見逃した映画特集2015
2015年12月19日(土)~2016年1月29日(金)まで、
渋谷アップリンクにて開催
気になっていたのに様々な事情で観に行くことができなかった映画たちを、もう一度スクリーンで観ることができる特集上映が、今年も今週末の12月19日(土)から渋谷アップリンクで開催される。
数多くの映画が公開された今年2015年の「見逃し映画」として認定されたのは、米アカデミー賞で最多4部門を受賞したアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を筆頭に、日本公開時に批評論争が巻き起きたデイミアン・チャゼル監督の『セッション』、巨匠アレクセイ・ゲルマンの遺作となった『神々のたそがれ』、戦後70年という節目の年に公開となった塚本晋也監督の『野火』など、全42作品。
今回の特集上映開催に合わせて、部類の映画好きとして知られるモデル・俳優の栗原類さんからは『セッション』『はじまりのうた』『ザ・トライブ』を、映画監督の松江哲明さんからは『はじまりのうた』『ローリング』『悪魔のいけにえ』を、映画ライターの真魚八重子さんからは『神々のたそがれ』『ナイトクローラー』『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』を推薦するコメントが寄せられている。
他にも、洋画ではホウ・シャオシェン監督の8年ぶりの新作となる新感覚の武侠映画『黒衣の刺客』(第68回カンヌ国際映画祭監督賞受賞)、トルコの世界遺産カッパドキアを舞台にある男の愛と赦しと人生を静謐な映像美で描いたヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の『雪の轍』(第67回カンヌ国際映画祭パルムドール大賞受賞)、フレンチアルプスにバカンスに行った4人家族がひょんなことから家庭崩壊の危機にさらされる姿を描いたリューベン・オストルンド監督の『フレンチアルプスで起きたこと』(第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞)、架空のカナダを舞台にある母子の姿を描いた感動作グザヴィエ・ドラン監督の『Mommy/マミー』(第67回カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞/カナダアカデミー賞9冠)、アルゼンチン史上最大ヒットを記録したダミアン・ジフロン監督の『人生スイッチ』などは特に観直したい作品だ。
邦画では、アラフォーの売れない映画監督の悲喜こもごもの迷走をモノクローム映像で描いた大崎章監督の『お盆の弟』(『百円の恋』の足立紳脚本)、交際4年の倦怠期のカップルが妊娠を契機に結婚にいたるまでのドタバタを描いた岨手由貴子監督の『グッド・ストライプス』、2017年の大晦日の夜に巨大ゴミ処理工場で働く人々が抱える私生活の問題を通して現代の日本を包む倦怠感や閉塞感を浮き彫りにしてみせた五十嵐耕平監督の『息を殺して』、そして静岡県富士宮市で実際に起こった事件を元に、現地の本物の不良たちを役者として起用した描いた現代ヤンキー青春群像劇で、ライムスター宇多丸氏も絶賛した小林勇貴監督の『孤高の遠吠』に注目しておきたい。
また、ドキュメンタリー映画では、1960年代にインドネシアで100万人以上が殺害されたといわれる大虐殺の加害者側の証言を記録した『アクト・オブ・キリング』の続編で、大虐殺の被害者側に焦点をあてたジョシュア・オッペンハイマー監督の『ルック・オブ・サイレンス』や、シリアの民主化運動を主導する青年の姿を追いかけたタラール・デルキ監督の『それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』(サンダンス映画祭2014ワールドシネマドキュメンタリー部門審査員グランプリ受賞)、北欧版『リトルダンサー』と絶賛された、バレエに打ち込む3少年の成長を記録したケネス・エルヴェバック監督の『バレエボーイズ』を押さえておきたい。
ラインナップには音楽ドキュメンタリーの秀作なども並んでおり、劇映画からドキュメンタリーまで本特集で2015年の映画シーンをざっくりおさらいできる内容となっている。もし上映ラインナップに今年見逃してしまった作品タイトルを見つけたなら、年末年始の時間がある時にぜひ劇場に駆けつけて観て欲しい。
栗原類さん(モデル・俳優)
■『セッション』 教師役のJ・K・シモンズは超が付く程狂気じみている鬼先生でやる事なす事全てがイカれていて”本当にこういう人いるの?”と疑ってしまいますが、そのキャラクターの設定と言葉の選びが人間臭くてフィクションぽさ全く無く”本当にいるんじゃないか”と思ってしまう様な微妙な説得力がこの映画の魅力の一つです。サウンドトラックのジャズの曲も全て素晴らしくて音楽通にもうってつけですが一番の注目ポイントはエンディングです。 最後の演奏シーンからのスタッフロールへの入り方は映画の歴史に残る様な完璧な終わり方でした。
■『はじまりのうた』 ストーリーは馴染みがある様なシンプルな恋愛物語ですが、登場人物が皆純粋であり嫌いな人は一人も思いつか無い様な”平和”な映画です。主演のキーラ・ナイトレイの歌も今作の注目ポイントの一つです。決して上手い訳ではありませんが存在感があって無視できない様な歌声を持っていてついつい聞いてしまう磁力を持っています。大作映画やCGが多い映画からちょっと一休みしたいのならこの映画はうってつけです。
■『ザ・トライブ』 今作は本当に実験的な映画でした。出演者全員が聴覚障害者である為”セリフ”が全く無いので進行は手話と役者たちの表情や仕草で映画を観る事になります。劇中も音楽が全く無いのでこの映画の暗い雰囲気はまるで聴覚障害者の人逹から観た我々の世界を表している様に思えます。暴力のシーンも役者の人逹には音が聞こえ無い為手加減をせずに本気で殴りかかる所もリアルに見えます。
松江哲明さん(映画監督)
■『はじまりのうた』 2015年は原稿を書く前のエンジンとして『はじまりのうた』のサントラを何度も再生した。追いつめられた状況から生まれた音楽を聞くと筆が進むのだ。街でゲリラ演奏という大好物な設定もよかったし、安易な恋愛関係に陥らない物語にも感動した。僕はギターを奏でるキーラ・ナイトレイに惚れない自信はないけれど。
■『ローリング』 今年の日本映画はやっぱり『ローリング』かな(『野火』は2014年に見てたので)。冨永さんを褒めると「友達だからでしょ」なんて言われたけど「友達が面白い映画を作ったら嬉しいに決まってるじゃないか!」と反論した。こんなことを言う人は 「知り合いが微妙な作品を作った時の感想を伝えなきゃいけない辛さ」を知らないのかな。川瀬陽太さんも柳英里紗さんも松浦祐也さんも井端珠里さんもお知り合いだからこそ「最高!」と言いたい。整音の山本タカアキさんもグッジョブ。
■『悪魔のいけにえ』 『悪魔のいけにえ』を見逃した人に朗報。またスクリーンで見れます。人生が変わる機会です。良い方向か悪い方向かはあなた次第だろうけど、そんな映画は1000本に1本あるかないか。「騙されたと思って」という表現があるけど、本作に限っては騙さない。見ろ。
真魚八重子さん(映画ライター)
■『神々のたそがれ』 『神々のたそがれ』は監督のアレクセイ・ゲルマンが完成直前に逝去。だがじつに13年もの時間をかけた怪作だ。本編はルネッサンス期のヨーロッパの話にしか見えないが、他の惑星を舞台にしたSFである。だが野蛮な人間しか出てこないし、四六時中誰かが蠢いている落ち着きのない映画は、情報量が多すぎて一度見じゃ足りないほど。
■『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』 若手女性監督の出世作『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』。タイトルはホラー風だが、ボーイ・ミーツ・ガールの瑞々しさと、とある重大な問題を巡って二人の間に緊張が走りつつ、うやむやになっていく恋愛の瞬間が良い。「猫運び映画」としてもカワイイ。
■『ナイトクローラー』 『ナイトクローラー』は事故現場専門のパパラッチもの。この役のため、激やせしたジェイク・ギレンホールの見た目のキモさ、推したい! さらに監督夫人である、女優のレネ・ルッソが重要な役で登場。ジェイクがレネに、仕事をネタに肉体関係を迫るシーンは、身内配役の結果、27歳も年上の女を狙う男というシーンに。でもこれが、主人公を特殊な趣味のヤツに見せる、思いがけない効果をもたらしていて、生々しさがムワッと漂う。
○見逃してしまって気になってるのは『パロアルト・ストーリー』。ジア・コッポラのセレブな家名&才媛顔やオシャレ感に気圧されて、見るのに気力がいる!
- 『悪魔のいけにえ 公開40周年記念版』(監督:トビー・フーパー/1974年/83分/アメリカ)
- 『あん』(監督:河瀨直美/2015年/日本・フランス・ドイツ/113分)
- 『息を殺して』(監督:五十嵐耕平/日本/2014/85分)
- 『沖縄 うりずんの雨』(監督:ジャン・ユンカーマン/2015/日本/148分)
- 『エレファント・ソング』(監督:シャルル・ビナメ/2014/カナダ/100分)
- 『お盆の弟』(監督:大崎章/2015年/日本/107分)
- 『神々のたそがれ』(監督:アレクセイ・ゲルマン/2013年/177分/ロシア)
- 『合葬』(監督:小林達夫/2015年/日本/87分)
- 『Cu-Bop(キューバップ)』(監督:高橋慎一/2014年/日本・キューバ/スペイン語・英語/107分)
- 『きみはいい子』(監督:呉美保/2015年/日本/121分)
- 『恐怖分子 デジタルリマスター版』(監督:エドワード・ヤン/1986年/香港・台湾/109分)
- 『グッド・ストライプス』(監督:岨手由貴子/2015年/日本/119分)
- 『孤高の遠吠』(監督:小林勇貴/2015年/日本/120分)
- 『黒衣の刺客』(監督:ホウ・シャオシェン/2015年/台湾・中国・香港・フランス/108分)
- 『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』(監督:アナ・リリー・アマポアー/2014年/アメリカ/99分)
- 『THE COCKPIT』(監督:三宅唱/2014年/日本/64分)
- 『ザ・トライブ』(監督:ミロスラヴ・スラボシュピツキー/2014年/ウクライナ/132分)
- 『人生スイッチ』(監督:ダミアン・ジフロン/2014年/アルゼンチン,スペイン/122分)
- 『セッション』(監督:デイミアン・チャゼル/2014年/アメリカ/107分)
- 『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』(監督:ヴィム・ヴェンダース、ジュリアーノ・リベイロ・サルガド/2014年/フランス・ブラジル・イタリア合作/110分)
- 『それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』(監督:タラール・デルキ/2013年/シリア/89分)
- 『ディオールと私』(監督:フレデリック・チェン/2014年/フランス/90分)
- 『トゥーマスト ~ギターとカラシニコフの狭間で~』(監督:ドミニク・マルゴー/スイス/2010年/英語/カラー/88分)
- 『ナイトクローラー』(監督:ダン・ギルロイ/2014年/アメリカ/118分)
- 『二重生活』(監督:ロウ・イエ/2012年/中国、フランス/98分)
- 『野火』(監督:塚本晋也/2014年/日本/ 87分)
- 『はじまりのうた』(監督:ジョン・カーニー/2013年/アメリカ/104分)
- 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ/2014年/120分/アメリカ)
- 『パーティー51』(監督:チョン・ヨンテク/2013年/韓国/101分)
- 『バレエボーイズ』(監督:ケネス・エルヴェバック/2014年/ノルウェー/75分)
- 『パロアルト・ストーリー』(監督:ジア・コッポラ/2013年/アメリカ/100分)
- 『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』(監督:ジェレミー・セイファート/2013年/アメリカ、ハイチ、ノルウェー/85分)
- 『フレンチアルプスで起きたこと』(監督:リューベン・オストルンド/2014年/スウェーデン,デンマーク,フランス,ノルウェー/118分)
- 『ブラジル・バン・バン・バン~ジャイルス・ピーターソンとパーフェクトビートを探しもとめて~』(監督:チャーリー・インマン/2014 年/イギリス、ブラジル、アメリカ/75分/ビスタ)
- 『ボクは坊さん。』(監督:真壁幸紀/2015年/日本/99分)
- 『Mommy/マミー』(監督:グザヴィエ・ドラン/2014年/カナダ/138分)
- 『やさしい女 デジタルリマスター版』(監督・脚本: ロベール・ブレッソン/1969年/フランス/89分)
- 『雪の轍』(監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン/2014年/トルコ・仏・独/196分/シネスコ)
- 『ラブバトル』(監督:ジャック・ドワイヨン/2013年/フランス/99分)
- 『ルック・オブ・サイレンス』(監督:ジョシュア・オッペンハイマー/2014年/デンマーク・フィンランド・インドネシア・ノルウェー・イギリス合作/103分)
- 『ローリング』(監督:冨永昌敬/2015年/日本/93分)
- 『ワイルド・スタイル』(監督:チャーリー・エーハン/1982年/82分/アメリカ)
2015年12月19日(土)~2016年1月29日(金)まで、
渋谷アップリンクにて開催
主なキャスト / スタッフ
- アナ・リリー・アマポアー
- アレクセイ・ゲルマン
- アレハンドロ・G・イニャリトゥ
- エドワード・ヤン
- グザヴィエ・ドラン
- ケネス・エルヴェバック
- シャルル・ビナメ
- ジア・コッポラ
- ジェレミー・セイファート
- ジャック・ドワイヨン
- ジャン・ユンカーマン
- ジュリアーノ・リベイロ・サルガド
- ジョシュア・オッペンハイマー
- ジョン・カーニー
- タラール・デルキ
- ダミアン・ジフロン
- ダン・ギルロイ
- チャーリー・インマン
- チャーリー・エーハン
- チョン・ヨンテク
- デイミアン・チャゼル
- トビー・フーパー
- ドミニク・マルゴー
- ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
- フレデリック・チェン
- ホウ・シャオシェン
- ミロスラヴ・スラボシュピツキー
- リューベン・オストルンド
- ロウ・イエ
- ロベール・ブレッソン
- ヴィム・ヴェンダース
- 三宅唱
- 五十嵐耕平
- 冨永昌敬
- 呉美保
- 塚本晋也
- 大崎章
- 小林勇貴
- 小林達夫
- 岨手由貴子
- 河瀨直美
- 真壁幸紀
- 高橋慎一
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