第92回アカデミー賞 国際長編映画賞 コロンビア代表
第35回サンダンス映画祭 審査員特別賞受賞
MONOS
猿と呼ばれし者たち
2021年10月30日(土)より、シアター・イメージフォーラム
ほか全国順次ロードショー
時も、場所も、定かではない世界のどこか。
《猿》と呼ばれた8人の若き兵士がいた――。
世間から隔絶された山岳地帯で暮らす8人の兵士たち。ゲリラ組織の一員である彼らのコードネームは“モノス”(猿)。「組織」の指示のもと、人質であるアメリカ人女性の監視と世話を担っている。ある日、「組織」から預かった大切な乳牛を仲間の一人が誤って撃ち殺してしまったことから不穏な空気が漂い始める。ほどなくして「敵」の襲撃を受けた彼らはジャングルの奥地へ身を隠すことに。仲間の死、裏切り、人質の逃走…。極限の状況下、”モノス”の狂気が暴走しはじめる。
前作「Porfirio」 (11/日本未公開) がカンヌ国際映画祭監督週間に出品された新鋭アレハンドロ・ランデス監督の3作目は、南米・コロンビアで50年以上続いた内戦を下敷きにした物語だ。暴力の脅威にさらされ続けたコロンビアの歴史と、外界から遮断された世界で生きる少年少女兵の思春期のゆらめきを重ね合わせ、幻想的な世界観で描く。各国の映画祭で63部門にノミネートされ、その内サンダンス映画祭やBFIロンドン映画祭などで受賞した。
出演するのは『キングス・オブ・サマー』の若手実力派で写真家としても活躍するモイセス・アリアス、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』のジュリアンヌ・ニコルソン。アリアス以外のMONOSメンバーを演じたのは、コロンビア全土から集まった 800人以上の中から選ばれた演技未経験の精鋭たち。アンデス山脈の高地で行われた過酷な訓練と演技オーディションを経て出演を果たした。さらに、実際のゲリラ組織「FARC」を脱退したことで賞金首となった過去をもつ元戦闘員が、 MONOS の司令官であるメッセンジャー役を演じている。
- 『ディア・ハンター』『地獄の黙示録』を初めて観た時のように、
とにかく圧倒され、魅了され、しばらく呆然自失した。
映画の長い歴史において、未だこんな新鮮な印象と衝撃を与えられる作品が生み出されることに、深く感動する。登場人物たちの生き死を操っている神(あるいは悪魔)のようなカメラワークや音楽も、存分に堪能して欲しい。
――世武裕子(映画音楽作曲家/演奏家) - これはコロンビア内戦の「闇の奥」で孵化した現代版「蝿の王」だ。
タガを外された若者たちの暴走が、狂気を伝播し、暴力の濁流を生む。
それは、奔放であり、無邪気でもある。
恐怖が豚(ヒト)の首にたかり、異形の猿(モノス)に貶める異質な蝟集音。
美しくも残酷なその羽音はミカレヴィによってさらに増幅される。
映画が終わっても、その羽音は消えない。――小島秀夫(ゲームクリエイター) - 映画でよかった。こんなところじゃオレは真っ先に死ぬだろう。
地獄はこの世にある。それを体験するフィクション。
ああ、フィクションでよかったよ。そして日本がまだ平和でよかった。
平和を失いたくないと強く思いました。――古舘寛治(俳優) - 子供を兵士として育成することは残酷だ。
自意識を奪い、自ら判断を下せないが戦闘力は高い忠実な獣を作り出すためだ。
この悲惨な現実はいまだに世界を蝕んでいる。
本作はフィクションでありながら、ガチすぎる世界の闇を突きつけてくる。
――丸山ゴンザレス(ジャーナリスト) - 彼ら、彼女たちは何のために闘うのか、その「大義」を誰も口にしなかった。
ここにたどり着くまでに何があったのか、身の上を語る者もいなかった。
それは、なぜなのか。この映画は強烈に問いかける。
――安田菜津紀(NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
- 焦りを覚える。彼らが見せる暴力性こそ人間を基礎付けるのではないか。
であるならば、私たちはこの社会に調教されきって、
根源的な人間性に蓋をしてしまっているのではないか。
そう思うほど、猿と呼ばれた少年少女は生臭くて美しかった。悲しいけれど。
――上出遼平(テレビ東京・ディレクター) - 残酷なまでに美しい景色の中で繰り返される無情な生存競争。
見たこともない景色を描いた今作は、どこまでも忘れられないインパクトをあなたの心に残すだろう。――オカモトコウキ(OKAMOTO’S) - ミカ・レヴィによる、間を雄弁に操った音像がとても素晴らしかった。
高地の空気の薄さと隔絶された生命たち、
密林の濃密な湿度に潜む得体知れぬ気配、
そのいずれもシャーマニックに鳴らした彼女の映画音楽にこれからも注目したい。――Ed TSUWAKI(イラストレーター) - この計算され尽くされた、カオスの重なりの表現が
途方もなく強く鈍い美しさとして映し出され圧倒されました。
ファッションデザイナーとしてこれ程までに素晴らしい衣装に驚きを感じます。
この映画はモードだと思う。――落合宏理(ファッションデザイナー) - 鮮烈で幻想的な映像の中に、底知れぬ絶望をはらんだ二つのブラックホールを見る。外界から途絶され、名もなき兵士たちを蟻のように呑み込むジャングルの圧倒的峻険さと、組織から遮断され、絶望のジャングルで繰り広げられる暴力の連鎖。この二つのブラックホールをすり抜けた者の存在に、微かな希望が兆して見えた。――真鍋祐子(東京大学教授)
撮影:ヤスペル・ウォルフ 編集:ヨルゴス・モヴロプサリディス 音楽:ミカ・レヴィ
出演:モイセス・アリアス、ジュリアンヌ・ニコルソン
2019年/コロンビア=アルゼンチン=オランダ=ドイツ=スウェーデン=ウルグアイ=スイス=デンマーク/
スペイン語・英語/シネスコ/5.1ch/102分/原題:MONOS/字幕翻訳:平井かおり/R15+
提供:ザジフィルムズ、インターフィルム 配給:ザジフィルムズ 協力:ラテンビート映画祭
後援:駐日コロンビア共和国大使館、インスティトゥト・セルバンテス東京
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