インタビュー
奥田 庸介/『クズとブスとゲス』

奥田 庸介 (監督)
映画『クズとブスとゲス』について【1/5】

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2016年7月30日より、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

奥田庸介監督の衝撃の新作『クズとブスとゲス』がこの夏いよいよ公開される。女をゆすって生計を立てる卑劣な男が主人公。ヤクザの女に手を出して窮地に陥った彼は、行きつけのバーで大麻を捌き、罠にかけた女を売り飛ばす。次々連鎖する暴力のスパイラルはやがて女の恋人も巻き込んでいく……。底辺に生きる人たちが必死でもがく姿を、これまでも痛快な活劇として描き、高く評価されてきた奥田監督だが、本作では自らが主演してゲスな男の生きざまを体現。殴り合いはすべてガチで行い、痛みも流血もリアルに焼き付けた。純粋で不器用で、見たことがない異形さだが、卓越のセンスで物語にグイグイと惹きつける、どこまでも手加減のない自主ならではの暴力エンターテインメント。その熱量の高さには呆然となること必至だが、ぜひ劇場で体感してほしい。コンペティション参加した昨年11月の第16回東京フィルメックスでは、作品としてではなく奥田監督本人にスペシャル・メンションが授与された。同映画祭にて授賞式前のひとときに行ったインタビューをお届けする。 (取材:深谷直子)
奥田 庸介 1986年、福島県出身。08年と09年にゆうばり国際ファンタスティック映画祭入選。10年に『青春墓場~明日と一緒に歩くのだ~』が同映画祭3度目のノミネートでグランプリを獲得。他にもぴあフィルムフェスティバル入選、ロッテルダム国際映画祭やプチョン国際映画祭で上映される。11年に『東京プレイボーイクラブ』で商業映画監督デビュー。全国で劇場公開、釜山国際映画祭や東京フィルメックスで上映され、ロッテルダム国際映画祭ではコンペティション部門であるタイガー・アワードに出品される。本作『クズとブスとゲス』では演出力だけでなく、強烈な演技も大いに注目を集め、15年東京フィルメックスにて、異例の「監督・奥田庸介」本人にスペシャル・メンションが授与された。
Story 寂れたダイニングバーで獲物を物色するスキンヘッドの男(奥田庸介)。彼は見知らぬ女性に声をかけては薬で正体不明にさせ、裸の写真を撮って強請りを働くサイテーの男。今夜もまたひとりの女が彼の毒牙にかかる。しかし女はヤクザ(芦川誠)の下で働く商売女だった。怒り狂ったヤクザ一味に、母親と住む自宅に押し入られたスキンヘッドは、1週間以内に200万円払わないと殺すと逆に恐喝されるハメに。行きつけのバーのマスターに強引に大麻を売りつけることで金を作ったスキンヘッドだったが、約束の金額には程遠く……。
奥田 庸介監督1――まずはスペシャル・メンションおめでとうございます。『東京プレイボーイクラブ』(11)での学生審査員賞受賞に引き続きの快挙で、すごいですね。

奥田 ありがとうございます。すごいですかね?

――それはすごいですよ、ここまで突き抜けた映画が評価されたんですから。発表の瞬間は、ご自分でも信じられないという表情のようでしたね。

奥田 全然知らなかったから。「取材があるから来てください」みたいに言われて来たんです。

――授賞式にはこのTシャツ姿で登壇するんですよね(笑)?

奥田 そうですね。(ロゴの)“CROOKS”って「泥棒」とか「ぶんどる」っていう意味なんですけど。これでスペシャル・メンションを授与されるなんて皮肉だなって(笑)。

――『東京プレイボーイクラブ』は商業映画として作った作品でしたが、今回は原点回帰の自主製作作品となりましたね。

奥田 原点回帰というか、「ものを作る」とか「表現する」ということに関して言えば、予算が1千万だろうが1億だろうが100万だろうが5万だろうが変わらないんですよね。だから常に原点回帰。ただ『東京プレイボーイクラブ』は、ちょっと自分でもチヤホヤされて浮かれていたところはあると思います。撮り終ったあとの満足度はまったくなくて、そこで1回ハングリーになったのは確かです。

――商業デビューして順風満帆かと思っていたらそうではなく、しばらく雌伏の日々を送る感じになってしまいました。

奥田 俺はやっぱり芸術家気取りだから。時代に抵抗しないとものは生まれないと思っていて、それはわざと抵抗しているわけではなくて、おのずから身体がそう反応してしまうわけですよ。でも今の日本映画界を見ていると、監督がプロデューサーの言いなりで、「この俳優を売り出そう」と言われてハイハイ言っているような状況で、「映画を何だと思っているんだ!」と思うんですよね。時代に迎合してものなんて生まれるわけがないし、反逆が足りないと思うんですよ。まあ反逆ばかりしていてもダメなんですけど。『葉隠』の中に「武士道は死狂いなり」という言葉があるんですけど、要は死に物狂いで生きる中に「忠」だとかが含まれているのが理想だというようなことを言っているんですね。だから俺も、死狂いでクリエイティヴなことをやった中に本物の輝きのようなものが込められるように、それを意図してそうするわけじゃなくて純粋行動の中に込められるようにしたいと思っています。……もっともらしいことを言っているけど、意味分かります(笑)?

――分かりますよ(笑)。その純粋さが奥田監督の魅力です。

奥田 でも俺は意外とメソメソウジウジしているタイプだから、俺の映画の感想とかをググったりするんですけど、そうしたら「タイトルの『ブス』というのは~」とか揚げ足取りみたいなのが多くて。そんなことを言ったら「フェリーニの『8 1/2』(63)って何だよ?」とかなっちゃうんですけど(苦笑)。なんか「女優の岩田(恵里)さんがブスじゃないからこのタイトルはどうか?」みたいな、それは本当にただの揚げ足取りですよ。

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クズとブスとゲス 2015年/日本/カラ―/DCP/ 5.1ch/シネスコ/141分
出演:板橋駿谷,岩田恵里,大西能彰,カトウシンスケ,芦川誠
プロデューサー:奥田大介,小林 岳,福田彩乃 撮影:矢川健吾 編集:小野寺拓也 録音:根本飛鳥 照明:松永光明
脚本・監督・主演:奥田庸介
製作:映画蛮族 配給:アムモ 98 ©2015映画蛮族
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2016年7月30日より、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

2016/07/23/20:01 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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