求めて書店へ行き、TVやインターネットでもがんに関する番組を探して見るようになりました。しかし、いずれも私の知りたいことには答えてくれませんでした。『がんについて一から教えてくれるような映画』の必要性を感じ、自らプロデューサーとなり本作の製作を決意しました。思いもかけなかったことに、がんの話を聞くことは全く恐ろしいことではありませんでした。むしろ、先生たちや、経験者の方々の話を聞けば聞くほど、がんに対する恐怖は薄れていきました。完成が危ぶまれることもありましたが、その度に不思議と誰かが助けてくれるということが幾度もありました。それはまるで誰かに『絶対に映画を完成させなさい』と言われているようにも感じられました。本当に個人的な思いから始まったこの映画が、出演者、スタッフをはじめとした多くの方々のご協力のおかげで完成したことを喜ぶと同時に、上映を通して多くの人に届き、自分と同じような後悔や喪失をする人が一人でも減らせたら嬉しく思います」

この真摯な製作の動機から、今作の完成を待ち望んでいた。病気というのは頭で分かっていても自分がなるか、とても身近な人物がならないと実感してきちんと調べたりしないものだ(自分の場合だと母親がなった脳出血及びその後遺症の右半身麻痺の症状がまさにそうだった)。今作を必要な方々に今作が届くことを心から願ってやまない。 (取材:わたなべりんたろう)
三宅流 1974年生。多摩美術大学卒業。在学中より身体性を追求した実験映画を制作、国内外の映画祭に参加。2005年からドキュメンタリー映画制作を開始。伝統芸能とそれが息づくコミュニティ、ダンスなどの身体表現におけるコミュニケーションと身体性について独自の視点で描き続けている。『究竟の地−岩崎鬼剣舞の一年』は山形国際ドキュメンタリー映画祭などで上映され、『躍る旅人−能楽師・津村禮次郎の肖像』は毎日映画コンクールにノミネートされる。
上原拓治 ミュージックビデオ、ライブ映像の監督などを中心に映像ディレクターとして活動。日本大学芸術学部映画学科監督コース中退後、アニメーション制作会社、TV制作会社、映画配給会社などの社員を経た後、2011年に株式会社上原商店を設立。
「上原拓治」画像上原拓治
――ドキュメンタリーは今、複雑化していると思うんです。想田和弘監督の観察映画とか、森達也監督のフェイク・ドキュメンタリー的なものもある。でも、元々は知られていない、もしくは知ってほしい何かを伝えるために作られているのではないかと。『こういうことがあるよ』っていう。例えばマイケル・ムーアの『ロジャー&ミー』(1989)とか、『モアナ 南海の歓喜』(1926)でドキュメンタリーの始祖と言われているフラハティだって「こういう人たちや事象があるよ」って伝えるための記録ではないかと思います。だから、今作は本来のドキュメンタリーの基本的なことをやっていると思うんですよね。オーソドックスだけど、オーソドックスゆえの強さがある。すごく強い映画だと思います。まず、プロデューサーの上原さんに聞きたいのが三宅さんを監督に選んだ経緯です。

上原 単純に私の知っている中でドキュメンタリーの監督はいっぱいいるんですけれども、その中で一番腕がいいと思うのが三宅さんだったということ。普通にファンなので。天才だと思います。

三宅 初めて聞きました。

――では三宅さんは依頼された時はどう思ったのでしょうか? 「なんで自分に?」と思ったのでしょうか。

三宅 「三宅さん、映画撮りませんか」って言われて「何の映画ですか?」と返事しながら、上原さんはミュージックビデオなどをよく撮っているから音楽系の何かかなって思ったら「がんなんですけど」って言われて驚きました。

――そうだったんですね。

三宅 意外だったけど、何て言うのかな……重いテーマだったので、かえって向き合う価値はあるんじゃないかなと思いました。

――やりがいがあるなと思ったんですか? チャレンジしがいがあると言うか。

三宅 そうですね。

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がんになる前に知っておくこと』(2018年/日本/DCP/108分)
監督・撮影・編集:三宅流  企画・プロデューサー:上原拓治 整音:吉方淳二  ピアノ演奏:鳴神綾香
製作・配給:株式会社上原商店  制作:究竟フィルム  配給協力・宣伝:リガード 宣伝美術:成瀬慧
出演:若尾文彦(がん情報研究者・放射線診断医)/勝俣範之(腫瘍内科医)/山内英子(乳腺外科医)/唐澤久美子(放射線腫瘍医)/有賀悦子(緩和医療医)/大野智(臨床研究)/近藤まゆみ(がん看護専門看護師)/橋本久美子(がん相談支援センター相談員)/山口ひとみ(ピアサポーター)/土井卓子(乳腺外科医)/秋山正子(マギーズ東京センター長)/岩城典子(看護師)/塩崎良子(がん経験者)/岸田徹(がん経験者)/鈴木美穂(がん経験者)/鳴神綾香[ナビゲーター]
配給:株式会社上原商店  © 2018 uehara-shouten 公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2019年3月1日(土)~2月22日(金)、新宿K's cinemaほか全国順次公開

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