遠藤 ミチロウ (監督・ミュージシャン)
映画『SHIDAMYOJIN』について【4/7】
2017年5月27日(土)より、新宿K's cinemaにてレイトショー上映
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――そうですね。言葉だとそのとおりの意味を受け取ることが大事ですが、音楽は聴く人が自分なりの解釈をして、受け取り方に幅ができるというのもありますね。
遠藤 そうですね。音楽には「言葉の違いを越えて全世界共通のメディアになる」みたいなことがあるじゃないですか。それは空間的な意味合いが強いですよね。「日本人でも何人でも音楽で繋がれる」みたいな。そうじゃなくて世代的、時間的な違いを飛び越えてみんなが楽しめるというのも音楽にはできるんじゃないかと思って、それが僕の今回のテーマなんです。ところが今は世代によって聴く音楽が全然違うじゃないですか。年寄りの聴く音楽と、若い人の聴く音楽と、子供の聴く音楽とで違うし、若い人が聴く音楽も、ラップが好きだとかパンクがいいだとか、また分断されて。細かく分断されるのは、そうしないと売れないからですよね。いろんなジャンルがあると売る方としてはカタログがいっぱいあるようなものだからやりやすいんです。
――なるほど。そこでミチロウさんがしようとしているのは、その場にいる人みんなをひとつにするような音楽で。
遠藤 うーん、みんなを1色にまとめるんじゃなくて、何色があってもOKですよ、みたいなことですよね。いろんな多様性を全部受け入れて、懐の深い音楽をやりたいなっていうことを思いますね。
――そうですね。聴き方も自由で、フェスだと前に行って思いっきり盛り上がってもいいし、ファンじゃない人も寝転がって楽しめるし。
遠藤 たとえば「ロマンチスト音頭」なんてそうですよね。「ロマンチスト」をやったら年寄りは「ワーッ、俺らの聴くものじゃない」ってなるけど、「ロマンチスト音頭」にして音頭のリズムでやってたら歌詞なんて聴いてなくても楽しめちゃうんですよね。それであとで歌詞は入ってくるんですよ、「なんだこの歌は?」みたいな。「新しい民謡ですよ、若い人にウケているんです」なんて言うと「ああ、そうかい」なんてね(笑)。
――(笑)。なんの違和感もなくとりあえず入り込んで、あとで引っかかってくるみたいな。
遠藤 そうそう、「STOP JAP」なんかもね、音頭で「〽ストーップジャーップ」ってやっていたら何のことかわかってなくても聴いていますよ(笑)。で、そのあとで残っていたりするんですよね、「〽お前はいったい何人だ」とか、なんだこれは?って。
――ミチロウさんの歌詞のすごさもありますけど、それが音楽の力ですよね。でもミチロウさんがまさか民謡に行くとは思っていなかったです。
遠藤 僕だって思っていなかったですよ(笑)。
――前にトークでおっしゃっていましたが、福島で初めて民謡を歌ったときは、おばさんたちに「歌が下手だねぇ」と言われたと(笑)。
遠藤 そうそう、そうなんです(苦笑)。でも下手だけど、「下手」って言うってことは聴いてくれたってことじゃないですか。僕が普通に僕の歌を歌ったらオバチャンにとっては上手いんだか下手なんだかわからないですよ、自分が聴かない音楽だから。ところが民謡は聴いている音楽だから「こいつ下手だな」って、ちゃんと聴いてくれているんですよね。
――わかる音楽をやってくれてという嬉しさも込められている言葉で。
遠藤 でも多分、民謡を歌ってくれて嬉しい反面、「民謡はそんなんじゃないよ」みたいな気持ちもあって。そういうオバチャンが持っている音楽の感覚をこっちは認めて、その認められたっていうのがあるから「下手だね」っていう反応をくれて、そこにコミュニケーションが生まれたんじゃないですか。
監督:遠藤ミチロウ、小沢和史
撮影:小沢和史、藤田功一、照屋真治、木村真三、阿部崇 編集:小沢和史 整音:宇波拓
カラーグレーディング:稲川実希 製作・配給:北極バクテリア プロデューサー:伊東玲育、藤田功一
宣伝/海外担当/ウェブデザイン:植山英美 デザイン:新矢千里
出演:遠藤ミチロウ、木村真三、伊藤多喜雄、石塚俊明[羊歯明神]、山本久土[羊歯明神]、
茶谷雅之[羊歯明神Jr.]、タテタカコ、永山愛樹
© 2017 SHIDAMYOJIN
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