小泉麻耶――熱演が伝わってきましたが、どのように役作りをしたのでしょうか？

小泉　実際に風俗で働いていた子に体験談を聞きました。風俗で働くというのはどういうことか心構えを知りました。セックスボランティアに関しては本を読んで学びました。

戸田　風俗街にもリサーチに行ったんだよね？

小泉　新宿の歌舞伎町や渋谷の道玄坂に行って、ファッションヘルスやデリヘルなどの風俗で働いているだろう女の子を見て服装、しぐさ、雰囲気などを学びました。

――対象との距離の取りかたや背後から歩くシーンを長めに撮ったりしていてダルデンヌ兄弟の作品やその影響を受けたガス・ヴァン・サントの「エレファント」などを想起しました。

戸田　ダルデンヌ兄弟は参考にしました。撮り方だけでなく、いつも社会的なテーマ、しかも底辺に生きてもがいている人たちを描く姿勢に共感します。他にもアメリカン・ニューシネマの作品も好きで人物造形などに取り入れています。

小泉　監督から参考に渡された作品の中にダルデンヌ兄弟の「息子のまなざし」がありました。見たことのないタイプの作品だったから面白かったですし、生々しさは参考になりました。

――２番目のお客であるホーキング青山さんのシーンはアドリブに見えたのですがそうだったのでしょうか？

小泉　台詞とアドリブが半々ですね。一応脚本どおりなんですが、ホーキング青山さんがぐいぐい引っ張っていき、それに合わせていた感じでした。ホーキング青山さんは実際に障害をお持ちですがエネルギッシュな方で、あのシーンは沙織が初めてのお客さんに接する戸惑いがうまく出たので結果としてとても良かったです。

――最後に重要な役割を果たすことにもなる森山晶之さんは初めて見る方でしたが、とても好演で印象に残りました。

戸田　森山くんは演劇がメインで今作まで映画に出たことがほぼ無かったので、発声が舞台調になっていたのでまずそこから取り組みました。とても真面目な俳優です。ただ、真面目ゆえというか若いのもあるんですが、演出と無関係に小泉さんの裸を凝視してしまうことがあり困りました(笑)。

小泉　撮り方で画面には見えないですが森山くんには胸が丸見えだったのですが、森山くんが反抗的な役柄に反して胸を凝視するのに驚きました。嬉しくもありましたが（笑）、試行錯誤しながら関係を築く二人なのでその初々しさも良かったとも思っています。

――終盤で沙織がトラックをヒッチハイクするシーンがあります。とても自然なのが印象的でしたが、あそこは実際にヒッチハイクしてみせたのでしょうか？

戸田　トラックと運転手さんは用意していましたが、自然さを出したいのでリハーサルの時点からこっそり撮影していました。

小泉　監督に「あそこにいるトラックに行って、実際にヒッチハイクの交渉をするように色仕掛けでやってみて」と言われてやったんです。カメラが遠くにあって撮っていると思っていなかったので(笑い)その自然さが出ていますね。

――そうだったんですね。あそこは沙織の普通の女の子さも出ていてとても良かったです。最後に何か今作を観る方にメッセージがありましたらよろしくお願いします。

戸田　今作はテレビ番組として企画が通らなかったので初めて映画を自主製作しましたが、いろんな映画監督がいて、いろんな映画があっていいと思うんです。自主製作してみて、そのことをより強く思いましたし学ぶことは多かったです。これからも社会で陽のあたらない存在を描いていこうと思います。

小泉　沙織がデリヘル嬢になったのは楽にお金を稼げる、しかも障害者向けなら怖い目にあわないんじゃないかとどこか安易な面もあったと思うんです。でも、いろいろな人と接して学ぶことがあるわけで、だから職業で否定も肯定もしないです。その環境ならではの出会いが大切であり、人生で無駄なことはないことを感じてほしいですね。

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( 取材：わたなべりんたろう )