レオン・レ (監督) & リエン・ビン・ファット(俳優)
映画『ソン・ランの響き』について【2/3】
新宿K’s cinema他にて公開中
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――ユン役にはとても入れ込んで準備もかなりされたとのことですが、いちばん力を注いだのはどんなことですか?
リエン 楽器を弾くのが大変で、レッスンを4回受けました。アクションシーンも大変でしたし、湧き上がる感情を表現するのも難しかったんですが、それらはできたんです。でも演奏するのは本当になかなかできなくて。この映画で悔いが残るのは演奏シーンですね。
――とても堂々とした演奏ぶりでしたよ。
リエン それは監督のいろいろなトリックのおかげです(笑)。
――容赦のない借金取り立て人という役どころに対して、精神面でのつらさはありませんでしたか?
リエン 観客から見たらとてもヘヴィな役だと思われるかもしれませんが、私にとってはものすごく大変だったわけではありません。演じるときはいつでもそうですが、「どう見せようか?」ということは考えず、役に入り込むだけです。
――レオン監督は以前俳優をされていたということですが、今回の演出に活かせたことはありますか?
レオン はい、俳優の経験は監督をするにあたって利点となったと思います。俳優、特に新人俳優がどんな心理状態にあるか、どんな困難を克服しなければならないか、自分の身をもって体験したことなので、どこにスイッチがあるのかわかっているんです。また、私は元々舞台俳優だったんです。この映画には舞台のシーンがたくさんあるのですが、言葉だけでなく自分で実際に演じて指導することができたのでそれもよかったです。
――ユンが住むアパートの屋上のシーンはとても印象的なものでした。屋上にある"SINCO"という看板は、おそらく80年代のベトナムを象徴するようなものだと思うのですが、この看板について教えていただけますか?
レオン "SINCO"というのはサイゴン、今のホーチミンの80年代のシンボル的な企業です。縫製業の企業でしたが、もうとっくに潰れてしまいました。この映画はインディペンデント映画であり、資金が潤沢だったわけではありません。できるだけ80年代のサイゴンを再現しようと思ったのですが、そのために象徴的存在としてこの看板を作って登場させました。また、この看板はいろいろ隠喩的に使ってもいます。例えば屋上でユンが泣くシーンでは、看板全部ではなく"SIN"の文字だけを一緒に映しています。それは英語の「罪」を意味する言葉です。そういう手がかりがいろいろと埋め込まれているんです。
――それは面白いですね。映画全体ではロケーション撮影が多いのでしょうか? それとも看板のようにセットを作ったのでしょうか?
レオン 映画に映っている風景や建物のほとんどは作ったものではなく、ホーチミンの中華街であるチョロン地区で撮りました。なぜそこを選んだかというと、ホーチミンで少しでも80年代の雰囲気が残っているのはそこしかないからです。また、なぜセットを作らなかったかというと、私にはこだわりがあって、観客に少しでも実際の場所を感じてもらいたいし、俳優も生活感のある場所の方が役に入りやすいと思ったからです。この映画は、私自身が体験した80年代のサイゴンを再現しているので、調べたり博物館に行ったりする必要はありませんでした。記憶に頼った部分もありますが、私には優秀なデザインスタッフがいて、デザインの才能だけではなくプロジェクトをぜひ成功させようという熱意があったので、みんなの力で素晴らしい撮影ができました。
監督:レオン・レ 脚本:レオン・レ,ミン・ゴック・グエン 撮影:ボブ・グエン
プロデューサー:ゴ・タイン・バン 製作:STUDIO68
出演:リアン・ビン・ファット,アイザック スアン・ヒエップ
提供:パンドラ 配給協力:ミカタ・エンタテインメント 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
© 2019 STUDIO68
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