5月21日(土)より公開の映画『亡命』
翰光(Han Guang)監督トークショーレポート
中国では、1960年代の文化大革命、1989年の6月4日の天安門事件を経て、多くの人々が世界各国への亡命を余儀なくされてきた。映画『亡命』は、異国で不自由な生活を強いられている亡命知識人、作家、芸術家、詩人、政治活動家たちの発言を通して、祖国とは何か、現代中国の実像を問いかける長編ドキュメンタリーである。日本への留学生であった翰光監督が、日本語で映画について、中国について語った。
この映画を撮ったいきさつについては、「使命感で作った」と監督。具体的には、プロデューサーの山上さんから「天安門についての映画を撮らないか」という提案があった。監督は、天安門事件を直接描くより、亡命を余儀なくされている中国人を描くことによって中国の民主化への思いを伝えようと思ったとのこと。劇中、社会的には成功を掴みながらも「亡命というのは捉われの身のようだ」と祖国への思慕、屈折した思いを語る亡命者たちの言葉が胸に刺さる。
劇中挿入される天安門事件の、被弾し流血する人々の映像が生々しいが、これはアメリカなど海外のマスコミが当時放映した資料映像だということ。挿入した理由については、中国人亡命者たちが「なぜ亡命したのか」、その理由を炙り出すような新しい意味で使用したいと思った。監督は天安門事件当時日本にいて、「これで中国は新しく生まれ変わるんじゃないか」と非常に期待した。渋谷に何千人と集まり熱気に包まれたが、四回目にはほとんど人がいなくなったとのこと。その日を境に、海外への亡命者が急増したという。
会場からは尖閣諸島問題や、東日本大震災は監督の目からどう見えるか、中東では革命が大きな動きとなったが、今後中国はどうなっていくのかなどの質問が相次ぎ、監督は時にユーモアも交えてご自分の日本観、中国観、そして真の日中友好にはお互いの深い理解が必要なことを熱く語った。
( 5月14日、TCC試写室にて 取材・文:夏目深雪)
『亡命』( カラー/HDV/118 分/2010 年製作・配給:シグロ )
かつて万里の長城を築き、他民族の侵略を遮断した歴史を持つ中国政府は、経済発展の続く現代においても情報封鎖や言論統制という目に見えない壁を築き、民主化の動きを封殺している。このドキュメンタリーは、故郷を追われ、異国の地で不自由な生活を強いられている亡命者たちの発言を通して、中国の民主化が意味するもの、そして人間の尊厳について問いかける。亡命者とは何か。彼らは中国に限らず世界中の国に存在しており、決して忘れられてはならない人々である。亡命者の存在は、政治や文化の寛容さについて考えること、行動することを常に私たちに求め続けている。
監督:翰光 企画・製作:山上徹二郎 編集・制作:ジャン・ユンカーマン 企画協力:劉燕子
(C)2010 SOG
2011年5月21日(土)シアター・イメージフォーラムにてモーニング&レイトショー、他全国ロードショー!
5月21日(土)10:45の回上映終了後、翰光監督による初日舞台挨拶決定!!
- 監督:ジャン・ユンカーマン
- 出演:ノーム・チョムスキー
- 発売日:2002-11-22
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- 監督:ジャン・ユンカーマン
- 製作者:山上徹二郎
- 出演:糸数繁
- 発売日:2011-04-28
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主なキャスト / スタッフ
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