福永壮志監督監督『リベリアの白い血』

福永 壮志 (監督)
映画『リベリアの白い血』について【7/7】

2017年8月5日(土)よりアップリンク渋谷にて大好評上映中!ほか全国順次公開

公式サイト 公式Facebook (取材:深谷直子)

メイキング:福永壮志監督 『リベリアの白い血』場面9
――本当に隅々まで力のこもった映画になりました。日本公開には時間がかかりましたが、観客としてこういう映画に出会えてとても嬉しいです。

福永 まあ公開というものを目指していたら、こういう映画は作っていませんからね(苦笑)。マーケティング的な配慮などはまったくなく、作りたいと思ったら作ることに意味があると思って取り組んだ映画です。1本目なので勝手もわからないまま何とか作って、作ったあとの配給だとかもそのときそのときで何とかしてきて。ベルリンなどの映画祭に通っていなかったら日本での配給は難しかったと思います。まあそれがあっても難しかったのですが、ありがたいことに蔦哲一朗監督が共感してくださって、彼が運営するニコニコフィルムが配給してくれることになりました。蔦監督も『祖谷物語 -おくのひと-』(13)を自主配給という形でやったという経歴があって、他の監督のお手伝いもしたいと考えていたときに、共通の知り合いを通してお仕事ができました。村上涼と蔦監督が同じ徳島出身だという縁もあって。それがまた不思議な縁で、村上の命日が6月29日で、33歳で亡くなったんですけど、蔦監督は今年33歳で誕生日が6月29日なんですよ。そういう不思議なつながりみたいなのが本当に制作中からいろいろあって、ここまで来たという感じですね。

――それは本当に運命的ですね。そうやって日本に届けてもらうことができてとても嬉しいです。撮影地のリベリアでは作品を観てもらうことはできたのでしょうか?

福永 はい。配給は、やはり配給会社というのがないのでできないんですけど、もちろんリベリアの方々に観てもらうことは大事なことですので、今年の2月に映画を持ってリベリアに戻りました。JICAと在リベリア日本国大使館に協力してもらい、現地の日本人の方にコーディネートしてもらって、首都のモンロビアで2回、撮影した地方で1回の上映会を実現させてきました。映画組合と映画の参加者みんなにいちばん喜んでもらえたのは、初めて内戦以外のリベリアのことを描いた映画になったということです。リベリア国外の人はどうしても10年以上続いた内戦のイメージをずっと持っていて、先に作られた『ジョニー・マッド・ドッグ』もフィクションで内戦のことを描いたものですし、ドキュメンタリーは何本か撮られているんですけど全部内戦の話なんですよ。この映画の中にも内戦のことが入ってきていますけど、内戦そのものの話ではなくリベリア人の強さを描こうとやっていますので、「これまでのイメージを払拭するしっかりしたリベリア映画だ」と喜んでくださって。これを機に美しい風景だとか人だとか、リベリアのポジティブなイメージが伝わればいいなと思います。

――それは何よりでしたね。本当に素晴らしい映画をありがとうございました。福永監督はカンヌ国際映画祭の若手監督育成プログラム、シネフォンダシオン・レジデンスにも選ばれましたね。

福永 はい、それで次回作を撮ります。世界中から選ばれた6人の監督の1作目か2作目の脚本作りを支援するプログラムで、今脚本を書いているんですが、僕は出身が北海道で、アイヌの話を書いています。現代の社会を生きるアイヌの若者が自分のルーツと向き合うという。

――今度は日本が舞台になるんですね。

福永 はい。『リベリアの白い血』を始めたときもそうでしたが、それがいちばん撮りたい映画で、作る意義のある映画だと強く思えるので。

――福永監督の目で見たアイヌの映画を楽しみにしています。監督のお名前はこれまで日本ではあまり知られていませんでしたが、自主で何にも遠慮せずに作ってここまでのことができるというのは日本の若手監督にも励みになるのではないかと思います。

福永 逆にそれしかできないというか。今回の配給や次回作の準備などで以前よりも日本に帰ってくる機会が多くなり、日本の監督さんたちとお話をする機会も増えてきたんですけど、やはりみなさんいろいろなことが難しい環境でやっていらして、満足して状況をお話される方にはなかなか出会わないですね。少しでも僕がやっていることでいい影響があればいいなと思います。日本は映画制作に限らず何をするにも「普通はこうだ」という型みたいなのがあって、そこをベースにすべてが決まってしまう。僕が日本を出たのはそういうのに慣れないからというのもあるんです。本当は日本ってものすごい才能がある人がたくさんいて、文化、芸術の水準は世界中から評価されているんだけど、その才能をきちんと育てて外に出すという環境や支援はまだまだ足りないんじゃないかなと僕は思うので、もったいないなと思いますね。例えばシネフォンダシオン・レジデンスだったら、フランスから見たら一口で言えば外国人である僕のような監督を世界中から集め、カンヌに4ヶ月半住ませて脚本に取り組ませる、その間の生活費は支給され、それは国のお金なんですよね。その支援の厚さというのは見習ってほしいなと思いますね。逆にアメリカではそういう支援はほとんどないんです。それはやっぱり映画を娯楽とつなげて見ていて、ビジネスとして利益で成り立たせているから。でもそれはそれで、才能をひとつ見つけたときの支援というのはものすごいので。何が正解というのはありませんけれどね。僕自身は次の映画でまたアイヌという商業性の薄いものをやろうとしていて、資金集めにしても引っ張れるところから引っ張ってという方法なので、ひとつのマーケットというかひとつの国だけを見ていては足りないんです。視野を広く持とうというよりは、単純にそうじゃなければ成り立たないんですけど、そうやって進んでいこうと思います。

( 2017年7月31日 アップリンク渋谷で 取材:深谷直子 )

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アップリンク渋谷にて連日ゲストトークショー開催
8月12日(土) 13:40の回【上映後舞台挨拶】登壇:福永壮志監督
15:30の回【上映後舞台挨拶&短編併映】『ノート・フロム・リベリア』(25分)登壇:福永壮志監督
21:05の回【上映後トークショー】登壇:中井圭(映画解説者)、小林涼子(女優)、福永壮志監督
8月13日(日) 15:30の回【上映後舞台挨拶】登壇:福永壮志監督
20:50の回【上映後トークショー】登壇:菊池健雄(映画監督)、福永壮志監督
8月14日(月) 15:30の回【上映後舞台挨拶】登壇:福永壮志監督
20:50の回【上映後トークショー】登壇:カラテカ 矢部太郎(お笑い芸人)、福永壮志監督
8月15日(火) 20:50の回【上映後トークショー】登壇:山本政志(映画監督)、福永壮志監督
8月16日(水) 20:50の回【上映後トークショー】登壇:亀山亮(写真家)、福永壮志監督
8月17日(木) 20:50の回【上映後トークショー】登壇:入江悠(映画監督)、福永壮志監督
8月18日(金) 20:50の回【上映後トークショー】登壇:武正晴(映画監督)、福永壮志監督
リベリアの白い血
(原題: Out of My Hand/2015年/米国/88分/リベリア語・英語/ビスタサイズ/5.1ch/カラー/DCP)
出演:ビショップ・ブレイ,ゼノビア・テイラー,デューク・マーフィー・デニス,
ロドニー・ロジャース・べックレー,ディヴィッド・ロバーツ,シェリー・モラド
監督:福永壮志 撮影:村上涼,オーウェン・ドノバン
音楽:タイヨンダイ・ブラクストン (元 BATTLES) 製作総指揮:ジョシュ・ウィック,マシュー・パーカー
製作:ドナリ・ブラクストン,マイク・フォックス 共同製作:早崎賢治,マーティー・ラング
脚本:福永壮志,ドナリ・ブラクストン 照明:ロイ・ノウリン,トム・チャベス
録音:マイク・ウルフ・シュナイダー 音響:アン・トルキネン,イーライ・コン
編集:ユージン・イー,福永壮志 美術:スティーブ・グリセ,イオアニス・ソコラキス
衣装:キャシディ・モシャー 配給・宣伝:ニコニコフィルム 協力:Uplink ,Normal Screen,松下印刷,蔦 哲一朗
後援:アフリカ日本協議会,アジア・アフリカ協会 © 2017 ニコニコフィルム
公式サイト 公式Facebook

アップリンク渋谷にて大好評上映中!
8月26日、27日 福永監督の地元・北海道伊達市
伊達信用金庫コスモスホールにてプレミア上映会(監督挨拶あり) 公式情報
9月2日よりディノスシネマ札幌劇場(初日監督挨拶)、ディノスシネマ室蘭、
9月9日より亡くなったカメラマン・村上涼さんの育った四国・高松ソレイユ2にて
2週間限定上映(初日監督挨拶)ほか全国順次公開

2017/08/09/21:47 | トラックバック (0)
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