映画『リベリアの白い血』トークイベントレポート Part3/4
3、大西信満(俳優)×蔦哲一朗(映画監督)×福永壮志監督
アップリンク渋谷にて大好評上映中!ほか全国順次公開
8月24日(木) 登壇者:大西信満(俳優)、蔦哲一朗(映画監督)、福永壮志監督【2/2】
(取材:深谷直子)
そんな蔦監督の取り組みに、福永監督が「向こうでずっとやっていて、日本の状況って人から聞くぐらいで実体験としてはあまりないんですけど、蔦さんのように監督をやられていて配給業もやるというのはなかなかない例だと思いますので、少しでも新しい成功例というかモデルになるように結び付けばいいなと思います」と強い共感を示すと、蔦監督も「上の世代の配給会社さんがやるとは言ってくれなかったところを、僕たちの世代がなんとか理解してやらないといけないというモチベーションでやるというか、こういう映画をちゃんと公開するというところまでやるのが大事だと思います。こういう流れを作れば若い監督もモチベーションを持って映画に臨めるんじゃないかなと思うんですけどね」と頼もしい気概を見せた。
大西さんも「『リベリアの白い血』にとって、蔦くんの地べたを這うような広げ方は合っていると思います。すごく思うのは、公開したという実績で満足してしまう監督もいると思うんだけど、それは本当は違うわけで、最後の最後まで一人でも多くのお客さんに観てもらうというようなあがき方をしていくことが自分の生み出した映画に対する誠意だと思います。そういうふうにゆっくりでいいから広がってほしいと思います」と力強い応援の言葉を贈った。
福永壮志監督観客からは、福永監督に「俳優に演技経験があまりない人もいる中で、監督がいちばん求めたものは?」との質問が出た。福永監督は「求めているものは役によって違うんですが、リベリア編の教会のシーンの牧師さんは実在の人物で、彼が言っている台詞も彼の経験を自分の言葉で話しているというほとんどドキュメンタリーで、そういうふうにその人の魅力が出る作品にしたかったので、『自信を持ってやってください』というのを常にみなさんに伝えていました。演技経験の少ないリベリア人は大げさな演技をすることが多かったので、それを抑えるという作業も全体を通してやったんですが、演技が上手だろうが下手だろうが、その人を出してほしかった。『主演の俳優のまなざしがすごくいい』とよく言ってもらうんですけど、それは僕の力じゃなくて、彼が経験したものや見てきたものがまなざしを通して出てきていると思うので、僕はそこに導くようにお手伝いをしたという形です」と答えた。
大西さんには「海外の監督と仕事をする中で意識していることは?」という質問が出た。大西さんの答えは「海外と言ってもアメリカの監督だったら文化や考え方に違いがあってもわれわれ日本人にも何となくわかるけど、それがこの映画のようにリベリアだったり例えばラテン人の監督となると、当たり前のことなんだけどみんなひとりひとり『普通』が違うということで。どこの国だろうが海外の監督とやるときは、向こうもこちらに歩み寄らなければならないというのはすごく感じました。結局俳優というのは監督が撮りたい何かを体現するために呼ばれているわけで、そこで『日本じゃこうで』みたいなことを言ったところで仕方がないなというのを、いろいろ言いたい思いはした中で実感しています」と、少し苦い思いをしたのが伝わるものだったが、映画祭のプロジェクトなどで若い監督にも海外での映画制作のチャンスが増えてきている中、異文化への歩み寄りの姿勢の大切さも心に留めてほしいとあらためて思うトークとなった。
(2017年8月24日 アップリンク渋谷にて 取材:深谷直子)
(原題: Out of My Hand/2015年/米国/88分/リベリア語・英語/ビスタサイズ/5.1ch/カラー/DCP)
出演:ビショップ・ブレイ,ゼノビア・テイラー,デューク・マーフィー・デニス,
ロドニー・ロジャース・べックレー,ディヴィッド・ロバーツ,シェリー・モラド
監督:福永壮志 撮影:村上涼,オーウェン・ドノバン
音楽:タイヨンダイ・ブラクストン (元 BATTLES) 製作総指揮:ジョシュ・ウィック,マシュー・パーカー
製作:ドナリ・ブラクストン,マイク・フォックス 共同製作:早崎賢治,マーティー・ラング
脚本:福永壮志,ドナリ・ブラクストン 照明:ロイ・ノウリン,トム・チャベス 録音:マイク・ウルフ・シュナイダー 音響:アン・トルキネン,イーライ・コン 編集:ユージン・イー,福永壮志
美術:スティーブ・グリセ,イオアニス・ソコラキス 衣装:キャシディ・モシャー
配給・宣伝:ニコニコフィルム 協力:Uplink ,Normal Screen,松下印刷,蔦 哲一朗
後援:アフリカ日本協議会,アジア・アフリカ協会 © 2017 ニコニコフィルム