――いいですね。やっぱり音楽によって同じ土俵で会話できると。あと、お父様のお話も興味深いものでした。

遠藤　はい、まさかうちの親父も民謡を作っているとは。

――血は争えませんね。お父様が「松尾鉱山音頭」の作詞をされたことは、前作でインタビューしたときに伺っていましたが、今回の映画にその曲で盆踊りしているニュース映像が入っていて驚きました。よく残っていましたね。

遠藤　あれは本当にビックリしましたよ。しかも親父が出てきますからね。

――そうですよね。盆踊りもちょっと変わった踊りでした。

遠藤　あれも新民謡ですよね、要するに昔からあった民謡じゃなくて昭和13年ぐらいに作った民謡ですからね。松尾鉱山に住んでいる人たちが盆踊りをするために作ったものだから、「志田名音頭」のようなもので。

――ミチロウさんのお父様も素敵な方ですね。とてもハンサムですし、趣味が豊かで。職場で大勢の方を率いて演芸部をやっていたとは粋ですね。

遠藤　そうですよね。でもうちの親父は小学校しか出ていないんですよ。

――そうなんですか。でもX線技師として病院で働いていたということは、独学でかなりお勉強をされたんでしょうか？

遠藤　昔だから国家試験とかもなくて資格もないから、技術があればOKというか。誰かに師事してX線の技術を身に付けたら、それでいろんなところで働けたんですよね。東京の日赤でも働いていましたから。国家試験が出てきたのは僕が中学生のころかな？　それから国家試験のために親父は勉強していましたから。医学用語はドイツ語だから、ドイツ語の勉強とかもちゃんとやっていましたね。

――そうなんですか。

遠藤　ええ。あとやっぱり昔の放射線だから被曝していますよね、完全に。しょっちゅう鼻血を出していましたよ。まあ子供の前では言わないんですけど、夜中に親父とおふくろが会話しているのを聞くと「鼻血が出るのはX線の放射線のせいかな」とか言っているから、子供ごころに「怖いなあ……」って思っていて。その父から生まれた子供だから自分はある意味被爆二世なのかなって。それは僕が広島とかに関心を持たざるを得ない要因のひとつになっていますよね。

――ミチロウさんを形づくるものには本当にお父様の影響が大きいんですね。

遠藤　でかいですね。うちの親父はすごい文学少年でしたし。石川啄木が好きで、松尾鉱山の診療所に行ったのも、岩手県の八幡平っていうところにあるんですが、啄木の田舎の渋民村のすぐ近くなんですよ。それで行ったんです。

――すごい情熱ですよね。やっぱりミチロウさんのお父様だなあって感じますね。

遠藤　ただやっぱり小学校しか出ていないから、ちゃんと高校・大学とか出た人と比べたら立身出世とかはないから、俺に対しては「大学に行け、大学に行け」ってうるさいし、「役人とはどれだけ安定したいい仕事か」というのを説くんですよね。昔は役人ってもっといばってましたからね、安定していて不況になってもつぶれないとか。それでもう俺は「大学は行きたくない！公務員にだけはなりたくない！先生と呼ばれる職業には就きたくない！」って（苦笑）。

――逆に反面教師になってしまった（笑）。

遠藤　完全に反面教師ですよ。先生と呼ばれる職業って学校の先生と医者と政治家かな。それだけは絶対になりたくないって。

――（笑）。木村真三先生とは一緒に組んでますよね。まあ木村先生は先生ですけど、自ら除染作業をして「土方学者」と呼ばれるような型破りな方で。

遠藤　木村先生は不良ですからね（笑）。僕とまるっきり逆なんですよ。僕は若いときは優等生で、大学あたりからだんだん不良になっていくんだけど、木村先生は不良からだんだん先生になっていったんで（笑）。科学者の枠からはみ出していて、そこが多分合うんじゃないかなって思いますね。