インタビュー
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矢崎 仁司 (監督)
映画『風たちの午後 デジタルリマスター版』について【1/5】

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新宿K‘s cinemaにて公開中、3月9日(土)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開!

『三月のライオン』『スティルライフオブメモリーズ』など、性のタブーに挑む作品を作り続ける矢崎仁司監督が、日本大学在学中の1980年に学友たちと自主制作したデビュー作『風たちの午後』。LGBTやストーカーという言葉もまだない時代、「女の子が女の子を好きになる」という内容は世界中にセンセーションを巻き起こしたが、フィルムの劣化や使用楽曲の著作権問題などにより、長らく封印されてきた。そんな幻の作品が、40年の時を経て、デジタルリマスター版にてスクリーンに蘇った。男性の恋人がいるルームメイトの美津に恋い焦がれる夏子。密室の中で加速度的に募る名前のつかない愛が、光と音の演出で純度高く浮かび上がり、その力強さは今も見る人の胸を打つだろう。矢崎仁司監督にお話をうかがった。 (取材:深谷直子)
矢崎 仁司 山梨県出身。日本大学芸術学部映画学科在学中に、『風たちの午後』(80)で監督デビュー。2作目の『三月のライオン』(92) はべルリン国際映画祭ほか世界各国の映画祭で上映され、ベルギー王室主催ルイス・ブニュエルの「黄金時代」賞を受賞するなど、国際的に高い評価を得た。95年、文化庁芸術家海外研修員として渡英し、ロンドンを舞 台にした『花を摘む少女 虫を殺す少女』を監督。そのほか監督作品に、『ストロべリーショートケイクス』(06)、『スイートリトルライズ』(10)、『不倫純愛』(11)、『1+1=1 1』(12)、『太陽の坐る場所』(14)、『××× KISS KISS KISS』(15)、『無伴奏』(16)『スティルライフオブメモリーズ』(18) などがある。
STORY 美津の誕生日。夏子はお揃いの乙女座のネックレスとバラの花を買って来る。しかしアパートの窓には白いハンカチ。それは美津の恋人・英男が来ている合図だった。ひそかに美津を愛してしまった夏子。彼女を独り占めしようと思うがゆえに英男に近づく夏子は……真夏の午後、世界を震撼させた衝撃のラストが――
矢崎 仁司監督画像2
――『風たちの午後』が制作から40年を経てスクリーンで再上映されることになり、嬉しく思っています。新作のような衝撃で受け止められると思います。最後に上映したのはいつごろなんですか?

矢崎 自分でもよく覚えていないです。何年か前にロンドンのレズビアン&ゲイ・フィルム・フェスティバルからこの作品の上映がしたいと問い合わせが来て、「もう封印しています」と答えたら「パンフレットを印刷してしまったので困る」と言われて(苦笑)。向こうが勝手に動いていたことで、僕はもう上映する気がなかったのでお断りしたんですが、その後、今から2年前に香港の映画祭からも上映したいと連絡が来ました。この映画の海外での上映はエジンバラ国際映画祭が最初だったんですが、その後、香港のシュウ・ケイ監督が上映してくれたのが世界に広がっていくきっかけになったので、また香港で上映したいなと思っていました。そういう上映依頼がわりと来るので「どうしようかな」と思い始め、でも新しい映画を作るほうが先だと思っていたのでなかなか着手するところまではいかなかったのですが、映画24区の三谷一夫さんにこっそり観せたら「これはやりましょう!」と言ってくださって動き始めました。

――永らく上映できなかったのは、フィルムが傷んでいたからですか?

矢崎 はい、相当傷んでしました。40年前にプリントを2本焼いただけで、日本や世界の映画祭を回ったので、もういいだろうというぐらいボロボロで。あとは劇中でBGM的に使っている音楽の著作権の問題があったので上映していませんでした。

――音楽の問題は今回クリアしたんですか?

矢崎 BGMは全部入れ直しました。『1+1=1 1』(12)の高速スパム、『太陽の坐る場所』(14)や『スティルライフオブメモリーズ』(18)の田中拓人さん、『無伴奏』(16)のDrop’s、他に鉄割アルバトロスケットとか、僕が映画を作ってきて出会った人たちに協力してもらいました。ですからBGMが流れている部分の会話はアフレコして。メインの二人、綾せつこさんと伊藤奈穂美さんもアフレコに参加してくれました。

――お二人が40年を経て。それはすごいですね。リマスターは傷んでいたフィルムを修復したんですか?

矢崎 映像のリマスターはネガからやっています。音ネガはなくなっていたので、音はポジから取っていますが。リマスタリングを手がけてくれたヨコシネD.I.A.の技術がすごくて、フィルムで撮っているから映像がすごくきれいなんですよね。撮影の石井勲さんが「きれいすぎる」と言っていましたが、初めは圧倒されてしまうぐらいきれいで、でも石井さんが、当時の作品の雰囲気を大切にして映像監修してくれました。

――カラーの作品をリマスターするときは、多分鮮やかになりすぎないように気を遣うものだと思うのですが、白黒は白黒で調整が必要なんですね。

矢崎 そうですね。ヨコシネの技術スタッフの方々は、作品を気に入ってくれ、とても熱心に調整してくださいました。

――私も予想を超えるきれいさに息を呑みました。80年代の風景がいきいきと蘇ってくる感じがして、とても貴重だと思いますし。こんなに美しく再生できるならもっと早くリマスターすればよかった……『風たちの午後 デジタルリマスター版』画像などとは思われませんでしたか?

矢崎 フィルムは人間と同じで死に向かっていくものと、鈴木清順監督の言葉だったと思いますけど。傷だらけの、雨だらけのフィルムを観るのも好きです。だからリマスターすることにいまひとつブレーキがかかっていたんです。今回のリマスターは、恥ずかしいけど40年前のあの感じを思い出せたのがよかったですね。

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風たちの午後 デジタルリマスター版 (2019年/日本/105min/パートカラー/モノラル/DCP)
出演:綾せつこ,伊藤奈穂美,阿竹真理,杉田陽志
監督:矢崎仁司 脚本:長崎俊一,矢崎仁司 企画:三谷一夫 プロデューサー:平沢克祥,長岐真裕
撮影:石井勲,小松原淳 録音:鈴木昭彦,吉方淳二 編集:中島吾郎,石沢清美,目見田健
音楽:信田和雄,阿部雅志,内田龍男,矢野博司,BOOZY 制作:追分史朗,長崎俊一
協力:ヨコシネD.I.A.,草野康太,原風音,本間淳志,戸丸杏 宣伝美術:林啓太,矢島拓巳 WEB:徳永一貴
製作:ABCライツビジネス,フィルムバンディット,映画24区 宣伝・配給:映画24区
© 2019 映画「風たちの午後 デジタルリマスター版」製作委員会
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2019/03/06/21:41 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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