遠藤 ミチロウ (監督・ミュージシャン)
映画『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』について【5/9】
2016年1月23日(土)より、新宿K's cinemaにて公開、
以降、全国劇場および上映機会にて順次公開
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――タイトルを『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』にしたのはなぜですか?
遠藤 僕は『ワルシャワの幻想』にしたかったんですよね。映画の最後も、あずま球場で歌うその曲で終わるし。でもシマフィルムさんと相談しているうちに「もっと福島にドーンと直結するようなタイトルがいいんじゃないか?」ということになったんです。このタイトルになったことで、映画の内容も変わりました。本当はもっと父をメインにしていたんですけどね。
――先ほども少し伺いましたが、「父親の背中を見て育ってきた」と語られていますよね。お母様のほうは、ミチロウさんがそんなにも愛憎を抱いているのはどういう方なのかと思っていたら……。
遠藤 みんな僕と母親との間にどんなにすごいドラマがあるのかと期待して観ちゃうらしいんですよね。でも観たら結構あっけない感じで。最後は僕が「ハゲたね」なんて言われて、立場が逆になって終わっているところがなんかもう……(苦笑)。「“お母さん”って何だったんだろう?」っていうのをそれ以上突き詰めていないですよね。
――(笑)。あの帰省のシーンでは、ミチロウさんが本当に居心地悪そうでしたよね。お母様は明るくていいお母さんに思えましたが、ミチロウさんはタジタジで。帰省シーンを撮るときはどんなお気持ちだったんですか?
遠藤 いやあ……。なんかねぇ、出したくなかったんですけどね。
――「お母さん、いい加減~」の歌にしても、こういうタイトルですけどライブでは毎回歌っているわけですから、愛情の裏返しというか、逃れられない業のようなものがあるのだろうと思ってしまうんですが。
遠藤 なんでしょうねぇ……。母性に対する抵抗感があって、苦手だなっていうのがあるんです。僕は吉本隆明さんの思想にとても影響を受けているんですが、いちばん惹かれたのは、吉本さんは「共同幻想」と「自己幻想」と「対幻想」という捉え方をして人間の社会を捉えるんですが、その中の「対幻想」の概念なんです。国家という共同幻想ができあがっていくのと同時に自己幻想もできて、裏表の関係でどんどん肥大化していくんだけど、それらは元々なかったもので、本来あったのは家族や男女関係が生み出す対幻想だけだった……というような、その思想に惹かれて吉本さんの影響を受けていくんです。僕は物心がついたころから「家族って何なんだろう?」っていうのをすごく考えていましたから。
――家族の関係そのものにそんなに疑問を持たれていたんですね。
遠藤 ぼんやり考えていただけですけどね。大学に入ってから吉本さんの本に出会って。最初に読んだのは『高村光太郎』でした。子供のときから高村光太郎が詩人でいちばん好きだったから読んだんですが、それも「父と子」の話なんですよ。高村光太郎が父の高村光雲との格闘の中で自分を形成していく、それが僕にとっては面白くて。
監督:遠藤ミチロウ
プロデューサー:志摩敏樹 撮影:高木風太 録音・整音:松野泉 制作進行:酒井力
編集:志摩敏樹、松野泉 撮影協力:柴田剛 宣伝美術:境隆太 配給担当:田中誠一
出演:遠藤ミチロウ、THE STALIN Z(中田圭吾、澄田健、岡本雅彦)、THE STALIN 246(クハラカズユキ、山本久土、KenKen)、NOTALIN’S(石塚俊明、坂本弘道)、三角みづ紀、竹原ピストル、盛島貴男、AZUMI、山下利広(BIG MOON Cafe)、麓憲吾(ASIVI)、伊東哲男(APIA40)、中川澄夫(TE-TSU)、中川ミサ子(TE-TSU)、佐伯雅啓(OTIS!)、大友良英、和合亮一、二階堂和美、オーケストラFUKUSHIMA!、遠藤チエ
2015年/日本/カラー/DCP/5.1ch/102分
製作・配給:シマフィルム株式会社 ©2015 SHIMAFILMS
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