金子 雅和 (監督) & 長谷川初範(俳優)
映画『リング・ワンダリング』について【2/4】
2022年2月19日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子 撮影協力:宮益御嶽神社)
――映像が綺麗ですよね。時代劇ふうのパートなんですが、撮り方は現代的というか、色もカラフルで。
長谷川 『アルビノの木』もそうでしたが、監督の奥さん(金子美由紀さん/本作イメージボード・小道具担当)の衣装の色合いがいいんですよね。
金子 『アルビノの木』では妻が衣装をやっていて、今回は小道具をやっています。
長谷川 『アルビノの木』で僕が演じたのは山の番人役ですが、衣装に緑とか赤とかを入れていました。「これとこれとこれ」と配するものがどれもステキで素晴らしかったです。
金子 今回の銀三は破天荒な男の役なので、村人があの時代の野良着を着ている中で、ちょっとアウトロー感があるといいだろうと、つぎはぎのパッチワークでカッコよく色を配置しています。あれは長谷川さんが提案してくださって、衣装の人が作ってくださったものです。
――効果的でしたね。全編通して映像美が目を楽しませてくれる感じでした。戦争もテーマになっているし、観る前はちょっと重たい映画というイメージもあったんですが、全然そんなことはなかったです。
長谷川 やっぱり絵柄や色にすごくこだわる監督なので、それで惹きつけていくところも多いんですよね。構図の美しさとか。映像に巧みな技が入っていると思いますよ。
金子 戦争や、失われた命と記憶といった、扱っているテーマ自体が非常に重いぶん、カラフルにファンタジックにして、間口広く多くの人に観ていただけるように心掛けました。多くの人に観て頂かないと作る意味がないテーマだと思うんです。そして観終わった後に、何か心の中に残ってくれたら嬉しいな、と。
――草介とミドリの関係は、本当にボーイ・ミーツ・ガールの物語だなと。別の文化で暮らしていた二人が、相手を徐々に理解しながら惹かれ合っていくという。それをひとときのうちに体現していて、凝縮されたとても濃密なラブストーリーだなあと思いました。本当にいろいろな要素が埋め込まれている作品で、それも金子監督の作品の特徴となっていますが、日本映画にはなかなかない感覚で。もしかしたら映画祭に参加してきた中での影響もあるのかな?と思うんですが。世界に向けて作っているとかそういう意識もあるのかなと。
長谷川 自分の好きなものを創られているだけだと思いますが……。
金子 おっしゃるとおりで、こうやったら外国でウケるとかそういうことはまったく考えていないです。むしろ自分が面白いと思うことをやると、日本よりも外国で面白いと思ってもらえるような印象があります。
――本当に自分のテーマを追い続けていると思うんですが、こういう映画はどうやって作るのかなと。今回プロデューサーなどはついていたんでしょうか?
金子 企画自体は自分が考えたものなので、「こういうものを撮りたい」とスタートさせて、『アルビノの木』を観て気に入ってくれた人たちが応援団的に、何人もついてきてくれました。本当にありがたいです。でもすべてを仕切るような形でのプロデューサーはこの映画にはいないですね。
――ではやっぱり自主映画的な。
金子 そうですね、自主映画の作り方でやりつつ、お金は外部から集めて、という感じですね。
――キャストが素晴らしいですよね。主演は笠松将さんと阿部純子さんという今をときめくお二人で。キャスティングは監督が考えているんですか?
金子 長谷川さんと初めてお会いしたのは2013年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭だったのですが、当時の長谷川さんのマネージャーが僕の作品をずっと応援してくださっていて、この映画は、企画のスタートの時点からその人と一緒にやっていたところがあります。資金集めにいろんな会社を回ってくれて、芸能事務所の方なのでキャスティングにもかなり協力していただきました。ただ、「こういうキャストはどうですか?」という提案も受けつつ、それが絶対というように押し付けられることは一切なく、僕がやりたい人でやらせていただきました。そういう意味ですごく恵まれた制作だったなと思います。
――笠松さんも阿部さんも野性的な魅力が光っていますね。
金子 そうですね、そこが一番大事なところで。特に草介は、今の若者的なところとともに、その奥に何か野性的なものがあってほしい。彼はオオカミを描き続けていますが、彼自身もオオカミのような鋭さがあるというか。あと、草介は漫画家志望の設定ですが、漫画を描くという行為にはあまり動きがないから、映画の中でスタティック過ぎてつまらない見え方になってしまう恐れがあるなと思ったんです。この役は次に何をやるかわからないような動物的なものを感じられる役者さんじゃないとうまくいかない、そこが笠松さんはまさにピッタリでした。
――安田顕さんもよかったですね。コミカルな演技をすることが多いですが、今回は自然体の演技で、昭和のよいお父さんといった感じで。
金子 そうですね、TEAM NACSの俳優さんですからどちらかといえばコメディー的な役が多いですが、今回はかなりしっとりとした役です。最初に衣装合わせでお会いしたときに、安田さんご自身も「特別なことをしないということでいいですよね?」と、演技プランの確認としておっしゃっていました。「そこに存在しているだけでいい」というお芝居をしてくださったと思います。
出演:笠松将,阿部純子,片岡礼子,長谷川初範,田中要次,品川徹,安田顕,伊藤駿太,横山美智代,古屋隆太,増田修一朗,細井学,友秋,桜まゆみ,石本政晶,ボブ鈴木,比佐仁,山下徳久,大宮将司,平沼誠士,伊藤ひろし,納葉,川綱治加来
監督:金子雅和 脚本:金子雅和,吉村元希 劇中漫画:森泉岳土 音楽:富山優子 撮影:古屋幸一
照明:吉川慎太郎 美術:部谷京子 録音:岩間翼 音響:黄永昌 VFX:高橋昂也
スタイリスト:チバヤスヒロ メイク:知野香那子 イメージボード:金子美由紀 助監督:土屋圭
制作主任:名倉愛 アソシエイトプロデューサー:松井晶子 ラインプロデューサー:武石宏登
キャスティング:大松高 エグゼクティヴ・プロデューサー:松本光司
プロデューサー:塩月隆史,鴻池和彦 製作協力:中山豊,中田直美
製作:リング・ワンダリング製作委員会(Monkey Syndicate、ラフター、プロジェクト ドーン、cinepos、kinone)
©2021 リング・ワンダリング製作委員会 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
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2022年2月19日(土)より
渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
- 監督:金子雅和
- 出演:松岡龍平, 東加奈子, 福地祐介, 増田修一朗, 尾崎愛
- 発売日:2019/1/5
- おすすめ度:
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