ブレンダン・フレイザーが奇跡の復活！
余命わずかな体重272キロの孤独な男が
疎遠だった娘との関係修復を切望する最期の 5 日間を描く、
壮絶にして心震わすヒューマン・ドラマ

恋人アランを亡くしたショックに打ちひしがれ、 現実逃避するように過食を繰り返してきたチャーリーは、 大学のオンライン講座で生計を立てている 40代の教師。歩行器なしでは移動もままならないチャーリーは頑なに入院を拒み、アランの妹で唯一の親友でもある 看護師リズに頼っている 。そんなある日、病状の悪化で自らの余命が幾ばくもないことを悟ったチャーリーは、 別れて 以来長らく 音信不通だった17歳の娘エリーとの関係を修復しようと決意する。ところが家にやってきたエリーは、学校生活と家庭で多くのトラブルを抱え、心が荒みきっていた……。

映画の冒頭で観る者がはっと目を奪われるのは、極度の肥満体型であるチャーリーの風貌だ。しかし物語が進むうちに、本作の主題は主人公の大きな体の内側、すなわち “心”の中にあることに気づかされる。本来のチャーリーは人生や愛の美しさを信じてやまないポジティブなキャラクターだが、 現在の彼は同性のパートナーに先立たれた喪失感、かつて妻と娘を捨てた罪の意識に苛まれている。これは自宅に引きこもり、精神的にも殻に閉じこもったひとりの人間が、負のスパイラルから脱しようともがく贖罪と救済の物語。そして、この世で最も大切な我が子への無償の愛を紡ぎ上げたヒューマン・ドラマなのだ。

劇中にはチャーリーを含めて5人の主要人物が登場するが、誰もが容易には克服できない苦悩を抱え、誰かを救いたいと願っている。胸をえぐられるような深い悲しみや憎しみに囚われていようとも 、人と人は互いを赦し、わかり合うことができるのか。その深遠なテーマを極限まで突きつめ、希望の光のありかを探求した映像世界は、あらゆる観客の心を震わせるに違いない。

『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督が観る者をスリリングな室内劇へと誘う円熟の新境地

『レスラー 』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞し、『ブラック・スワン 』でナタリー・ポートマンに米アカデミー賞主演女優賞をもたらしたダーレン・アロノフスキー監督は、チャレンジングな題材選びと先鋭的な作風で知られる鬼才。純粋な室内劇である本作では円熟味を感じさせる語り口で、激しくも繊細に揺らめく主人公の心の軌跡を映像化した。随所にちりばめられた宗教的なエッセンス、主人公と娘を結びつけるハーマン・メルヴィルの名作「白鯨」の引用も映画に奥行きを与えている。

もちろん最大のサプライズである ブレンダン・フレイザーの渾身の演技には、誰もが圧倒されずにいられない。毎日メーキャップに 4 時間を費やし、 45 キロのフ ァットスーツを着用して 40 日間の撮影に臨んだフレイザーは、苦行のような日々を生きる チャーリーを、時にチャーミングな人間性を垣間見せながら体現。まさしく入魂のパフォーマンス で新たなキャリアを切り開き、ドラマティックな復活を果たした。

4 人の共演者との迫真のアンサンブルも見逃せない。自分を捨てたチャーリーに容赦ない怒りをぶつける娘エリーを演じるのは、 Netflix の大ヒット・シリーズ「ストレンジャー・シングス」のマックス・メイフィールド役で脚光を浴びた若手女優セイディー・シンク。さらに『ザ・メニュー』のホン・チャウがチャーリーを支える看護師リズ、『ジュラシック・ワールド』『アベンジャーズ／エンドゲーム』のタイ・シンプキンスが駆け出し 宣教師のトーマス、『マイノリティ・リポート』『SHE SAID／シー・セッド その名を暴け』のサマンサ・モートンがチャーリーの元妻メアリーに扮し、 人間という生き物の弱さや優しさを多面的に表現している。