遠藤ミチロウ監督/『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』

遠藤 ミチロウ (監督・ミュージシャン)
映画『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』について【8/9】

2016年1月23日(土)より、新宿K's cinemaにて公開、
以降、全国劇場および上映機会にて順次公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』場面13――先日の山形国際ドキュメンタリー映画祭がプレミア上映の場となりましたが、手応えはいかがでしたか?

遠藤 う~ん、ドキュメンタリー映画を撮り続けてきた監督たちの中に、僕みたいにミュージシャンでありながら、いわば片手間的に映画監督をやっている者が交じっていいのかなあ?と思いましたね。「素人がいい加減なものを作りやがって」なんて思われていないかなと。山形で三上智恵監督に会ったんですけど、必死感がすごかったですよね。「今、沖縄が本当に大変だから!」というのがガンガン伝わってきて。自分の映画は、音楽と同じだけのエネルギーを込めるというところまでは行っていない気がして、広く浅くやってしまったかなと。ただ、こういう内容は自分にしか作れないものだから。俺にしか撮れない映画になったかなと思います。

――そう思います。ミチロウさん自身の視点からというのがとてもユニークですし、しかも撮っている途中で震災が起こり、思いがけない状況下での活動やミチロウさん自身の変化を記録することになったというのも、たまたまこのとき撮っていたからできたことで。こういう偶発性がまさにドキュメンタリーの面白いところですよね。

遠藤 そうなんですよね。

――また映画を撮りたいと思いますか?

遠藤 今作っているんですよ、志田名の映画を。それは全部自分が撮るわけではなくて、今まで木村先生と撮った映像も入れますし、これからも撮ります。村の人ひとりひとりにインタビューしようかなとか。

――すごいですね、映像という表現もすっかり駆使されているとは。志田名を撮っているというのは、土着の問題に関心が高まっているということですか?

遠藤 そう、土着ですね。福島だけではなくて、全国の限界集落とか、そういう地方の問題を考えていきたい。“地方と東京”とかの問題が、福島と沖縄にいちばん如実に表れているけど、それは全国の地方どこでも起きていることなんです。ただ、その問題も盛り上がってはまた別の問題に目が行ってしまうじゃないですか? 「反安保」で盛り上がると沖縄のことも福島のことも忘れられたようになってしまい、来年になったらまた来年の、選挙だとかが出てくるんですよね……。福島もどこも大変で、そこの当事者じゃないとなかなかその大変さは分からないけれど、普遍的な問題として捉えられるようになっていけばな、と思います。

――音楽活動では、これからどんなことをしていきたいですか? 

『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』場面14遠藤 自分が歌うことで何ができるのかという可能性を、今度の羊歯明神とTHE ENDですごく感じたので、それをもっと突き詰めていくと思います。ロックに対する幻想というのはもうないですからね。ジョニー・ロットンが「ロックは死んだ」と言っていたじゃないですか? でもそのあと「Punk’s not dead」って……、とっくに死んでるよ!もう(苦笑)。

――あはは。

遠藤 もうロックに可能性なんか全然感じられないから、それに落とし前をつけたいというのが自分の中ではあるんですよね。リスナーには、ロックという言葉に意味がある、みたいな幻想がまだあるんですけど、いや、もうない。J-POPもロックも同じで、ロック自体その後の新しいものが出てきていないのが現実。

――もっと実体のある、自分が本当に求めている音楽をやっていこうと。

遠藤 特に羊歯明神の場合は、元々の原点でありながら、ロックを聴き出してパンクをやって、またアコースティックに帰ってきて、そうしてやってきた音楽を総まとめした結果が羊歯明神みたいな気がするんですよ。アメリカとかに行ってライブをやると、スターリンでもそうでしたけど、パンクだろうとロックだろうと、アメリカやイギリスがオリジナルだなと。日本語で歌おうが英語で歌おうが、「お前たち真似しているんだろう?」というのを感じるんです。そういう意味では羊歯明神というのは日本人にしかできない音楽で、ある意味いちばんインターナショナルな位置を獲得している。世界のどこにもない、日本からしか生まれなかった音楽というのはインターナショナルだと思います。

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お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました
監督:遠藤ミチロウ
プロデューサー:志摩敏樹 撮影:高木風太 録音・整音:松野泉 制作進行:酒井力
編集:志摩敏樹、松野泉 撮影協力:柴田剛 宣伝美術:境隆太 配給担当:田中誠一
出演:遠藤ミチロウ、THE STALIN Z(中田圭吾、澄田健、岡本雅彦)、THE STALIN 246(クハラカズユキ、山本久土、KenKen)、NOTALIN’S(石塚俊明、坂本弘道)、三角みづ紀、竹原ピストル、盛島貴男、AZUMI、山下利広(BIG MOON Cafe)、麓憲吾(ASIVI)、伊東哲男(APIA40)、中川澄夫(TE-TSU)、中川ミサ子(TE-TSU)、佐伯雅啓(OTIS!)、大友良英、和合亮一、二階堂和美、オーケストラFUKUSHIMA!、遠藤チエ
2015年/日本/カラー/DCP/5.1ch/102分
製作・配給:シマフィルム株式会社 ©2015 SHIMAFILMS
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2016年1月23日(土)より、新宿K's cinemaにて公開、
以降、全国劇場および上映機会にて順次公開

2016/01/21/19:18 | トラックバック (0)
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