レオン・レ (監督) & リエン・ビン・ファット(俳優)
映画『ソン・ランの響き』について【3/3】
新宿K’s cinema他にて公開中
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――リン・フン役はアイドルのアイザックさんが演じました。共演はいかがでしたか?
リエン 私はまったくの無名でしたので、ほとんど対等の役でスターと共演することに最初は緊張しました。でもアイザックくん……と呼んでいたのですが、彼ははとても親切で、フレンドリーに接してくれたので、自然に演じることができました。
――レオン監督は、なぜこの作品を男性二人のストーリーにしたのですか?
レオン 実は最初の構想では、舞台女優が主人公の物語を考えていました。でも……、女優では普通すぎる(笑)。また、ベトナムにはナム・カムというとても有名なヤクザがいたのですが、彼はカイルオンが大好きだったんです。口癖で「カイルオンに必要なものがあればナム兄貴のところに来い」と言っていたぐらいカイルオンを愛していたんです。私にはそれが少し不思議な感じがしました。それまでのカイルオンのイメージとしては、お涙ちょうだい的であったり、ドラマチックだったりというのがほとんどでしたが、こんな悪党を魅了し、感動させるものでもあることに触発されて、”雷のユン兄貴”というキャラクターが生まれました。また、もう一つ強調しておきたいのは、LGBTの映画はセックスやヌードのシーンを売り物にするものが多いですが、私はそういう要素をできるだけ使わないようにしています。私が伝えたいのは同性愛ではなく、人と人の間の愛です。同性を純粋に人として愛することがありうるのだということを観客に感じてほしいのです。
――映画のラストは、ユンがアンダーラインを引いていた本の文章で締めくくられます。「過去を煩うな」というその文章は、ユンがリン・フンとの出会いによって感得したことであると同時に、監督からのメッセージでもあるように感じました。
レオン 私はメッセージを送り出すことはあまり好きではありません。私は誰かに教える立場ではなく、私が願うのは、ただ観客がこの映画を観て一人一人の人生を振り返り、自分なりに映画からメッセージを受け取ってほしいということです。映画の中に出てきた本は、私の私物です。私が8歳の時に母が買ってくれて、アメリカに移住したときも、母がビニールの袋で何重にも梱包して大事に運びました。そういうものも映画の小道具として使っています。映画そのものが私の中から生まれましたので、私が何を考えているかは映画を観たらわかっていただけるのではないかと思いますが、どんなメッセージを受け取るかは観客のみなさんに任せたいと思います。それも芸術作品のいいところだと思います。
( 2020年2月22日 新宿K‘s cinemaで 取材:深谷直子 )
監督:レオン・レ 脚本:レオン・レ,ミン・ゴック・グエン 撮影:ボブ・グエン
プロデューサー:ゴ・タイン・バン 製作:STUDIO68
出演:リアン・ビン・ファット,アイザック スアン・ヒエップ
提供:パンドラ 配給協力:ミカタ・エンタテインメント 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
© 2019 STUDIO68
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