映画祭情報&レポート

第20回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭レポート3

澤田直矢フェスティバル・ディレクターインタビュー
ハリウッドから自主製作まで

帰りなさい」が合言葉となるゆうばり映画祭は、ここへ訪れる者をたちまちに魅了し、また何度も足を運ばせるリピーターを生むことで有名である。映画三昧の夢の5日間。この盛大な祭典を取り仕切るのは、特定非営利活動法人(NPO法人)ゆうばりファンタの代表理事でもある澤田直矢フェスティバル・ディレクターだ。作り手にとっての映画祭とは何か。市民にとっての映画祭とは何か。そして澤田氏自身の映画祭とは何か――。アディーレゆうばり会館事務室にてお話を伺った。(取材:鎌田 絢也)

――まずは、初日お疲れさまでした。はじめに初日を終わっての感想をお聞かせください。

澤田直矢氏 ゆうばり映画祭フェスティバル・ディレクター1澤田FD 今年はですね、異例のイレギュラーがございまして(笑)、もう映画祭3回分一日で終わっちゃった位の心理的な疲労はありましたが、その分、ある種の達成感みたいなものがありましてですね、うん、嬉しかったですね。

――今回は、飛行機が飛ばないという予想外のアクシデントがありながら、こうして2日目を無事迎えております。昨日のパーティの最後に、スタッフとともに創り上げる映画祭ということを述べておられましたが、映画祭のスタッフワークで一番大変なこととはどういうものでしょうか?

澤田FD なかなか難しいものですけど、みんなの合意の下進められるものばかりではないんで、調整が必要になってくるものがあるんですよね。そこで僕が映画祭全体を俯瞰で見たときに、あえて削らなければいけないもの、あえて膨らませなければいけないものがあったりするので、そういうものを選択し伝えていく、そうしたバランスを一番気にするようにしていますね。それから映画祭は続けていかないと意味がないと思っているので、やりっぱなしで終わるのではなく、必ず次に繋がる種を拾っていこうと意識してやってますね。

――次に繋げていくという意味では、大都市ではなく地方都市としての難しさ、色々なご苦労がおありだと思います。これまで様々な趣向を凝らして開催を続けて来られましたが、今回の映画祭でやりたかったけど出来なかったことというのは?

澤田FD たまたま作品が無くて3Dの上映ができないとか、当然設備的な問題もあったりするので難しかったですけどね。あとは個別の作品で泣く泣く落としたというようなこともそうですね。

――このゆうばり映画祭は、「夕張モデル」と言われるくらい先進的な映画祭として国内外で注目を浴びております。今後、澤田さんの構想の中で、海外とのネットワークを踏まえたグローバルな展開というのはおありでしょうか?

澤田FD それは結果的にそうなっていくものだと思うんですよね。もう今は映画が自由に世界を飛び回っているんで、それを面白いと言った時点が海外だったというだけで、映画祭ができることはどんな国の映画でも面白いものは面白いと紹介できるという、それが結果的にグローバルになっていくんじゃないですかね。

――地方からの発信というのをいち早く手がけられたことはひじょうに注目度が高いと感じますが、そうしたある種のインディペンデント精神が作り手のインディペンデントな部分と結びついているような気がします。

澤田FD 入江悠監督に言われたんですけど、「ゆうばりってノリがいいですよね」って。去年グランプリ取った後、次回作何を作ろうかといった時に、入江監督は「2」をやりましょうって話で(笑)、普通は「2・・・」か。って話になると思うんですけど、「えー、群馬ですかぁ」って言いながら「面白いんでやりましょうか」ってことになっちゃうわけですよ(笑)。そういうへんなノリのよさはありますよね。特にインディペンデントな作家の方とは、肌合いの近い人が多いような気がしますね。

――今後は、そうしたインディペンデント精神に溢れる作家を製作的に支援していこうという新たな展開はお考えですか?

澤田直矢氏 ゆうばり映画祭フェスティバル・ディレクター2澤田FD 基本的には今のスキームで続けて行こうと思っています。財政的なこともありますので。ただ何か新しいことは考えたいなと思ってます。井上都紀監督の『不惑のアダージョ』や入江監督の『ラッパー2』なんかはうまく回ってますんでね。こういう形を継続していきたいと思いますね。入江君が……もう入江君なんて言っちゃいけないんだよな(笑)。入江監督が監督協会の新人賞を取ったというニュースが入ってきて、回し始めて早い段階で結果が出てると思うし、この二人の作家は、ゆうばりのインディペンデント性を象徴する作家になってきてるのかなぁと思いますね。たかだかまだ2、3年なんで、まだこの先続けられたらいいなと思ってます。そこはやっぱりスカパーさんにも継続的に関わっていただきたいし、逆にこちらも有能なクリエイターを発掘して、ゆうばり出身、スカパー出身というような監督を育てて行きたいなと思いますね。そうした段階でまた違う展開になってくるのかなと思います。そもそもこの支援システムも15,6回オフシアターが続いてますんでね、たとえば、山下監督なんかは、別にゆうばりが発見しなくても、絶対どこかの映画祭が発見して大きな監督になってるはずなんですよ。あの時グランプリをとった『どんてん生活』(99)もたしか配給が決まっていたような気がするんですけど(笑)、それでもなかなか見られる機会がないというのは変わらなくて、そういう出口が無い作品を紹介していければいいなと思いますね。

――このゆうばり映画祭には「ファンタスティック」という冠がついてありますけども、澤田さんがとらえる「ファンタスティック」とは、「ファンタスティック映画」の魅力とはどういうものでしょうか?

澤田FD 要はジャンルムービーという括りが一般的なファンタスティックということの定義だと思うんですけど、やっぱり日本の一地方で財政的に厳しい中でやると、ファンタスティック色を若干薄めなければならない、さっきのバランスということですけれども、そうでありながら、自分も求めているし、求められている基本は、「こんな面白いもの見たよ」とか「こんな変なもの見ちゃったよ!」というある種のアメイジングだと僕は思いますけどね。そう考えると広い意味でのファンタスティックって、芸術性だとか文化性だとか考えずに、衝動で作ってるような映画ってあるじゃないですか(笑)。だけどそれがすごいパワーがあるっていう。表現の力強さみたいな。うん、そういうことじゃないかなと僕は思いますねファンタスティック映画というのは。だから、ハリウッドの大作だってファンタスティック映画っていっぱいあるし、自主製作のチープな映画にだってファンタスティックなものがありますしね。そこはもうバジェットの違いではないと思ってます。ただ日本ではお金がないので、創意工夫の中で力強さみたいなものが出てくるということがあったりはしますよね。そこにある種の意思だったり、表現への欲求だったりを見て感動するわけじゃないですか。「バカだねぇー」みたいな(笑)。

――何かすごいのに「出会っちゃった」みたいな感動ってありますよね。

澤田FD 「見ちゃったよー」みたいなね(笑)。「あれ見た?!」というような感動がこの5日間の中であるわけですよね。「『ムカデ人間』見た?!」みたいな(笑)。

――(笑)もっと個人的な映画の趣味についてお話をお伺いしたかったのですが、時間が来てしまいました。最後に、澤田さんがファンタスティック映画と出会った決定的な作品というのを教えてください。

澤田FD 僕の世代的にですね、みんな一緒ですけど、最初はまず東宝の怪獣ですね。その後ブルース・リー、で、スピルバーグ、ルーカス。それから大林宣彦って来るんですよ(笑)。全部ファンタスティックじゃないですか。やっぱり原体験がみんなファンタスティック映画なんですよね。まあそのうち背伸びしてフランス映画を見たりもしたりして、高校生くらいの時にレンタルビデオが出始めて、ソフト化されてればどんな作品でも見れるような環境になってきちゃったんで、ウチの映画祭のある種の全方位的な部分ってこういうとこにあるのかもしれませんね。映画祭ってコントロールできないもんなんですよ。だから、こういう人たちがいれば何か起きるんじゃないかということを撒いておくっていうようなことだと思うんですよね。うまくいく場合もいかない場合もあるんですけどね。

澤田さんの懐の深さがゆうばりの豊かさであることを実感した20分間であった。夕張市の財政破綻から、市民映画祭として再生したゆうばりであるが、その道のりはこれからも前途多難だ。映画愛という気持ちだけで叶えられるほど楽なものではない。しかし、この雪深い谷あいの町には、ポジティブなファンタスティックがある。往年の名作映画の古ぼけた看板が町の至る所に掲げられたファンタスティック、民家の軒下に黄色いハンカチがはためくファンタスティック、シネガーまんというシネマとタイガーを掛け合わせた強引なネーミングで名物肉まんを開発してしまったファンタスティック、どれもこれもゆうばりならではのグルーヴだ。
映画がある限り、映画市民の祝祭は終わらない。

澤田直矢フェスティバル・ディレクター インタビュー
オープニング・パーティ&トークセッションレポートゆうばりチョイス&フォーラム・シアター部門レポート

第20回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 (2/25~3/1) 公式

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2010/03/12/21:24 | BBS | トラックバック (0)
鎌田絢也 ,インタビュー ,映画祭情報
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