新作情報
世界のどこにでもある、場所 http://sekadoko.jp/

2011年2月26日(土)より、シネマート新宿、
ヒューマントラストシネマ渋谷にてロードショー全国順次公開

INTRODUCTION

容疑者がいて、音楽隊がいて、象がいて、コンバット部隊がいて、新聞記者がいて、
銀座のママがいて、インドネシアの取材班がいて、警察がいて、医者がいて、患者がいる。
そして、あなたもココに、いるかもしれない。

迷い込んだのは、現代社会のワンダーランド。

『世界のどこにでもある、場所』1丘の上にある寂れた遊園地と動物園。そこに詐欺容疑で指名手配中の男が逃げ込んでくる。彼を出迎えるのは、動物と会話する女、話のスケールの大き過ぎる老人に、ゲリラと戦う兵士たち。実は彼らは神経科クリニックの患者で、壮絶な経験によって負った心の傷を、園内で思い思いに過ごすことによって癒していたのだった。やがて患者たちの妄想が妄想を呼び、警察や裏社会の人間をも巻き込んだ一触即発の事態が発生する――。誰がまともで、誰がおかしいのか? 男の運命はどうなる!?

泣いて、笑って、悩んで、病んで。群像劇の名手・大森一樹監督が贈る、開放治療エンタテインメント。

医師免許を持ち、『ヒポクラテスたち』(80)『法医学教室の午後』(85)など医療をテーマにした作品を多数手掛けてきた大森一樹監督が、ついに現代日本に広がる「心の病」に斬り込みます。
フィリップ・ド・ブロカ監督のカルト傑作『まぼろしの市街戦』(66)からインスパイアされた本作は、神経科のデイケアが行われている遊園地と動物園を舞台に、心に傷を抱えた老若男女のちょっとシュールで可笑しな人間模様を描く群像劇。笑いあり、涙あり、アクションあり、サスペンスあり、ロマンスありの怒濤の展開の中に、大らかな希望が浮かび上がっていきます。

劇団スーパー・エキセントリック・シアターの実力派俳優が総出演!

一癖も二癖もある登場人物たちを演じるのは、三宅裕司率いる劇団スーパー・エキセントリック・シアターの実力派俳優たち。「ミュージカル・アクション・コメディ」を旗印に掲げる同劇団の舞台で鍛えた身体表現で、絶妙なアンサンブル演技を繰り広げます。さらに水野久美、佐原健二といった日本映画を代表する名優がユニークな役柄で登場。テレビドラマやCMでお馴染みの顔はいないけれど、一目見たら忘れられない強烈な個性の持ち主ばかりです。

「にほんのうた」が、スクリーンから聴こえてくる。

歌、それは人の心を癒し、心を解き放ち、心を駆り立てるもの――。全編を通して音楽が重要な役割を果たす本作に、坂本龍一が監修をつとめ、著名アーティストが童謡や唱歌を未来に歌い継ぐ「にほんのうた」プロジェクトが全面協力。「シャボン玉」、「黄金虫」、「浜辺の歌」、「花のまち」といった、誰もが口ずさんだことのある歌の数々が登場人物たちの心に寄り添うように流れ、観客をあたたかくて懐かしい場所へと誘います。

2011年2月26日(土)より、シネマート新宿、
ヒューマントラストシネマ渋谷にてロードショー全国順次公開

Story

『世界のどこにでもある、場所』2地方の寂れた遊園地と動物園。
そこへ詐欺容疑で指名手配中の投資アナリスト・田口が逃げ込んでくるところから物語は始まる。

園内では迷彩服を着た男たちが戦闘の真っ最中。その脇を調子外れのマーチングバンドが闊歩し、檻の前では大人たちが動物に語りかけている。「なんだここは? 俺はどこに来たんだ!?」と混乱する田口に、親しげに話しかけてくる人々。その話の内容から、彼らが神経科クリニックの患者たちであり、ここで複数のクリニックが共同でデイケアを行っていることが明らかになっていく。

患者たちの背景は様々だ。暴力団に脅されて仕事を辞めた新聞記者、芸能界のプレッシャーに耐えられずに鬱になった歌手、9.11で同僚を失った元銀行員、母親を刺したが責任能力なしと判断された少年、テロリスト退治に燃える元自衛官、ノイローゼになった高校教師、息子が起こした通り魔殺人について自責の念にかられる母親、新興宗教の詐欺にかかった青年、自分のことを25年前に飼育員を踏み殺した象だと思い込んでいる男、日本人の映画監督に騙されたタイの女優、銀座のクラブのママから一文無しになった老女、記憶を失った資産家の老人、懇願されて執行した安楽死を殺人だと訴えられた医師……。

そして彼らをケアする医師、インドネシア人の看護師、彼女を取材しに来たインドネシアのテレビ局のクルー、資産家の娘と弁護士など、患者に関わる者たち。彼らもまた、人には言えない悩みや思惑を抱えていた。

風変わりな言動を繰り広げる患者たちに最初は戸惑っていた田口だが、彼らと過ごすうちに、一体誰が正常で誰が異常なのかわからなくなっていく。やがて患者の妄想が妄想を呼び、そこに外部の者たちの思惑が絡み合い、思わぬ事件へと発展していく――!

Staff Profile

脚本・監督 大森一樹 おおもり・かずき

1952年、大阪市生まれ。77年に『オレンジロード急行』で脚本家の登竜門・城戸賞を受賞し、翌年、同作品で劇場用映画監督デビュー。続いて自らの医学生時代の体験をもとにした『ヒポクラテスたち』(80)でキネマ旬報、報知映画賞など数々の映画賞に輝く。86年、斉藤由貴主演『恋する女たち』で文化庁優秀映画賞、日本アカデミー賞優秀脚本賞・優秀監督賞を受賞。その他、村上春樹原作の『風の歌を聴け』(81)、吉川晃司主演3部作『すかんぴんウォーク』(84)、『ユー・ガッタ・チャンス』(85)、『テイク・イット・イージー』(86)、東宝創立60周年記念作品『ゴジラVSキングギドラ』(91)、織田裕二主演『T.R.Y.』(02)、高岡早紀主演『悲しき天使』(06)、オリエンタルラジオ主演『津軽百年食堂』(11年春公開予定)など、怪獣映画から文芸もの、スター大作まで、良質なエンタテインメント映画作りの第一人者として活躍し続けている。
大森一樹公式サイト : http://www.firstwood.com

監督インタビュー「映画らしい映画を作りたかった」

――この映画の構想はどのように生まれたのでしょうか。

『世界のどこにでもある、場所』3約10年前、閉園が決まった兵庫県の宝塚ファミリーランドで映画を1本撮れないかという話が来て、その時に書いた脚本がもとになっています。ファミリーランドは学生時代にデートで行ったり、子供が生まれてからは子供を連れて行ったりした、僕にとっても思い出深い地元密着型の遊園地と動物園。そこでフィリップ・ド・ブロカの『まぼろしの市街戦』(66)をやれないかと思ったんです。『まぼろしの市街戦』は戦時下の小さな村を舞台に、兵士たちと精神病患者たちのどちらが異常なのかを描いた作品ですが、それを現代に置き換えたらどうなるか。場所は1カ所、時間は1日という制約の中で、天辺から爪先まで映画らしい映画を作ってみたいと思いました。結局、その時は閉園と撮影のタイミングが合わなくて実現しなかったんですけど、構想はずっと頭の中にあって、実は5年ほど前にも一度、神戸の動物園で撮ろうとしてスケジュールが合わずに断念したことがあります。

――10年前の脚本から変わったところはありますか。

基本のコンセプトは最初に書いた脚本から変わっていません。登場人物の設定など細かい部分を今の時代に合わせて書き直すうちに、2010年の日本を反映した作品になりました。大学で教えるようになって(社会性の薄い作風の)学生に「絵空事ではなく、現実に根ざしたものを描け」と言い続けているうちに、自分もそうするようになったという感じですね(笑)。よく学生に「実際に起きた事件から映画を作ってみたら」と提案するんですけど、僕も新聞などで見て気になった事件を話の中に取り入れたりして、気づいたら同じことをやっています。

――バーチャルなお金を操作する投資アナリスト、9.11で同 僚を失った銀行マン、疲弊した教師など、現代社会の様々な問題に関わる人々が出てきますが、中でも医師が直面している問題が大きくクローズアップされています。

日本の医師が置かれている状況というのがずっと気になっていて、(安楽死をめぐる)医療裁判の話はどこかでやりたいと思っていました。僕自身、医学部出身なので医者の知人が多いんですけど、医療の現場は『ヒポクラテスたち』(80)を作った頃から大分変わっているようです。

――脚本を書く上で、群像劇の面白さとはどんなところですか。

群像劇って、登場人物はせいぜい5、6人でしょ。今回は20人以上出てくるから群像劇というより群集劇かな。大勢のキャラクターで話を組み立てていく作業はすごく面白いです。先に挙げた『まぼろしの市街戦』はもちろん、『大脱走』(63)や『史上最大の作戦』(62)といった戦争映画――戦争映画は群集劇が多いですから――を思い出しながら、登場人物が何十人もいる中で見せ場を作るにはどうすればいいかを考えていきました。最終的にはそれらの戦争映画よりはアルトマンの『ナッシュビル』(75)や『今宵、フィッツジェラルド劇場で』(06)に近いものになった気がしますけど。

――出演者についてお聞きします。今回、劇団SETの俳優が総出演していますが、ひとつの劇団と組んで映画を作るのは初めてですよね。

まず、今回は映画やテレビであまり顔を知られていない人に出てもらいたかったんです。有名な俳優が出てくると観客は「ああ、この俳優が演じているということは重要な役なのかな」と思いますよね。そうではなくて、見覚えがない人が出てきて、その時点ではどれぐらい重要な人物なのかわからない。観ているうちにだんだん顔を覚えて、最後に「こんな人だったのか」とわかる、というのが映画のひとつの面白さだと思うんです。その面白さがこの映画には必要だと思いました。僕は最近、韓国映画が好きでよく観るんですけど、俳優をよく知らないから話にのめり込めるんですよ。
そういった理由で今回は舞台を中心に活動する人に出てもらうことになったのですが、それなら一層のことひとつの劇団と組んだらどうかという話がプロデューサーから出て、SETに打診しました。オーディションでそれぞれの俳優にいろんな役を演じてもらって、役柄に合う人を選びました。その後、ワークショップを行ってから撮影に入ったんですけど、舞台の俳優さんというのは現場でも練習通りに演じるので、尺が伸びることがないんですね。普段の現場では、実際に俳優が演じると台本上で想定していた尺より長くなることが多いんですけど、ぴたっと一緒。たまには現場に合わせて変えてもいいのにと思うこともありましたけど、でもそうしていたら期間内ではとても撮りきれなかっただろうから、助かりました。
水野久美さんと佐原健二さんはゲスト的に出てもらった感じです。このお二人は、僕のデビュー作『オレンジロード急行』(78)の嵐寛寿郎さんや岡田嘉子さんの当時の年齢とほぼ同じなんですよ。隔世の感がありますね。

――アフレコが多いのには特別な意図はあるのでしょうか。

あれは8ミリ少年の名残というか、昔からよくやる手法です。シンクロで録って、編集でセリフを変えたり間を変えたりすることは僕の映画ではよくあります。

――音楽についてお聞きします。今回の映画は「にほんのうた」プロジェクトとのコラボレーションということで、「にほんのうた」から4曲が使われています。4曲を選んだ理由は?

「浜辺の歌」はアレンジがマーチングバンドに合うと思って選びました。「黄金虫」については、学生時代に五木寛之の短編「こがね虫たちの夜」を読んで、貧乏学生があの歌を歌っている場面が印象に残っていたので、その影響でしょうかね。「シャボン玉」は……説明するまでもなく、この曲以外ないでしょう。「花のまち」は「にほんのうた」の中で僕が最も好きな歌。詞も作品にぴったりはまると思いました。

――劇伴のかしぶち哲郎さんとは『恋する女たち』(86)などでも組んでいらっしゃいますが、今回はどのようなやりとりをされたのでしょうか。

かしぶちさんとは、「(ミシェル・)ルグランで行きましょうか」「いいですね」というふうに音楽家の名前を言うだけで話が通じるんですよ。今回は「ジョルジュ・ドルリューでお願いします」と言いました。かしぶちさんの音楽によってずいぶんお洒落な映画になったと思います。

――動物園と遊園地でのロケはいかがでしたか。

遊園地での撮影は初めてではなかったけれど、今回あらためて遊園地や動物園って映画的やなあと思いましたね。これは感覚的なものなので、どこがどう映画的なのかを説明するのは難しいんですが、動いているということが大きいのかな。喋っている登場人物の手前を不意に猿が横切ったりするだけで映画的になる。不思議なもので、撮影時は「今のはちょっと邪魔やったかな?」と思うカットですら、後から観ると「よくこんなにいいタイミングで横切ってくれたな」と思えるんです。

――映画が完成した今、当初の「映画らしい映画を作る」という目的を果たせたという実感はありますか。

時間や場所の制約、予定調和ではない話の展開、そして歌あり、笑いあり、アクションありと、低予算なりに僕が映画的だと思うことを存分にやれたと思います。メジャーでこんなに映画、映画ばっかり言っているとうるさがられるけど(笑)、今回は本当に自由に撮らせてもらえましたし。僕はいつも「映画は映画から生まれる」と力説しているんですが、21世紀以降、それまでの映画史とは何の共通点もないテレビドラマのような映画が増えていると感じます。昔から続く映画史の流れの中で映画を作ってきた僕としては、やっぱり映画から生まれる映画を作っていきたい。「世界のどこにでもある、場所」というのは、動物園のことでもあるし、日本社会のことでもあるけれど、スクリーンの中のことでもあるんです。

C R E D I T

脚本・監督:大森一樹
出演:熊倉功、丸山優子、坂田鉄平、松村真知子、大関真、大竹浩一、
柳田衣里佳、野添義弘、佐原健二、水野久美 ほか
音楽:かしぶち哲郎
演奏:ムーンライダーズ、国立オペラ・カンパニー 青いサカナ団、モルダウ・ミュージック
挿入曲・エンディングテーマ:アルバム「にほんのうた」(commmons)より
企画・製作・制作プロダクション:ADKアーツ 制作協力:劇団スーパー・エキセントリック・シアター
配給:グアパ・グアポ
日本/2011年/カラー/HD CAM/16:9/STEREO/97分 (c)2011ADKアーツ
http://sekadoko.jp/

2011年2月26日(土)より、シネマート新宿、
ヒューマントラストシネマ渋谷にてロードショー全国順次公開

ヒポクラテスたち [DVD]
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  • 監督:大森一樹
  • 出演:古尾谷雅人, 伊藤蘭, 柄本明, 光田昌弘
  • 発売日:2008-02-22
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  • 監督:フィリップ・ド・ブロカ
  • 出演:アラン・ベイツ, ピエール・ブラッスール, ジャン=クロード・ブリ, ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド, ミシュリーヌ・プレール
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  • おすすめ度:おすすめ度4.5
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2011/02/11/21:33 | トラックバック (0)
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