第 34 回東京国際映画祭 Nippon Cinema Now 部門
第 70 回サン・セバスティアン国際映画祭 New Directors 部門
第 40 回トリノ映画祭フィクション長編部門 スペシャル・メンション(特別表彰)
なぎさ
2023年5月12日(金)、テアトル新宿ほか全国順次公開
初日舞台挨拶開催@テアトル新宿
日時:5 月 12 日(金)21:57~22:27
登壇:青木柚、蜷川みほ、三上紗弥、髙橋雄祐、古川原壮志監督 MC/松崎まこと
喪失と喪の白昼夢。
頼れる親のいない環境で育った文直とその妹、なぎさ。広い世界を求めるように、成長した文直はなぎさを残し、ひとり故郷を後にする。三年後。偶然訪れた心霊スポットのトンネルで、文直はなぎさの幽霊に出会う。そこはなぎさが事故死した現場だった。トンネルの暗闇の中、文直はなぎさを探し彷徨い始める。暗闇は罪と深い喪失の時間へ、文直を誘う。
本作が長編デビューとなる古川原壮志監督はテレビ CM 監督として活躍するかたわら、短編映画「なぎさ」(2017)、「Birdland」(2019)の製作を通じ、釜山国際映画祭など国内外の映画祭で注目を集める存在。サンダンス・インスティテュートの脚本ラボやフィルメックスの人材育成プログラム「タレンツ・トーキョー」に選出され、長年にわたり長編「なぎさ」の企画・脚本を練り上げてきた。
主人公・文直を演じるのは、青木柚。近年、NHK 連続テレビ小説「カムカムエブリバディ」やドラマ「きれいのくに」、映画『はだかのゆめ』(主演)、『うみべの女の子』(主演)、米映画「MINAMATA―ミナマタ―」など話題作への出演が続き、その才能と圧倒的な演技力で作品へのオファーが絶えない、今最も注目すべき若手俳優だ。妹・なぎさ役には、本作が映画初出演となった山﨑七海。弱冠 12 歳(撮影当時)ながら確かな存在感で難しい役どころを演じ切った。共演に、三浦誠己や宇野祥平ら個性豊かな俳優陣が存在感を発揮している。
- ロベルト・クエト(サンセバスティアン国際映画祭選考委員)
古川原壮志監督のデビュー作は、驚嘆すべき華麗さと精細さの作品である。観客を魅惑的な映像と音の体験へと誘う物語となっている。そのパズルのような構成は罪と欲情の混沌へ、私たちを不穏な旅に導いていく。 - 市山尚三(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)
記憶をめぐる物語なのである。説明的な台詞を極力排し、映像の力のみを信じているかのような大胆な編集で紡ぎ出されるこの物語は、これまでのどの映画にも似ていない。 - トリノ映画祭審査員一同
壮麗でありまた独自性に富んだ映画言語。(特別表彰授与コメント) - 早川千絵監督 ( PLAN 75 映画監督)
繊細な物語を非常に大胆なやり方で描いている。そのギャップがなんとも魅力的で引き込まれた。青木柚さんと山﨑七海さんがすばらしく、ふたりをずっと見ていたくなりました。 - 津⽥寛治(俳優)
古川原壮志さんは「本気」の監督だ。映画の「本気」は「暴露」に似ている。古川原作品はいつも勇気をもって曝け出している。希薄な空気中にありながら高密度に閉じた世界を、粒子が震えるような勢いで暴露する。暴露系映画監督だ。作品群の中でも突出して閉じている長編「なぎさ」が暴露されるとき、観客はそこに何を観るのだろうか。目をそらしたって構わない。客席から逃げ出したって構わない。いつかそれと向き合う日が来るのだから。
- 酒村ゆっけ、(youtuber)
喪失の夏を予感させる映画「なぎさ」が頭から離れない...
どんなに悔やんでも大切な人は戻って来ない、罪を背負い暗いトンネルを彷徨うような日常と 10 代最後の夏。この映画の凄いところは、全員の表情を直接的に見せないの!!だから自分で小説を読んだときのように想像させようとしてくる。結末をどう捉えるかは自分次第。一緒に映画を作り上げる体験をさせてくれる人生初の作品に震えました。 - オカモトコウキ(OKAMOTO'S)
人は、常に過去を抱えながら生きている。過去は現在の自分の立ち位置によって歪んだ鏡像のように形を変える。映画の中で「トンネル」を起点に重なる映像は、時間や現実を捻じ曲げながら私たちを答えのない迷路へ誘う。やがて、混乱した主人公のように我々の頭も混乱することになる。その先に出現するのは、炙り出されるのはあなた自身の過去?あの日感じた一瞬の感覚?見えないものを映し出す、映画のマジックがここにあった。 - Uxue Arzelus / ウフエ・アルゼルス(Berria / ベリア誌)(スペイン)
最初のシーンから古川原監督の手法が私の注意を惹いた。作品のなだらかなテンポによって、常に緊張感が維持される。「なぎさ」のサウンド・デザインも細かく、圧迫させる音と森閑のバランスは主人公の心理と上手にマッチしている。 - Alvaro Campoy / アルヴァロ・カンポイ(Cintilatio / シンティラティオ)(スペイン)
古川原壮志の長編監督デビューは神秘的かつ夢幻的な作品で、新しい描写法を試みる事によって遺族の傷みを探る。メロドラマ型から外れて、夜に愛しい人の喪失感が生む悪夢の静かな描き方は時折『⾵の電話』を連想させる。 - ⾹川まさひと(漫画原作者・脚本家)
お世辞抜きにすごかった!私はとても響きました!「この監督はものすごくよくわかってる人だ」と思いました。すごかった。誰かと話したい。映画とはなにか?人間とはなにか?そのどちらもごっちゃになって興奮気味に。「鎮魂の映画じゃなく、観た側が鎮魂するんだよ、あの登場人物たちに、顔に、魂に」とかいう言葉も出そうだなあ。