遠藤 ミチロウ (監督・ミュージシャン)
映画『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』について【6/9】
2016年1月23日(土)より、新宿K's cinemaにて公開、
以降、全国劇場および上映機会にて順次公開
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――お父様の存在はミチロウさんにとって本当に大きいものだったんですね。文学青年だったそうですね。
遠藤 そうなんです。うちの親父は石川啄木が好きだったんですけれどね。それと、うちの親父は民謡の歌詞を書いているんですよ。石川啄木が好きなので、戦前は啄木の故郷の渋民村(岩手県)の近くにある松尾鉱山の診療所で働いていたんです。そこに秩父宮か高松宮かが視察に来たときに「松尾鉱山音頭」というのが作られて、歌詞は松尾鉱山で働いている人から公募したんですけど、うちの親父の歌詞が選ばれて、ビクターからレコードが出たんですよ。僕より先にレコードを出しているんです(笑)。羊歯明神で今度やろうかなと思っています。岩手では有名な歌らしいです。
――ミチロウさんが今年新しく組まれた羊歯明神は民謡に特化したバンドですね。やっぱりルーツというか、日本の深いところに帰っていこうという気持ちが?
遠藤 そうですね。小学校のときの僕のアイドルは三橋美智也だったんですよ。そのあと高校生になってからはロックとかに行ったんですけど、子供のときは三橋美智也がいちばんのアイドルで。だから福島に向き合うことで、自分の子供のとき、「福島が嫌だ」とか「家を出たい」とか思う以前の自分に戻っていってしまったんですよね。それで民謡に向かった結果できたのが羊歯明神。もうひとつ今年組んだバンドのTHE ENDのほうは、いちばん最初に好きになり、ロックにのめり込むきっかけとなったバンドがドアーズだったので、ドアーズのカバーをやるバンドをやろうと。
――両方とも原点回帰なんですね。
遠藤 そうですね。今まで原点に立ち戻るというと、スターリンをやる前にやっていたのがアコースティックだったということで、そこまでしか戻っていなかったんです。プレイヤーとしての原点ですね。今回はその前のリスナーとしての原点にまで戻っていった。音楽を好きになるきっかけの三橋美智也と、ロックが好きになるきっかけのドアーズと。羊歯明神が福島だとしたら、THE ENDは東京なんです。東京ももう30何年も住んでいるところで、その両方が自分なので、東京と福島をバンドにしたらTHE ENDと羊歯明神になった。まるで両極なんですけど。
――ずっと旅をしてきたミチロウさんが、ここに来て東京と福島という、そんなに思い入れもない土地に自然に立ち戻っていっているんですね。
遠藤 そうですね、別に東京にも住みたいと思っていないですからね。自分が今までやってきたことが、福島に意識を向けた途端に全部繋がっちゃったようなのが本当に不思議なんです。95年から毎年8月6日に広島でライブをやってきたことも、8月15日に東京でライブをやってきたことも、ホピに行ったことも、奄美大島に行ったことも。全部が繋がって、福島の震災に繋がっちゃったという気がして、なんかね……。
――いちばん起こってほしくないと心配していたことが、やはり起こってしまったという感じですね。ただ、ミチロウさんがそういう危惧を抱いていたから、プロジェクトFUKUSHIMA!の活動が実際的なものになったのだと思います。放射線衛生学者の木村真三さんとも組んで、当時よく分かっていなかった放射能汚染について考えようという啓蒙活動のようなこともしていますよね。
遠藤 木村先生にはフェスティバルFUKUSHIMA!をやるときに放射能対策だとかのアドバイスをもらって、そこから繋がりができました。
監督:遠藤ミチロウ
プロデューサー:志摩敏樹 撮影:高木風太 録音・整音:松野泉 制作進行:酒井力
編集:志摩敏樹、松野泉 撮影協力:柴田剛 宣伝美術:境隆太 配給担当:田中誠一
出演:遠藤ミチロウ、THE STALIN Z(中田圭吾、澄田健、岡本雅彦)、THE STALIN 246(クハラカズユキ、山本久土、KenKen)、NOTALIN’S(石塚俊明、坂本弘道)、三角みづ紀、竹原ピストル、盛島貴男、AZUMI、山下利広(BIG MOON Cafe)、麓憲吾(ASIVI)、伊東哲男(APIA40)、中川澄夫(TE-TSU)、中川ミサ子(TE-TSU)、佐伯雅啓(OTIS!)、大友良英、和合亮一、二階堂和美、オーケストラFUKUSHIMA!、遠藤チエ
2015年/日本/カラー/DCP/5.1ch/102分
製作・配給:シマフィルム株式会社 ©2015 SHIMAFILMS
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