奥田 庸介 (監督) 映画『クズとブスとゲス』について【5/5】
2016年7月30日より、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
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――本当にこんなことをやってしまうとは……。そこまでして暴力を生々しく撮るというのは、やっぱり生命力を見せたいからですか?
奥田 さっきも言いましたが、命をどうやって見せるかと言ったら、死から浮き彫りにするしかないんですよ。そうしてモリモリと盛り上がってくるのが命だから。惰性的に歯車として生きているのでは盛り上がってこない。立体的にするには死を描かないと。……あとは、単純に俺がちょっとおかしくなっちゃってて、「商業映画も自主映画も関係ねえ、これが奥田庸介の生きざまだ馬鹿野郎!」という決意表明みたいな、「俺はこれだけ映画に覚悟を決めてるんだ」っていうことをやりたかったのかもしれないですね。当時のことはもうよく憶えていないけど。
――奥田監督が演じた男は本当にゲスで、心もなければ成長もまったくしないんですけど、最後に感動しました。不屈の精神というか、なんとしても生き延びようという執念というか。
奥田 死にそうなゴキブリがブオ~っと向かってくるみたいなもんですね、最後の力を振り絞って(笑)。生きたいんでしょうね。何が楽しくて生きているか?って言ったら快楽しかないんですよ、コカイン吸って女抱いて適当に酒飲んで、欲望の赴くままに生きているっていうキャラクターで、本能からどうしても生きたかったんでしょうね。板橋さんが演じる“リーゼントの男”も、生命にそこまで固執する“スキンヘッドの男”に一種の畏怖を抱いていたところはあると思います。
――やっぱり愛の映画なんですよね。ますます興味が湧く面白いお話をたくさんしていただいてありがとうございました。これから公開に向けてまだまだやることはたくさんあると思いますが、プレミア上映というひとつの区切りを通過し、評価も受けて、手応えはいかがですか?
奥田 うーん、今は実感としてはあまりよく分からないかな。でも俺はまだまだこんなもんじゃないですよ(笑)。もっともっと行けます。
――おお、楽しみにしています(笑)。今後の計画で何か決まっていることはありますか?
奥田 とりあえずバイト探さないと(苦笑)。フィルメックスが決まって「イエ~イ!」って仕事を辞めちゃって今無職なんですよ。お金を稼がなきゃならないから仕事を探します。
――(笑)。このあと何か撮りたい題材などはありますか?
奥田 表現したいものがあれば、自分の中で湧き上がってきたものをそのままやります。「こうやってみたほうがテーマに広がりが出るんじゃないか?」みたいに頭で考えて、戦略的にと言うんですかね?そういうふうに作品を作るということはしたくないんです。自分の情熱に正直に、今までと似たようなものが降ってきたら似たようなものをやるかもしれないし、全然違うものが降ってきたら違うものをやるかもしれないし、そういうふうにやっていきます。
――そうですよね。これからもむき出しの情熱で作った映画を見せていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
( 2015年11月28日 有楽町朝日ホールで 取材:深谷直子 )
出演:板橋駿谷,岩田恵里,大西能彰,カトウシンスケ,芦川誠
プロデューサー:奥田大介,小林 岳,福田彩乃 撮影:矢川健吾 編集:小野寺拓也 録音:根本飛鳥 照明:松永光明
脚本・監督・主演:奥田庸介
製作:映画蛮族 配給:アムモ 98 ©2015映画蛮族
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