話題作チェック

ドクター・フィールグッド
オイル・シティ・コンフィデンシャル

( 2009 / イギリス / ジュリアン・テンプル )
劇場公開が嬉しい音楽ドキュメンタリーの秀作!

わたなべ りんたろう

『ドクター・フィールグッド オイル・シティ・コンフィデンシャル』1今作はジュリアン・テンプル監督作品だが、「NOFUTURE A SEX PISTOLS FILM」、「LONDON CALLING/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー」に続く1970年代イギリス音楽三部作と言われる作品群の最後の作品になる(他にも最近のジュリアン・テンプルの音楽映画には「グラストンベリー」がある)。キャンベイ・アイランド出身のドクター・フィールグッドがソリッドなブリティッシュ・ロックで70年代半ばにローカル・シーンからアルバムチャートに上りつめ、その後に人気が衰えていく様子を描く。お手軽な観光地だったキャンベイ・アイランドが、石油精油所が作られてから、オイル・シティとも呼ばれ、寂れていく様子も描かれるが、さまざまな映画(キャグニーの「白熱」など)や当事の記録映像で当事者の証言を補完するジュリアン・テンプルの手腕が見事である。

メンバー(亡くなっているヴォーカルのリー・ブリローの豊富なアーカイブ映像にも驚かされる)、マネージャー以外にアリソン・モイエ(キャンベイ出身)、ジェイク・リビエラ、ウィル・バーチ、サッグス(マッドネス)などが出演して貴重な発言が多い。例えば、2枚目の「不正療法」が出たときにニューヨークで行われたパーディでは、ジョニー・サンダース、ラモーンズ、ブロンディ、リチャード・ヘルがいる中で「不正療法」が一晩中流されていて、みんな気に入っていたことをミュージシャンのグレム・バークが証言。ギャング・オブ・フォーのアンディ・ギルは「ウィルコはステージで精神を病んだ人間を演じた。自分の人生に対して反乱を起こしてる。悪魔と悪戦苦闘する、この男に対して、人は狂気の淵にいると感じた。壮大な戦いの最中だからだ。不満を抱えて仕事をする人と全く同じことなんだ」と分析してみせるが、ウィルコの回答が「都会の苦悩の表現? そうかもな。でも、見る人がそう感じなくても構わない」なのがイカす(笑)。
他にも地元の精油所抗議集会に参加した若きウィルコ・ジョンソンの発言「火災の危険があるのに精油所の誘致の話をしてる。ぼくたちが裕福じゃないから、この地域に建てるのか? 経済的利益などどうでもいい!」が出てくるが、精油所を原発に置き換えると今の日本の状況と同じだ。

ジョー・ストラマー、ジョン・ライドン、ダイアナ妃(当事はもちろん妃じゃないが)がパブのライブに来ていたこと&ジョー・ストラマーはウィルコに影響されて、同じギターを買った、3人のジョンがいたのでミュージシャンとしての名前をつけたこと、本職は強盗の合間にR&Bを演奏していると思われていた(ルックスが怖いため)、リトル・ウォルターのコピーから始めたらフィールグッド独自の音になっていった、リー・ブリローがバーのダンサーで後に奥さんとなる女性と結婚した経緯などのトリビアもあり。最近、イギリスの雑誌でも特集が組まれていたウィルコ・ジョンソンの天文学好き具合が実際に分かったのは個人的な収穫だった。
『ドクター・フィールグッド オイル・シティ・コンフィデンシャル』2『ドクター・フィールグッド オイル・シティ・コンフィデンシャル』3イギリスでのチャート入りに続き、フランス、ドイツ、スペイン、スイス、北欧諸国でもブレイクしていったが(フランスのオラージュにはプライヴェート機で飛んだ)、リー・ブリローの母によると、全英ナンバーワンになった3枚目(ライブアルバム)の後でリーとウィルコがウィルコの脱退でもめていたとき「米国には死刑制度があるのか?なんてことを気にしてたわ。ウィルコを殺したいと思っていたのよ」と激しい確執を思わせるが、ウィルコ・ジョンソンいわく「なぜだか均衡が壊れてしまった」とウィルコ自身もとても悔いていることが分かる。解散の経緯をウィルコvs.バンドメンバー3人になったときに、3人が「バンドを定義するのはウィルコだけじゃない」と言ったのは状況が厳しかったことがよく分かる。

今作のことを、3/26にソウル・フラワー・ユニオンのライブに行ったときに、中川敬さんに伝えると「始めの3枚を完コピ」したとのことで、映画会社に連絡してサンプル盤を中川敬さんにも送っていただいた。ドクター・フィールグッドといえば、パンク以前にパンク的なバンドだったと言われていて、そのことが今作でよく分かったが、日本ではずっと通向けのバンドのようだったが、ミッシェル・ガン・エレファントが好きで影響を受けたバンドと公言してから、日本での人気も高まったのは嬉しいことだった。
映画でもリー・ブリローが亡くなったことは悲しいが、終わり方がとてもいい。なお、初日はライブで来日中のウィルコ・ジョンソンの舞台挨拶もあり(すぐに売り切れたらしいが)。本国イギリスで公開時から観たかった作品でツイッターなどに今作のことを書いたときも反響があったが、DVDは出ても劇場公開されるとは思わなかったので本当に嬉しい。出来も素晴らしいので是非観てほしい作品だ。

(2011.4.7)

ドクター・フィールグッド オイル・シティ・コンフィデンシャル 2009年 イギリス
監督:ジュリアン・テンプル 出演:リー・ブリロー,ウィルコ・ジョンソン,ジョン・B・スパークス,ジョン・マーティン
現題:Oil City Confidential 提供・宣伝:ポニーキャニオン 配給:フェイス・トゥ・フェイス
2009年/イギリス/カラー/106分/(C)2009 Cadiz Music Ltd
公式

2011年4月9日(土)より、シアターN 渋谷他全国順次公開

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  • 監督:ジュリアン・テンプル
  • 出演:ジム・ジャームッシュ, アンソニー・キーディス, ジョン・キューザック, ジョニー・デップ, スティーヴ・ブシェミ
  • 発売日:2008-03-21

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  • 監督:ジュリアン・テンプル
  • 出演:ジョニー・ロットン, シド・ヴィシャス, グレン・マットロック
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2011/04/08/19:51 | BBS | トラックバック (0)
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