赤い雪 Red Snow
ある雪の日、一人の少年が忽然と姿を消した。
少年を見失った兄・白川一希(永瀬正敏)は、自分のせいで弟を見失ったと思いこみ、心に深い傷を負う。少年誘拐の容疑者と疑われた女の周りでは次々と怪しい殺人事件が起こるが、真実は闇へと落ちていった。30 年後。事件の真相を追う記者・木立省吾(井浦新)が容疑者と疑われた女の一人娘・江藤小百合(菜 葉 菜)を見つけ出したことにより、「被害者の兄」と「容疑者の娘」の運命の歯車が大きく動き始める。一つの事件で深い傷を負った人間の、曖昧な記憶を辿る葛藤の中に垣間見えた真実は、それぞれの運命を予想もしない結末へと導いていく。それぞれの記憶が氷解した先に見えたものは何か。全てを信じてはいけない。
2019年2月1日(火)テアトル新宿ほか全国順次公開
“人の記憶はこんなにも曖昧で、残酷なものなのか”
人は、強烈な体験の呵責、苦痛により、その間の記憶をすべて喪失することがある。犯罪者がやっていないと本気で思い込むことで、本当の記憶そのものを失ってしまう事もあると言う。また、一種の催眠作用で大昔の忘れていた事があるキーワードで呼び覚まされたり、あるいはそのキーワードによって現在の記憶が空白になる事もある。人間を過去から未来へ繋ぐものが記憶だとしたら、その記憶とは実に曖昧であり、人生もまた曖昧といえる。
この作品は、雪の降る過去に同じ場所で同じものを目撃した人間達が、再び出会う事からはじまります。それぞれの「記憶」が氷解した先に見えるものとは何か?
私たちは、見たいものだけを見、記憶したいものだけを記憶し、時に黒を白に塗り替えている。曖昧な記憶の裏側に、現代日本の抱える問題が見え隠れする壮大な人間ドラマ。記憶の拠り所だったはずの証言を、 容疑者の完全黙秘で失った「被害者の兄」と「容疑者の娘」の物語。
人間の「記憶」というものの曖昧さ、そしてそんな「記憶」によってしか生きていることを実感できない人間の儚さ・残酷さを、日本の美しい原風景・雪景色に重ね合わせて、観る者の心に突き刺さる映画となっている。
キャストコメント
主演:白川一希(しらかわかずき)役/永瀬正敏
初めて脚本を読ませて頂いた時、読み進めながらドンドン作品の世界観に引き込まれていきました。そして最終ページを読み終わった直後、この物語の中に自分の身を置いてみたいと願いました。『赤い雪』この深いタイトルに込められた世界を楽しんで頂ければと思います。
主演:江藤早百合(えとうさゆり)役/菜 葉 菜
この『赤い雪』に出逢えた幸運を携わった全ての方々に感謝します。役者としてデビュー間もない頃「YUMENO」と言う映画で主演をさせて頂きました。マイナス30度にもなった極寒の北海道での撮影でしたが、その時はただその中に存在していただけだったかなと今では思います。
それから十余年が経過。雪によほど縁があるらしく今回もまた豪雪の山形へと誘われました。
監督とは何度もデスカッションし思いを共有しあえたつもりでしたが、撮影に入ると全てぶっ飛んでしまうほどとてつもない戦いが待っていました。私が思う早百合とそうではない早百合が脳裏を行き交いもがき苦しみもしました。
それでもこの映画に賭ける強い思いが心の中で散らす火花を打ち消し愛すべき早百合と一つになって飛び立てたと思います。全編が絵画のように美しく重い作品に仕上がっています。
『赤い雪』は私にとって抱きしめたいほど愛おしい作品になりました。早百合は劇場で皆さんとお会いできる日を今から楽しみにしています。
木立省吾(こだち しょうご)役/井浦新
甲斐監督の現場は優しい空気で包み込まれている。山形と新潟の極寒の地を巡り、旅をしながら撮影し、凍てつく寒さの中、監督の柔らかい笑い声に、みんな暖をとるように集まってきていました。
でも、ただ優しく暖かいから集まってくるのではありません。監督の内側にある衝動の刃は硬質で、斬れ味は日本刀の様に鋭く、地下世界から天空を自由に往き来する想像力には、人を魅了する毒がしっかりある。
その蜜の薫りを嗅ぎつけたスタッフ・キャストが集結してつくられた【赤い雪 Red Snow】尊敬する共演者の方々と、毒を味わいながら、共振し合いながら、甲斐ワールドを彷徨い、記憶を辿る旅をしました。
観て下さる方々の心に、深々と赤い雪が降り積もり、世界観に浸って楽しんで頂けますことを願っております。
江藤早苗(えとう さなえ)役/夏川結衣
雪の中の少年の後ろを自分もおいかけているような、自分もこの雪の中に立ちすくんでいるような、そんな不思議な感覚に陥りました。
掴んでも掴みきれないこの感覚が、人の記憶という不確かなものと同化しているのかもしれません。
宅間隆(たくま たかし)役/佐藤浩市
真実だけが残るのか、残ったものが真実なのか?
霧散していった事柄の中に真実は隠れていなかったのか。
事象は記憶の中で、少しづつ印象を変えて人の心の中に根ざします。
そんな心の歪さを陰鬱に描く赤い雪で、僕の演った宅間は他人の痛みには一切心を揺さぶられる事なく、己が欲望の為だけに動く怪物です。
しかしそんな怪物が現実社会では平然と隣に座っているかもしれない、その今をやらせて頂きました。
吉澤健,坂本長利,眞島秀和,紺野千春,イモトアヤコ,好井まさお
脚本・監督: 甲斐さやか
プロデューサー:浅野博貴,上野弘之,星野秀樹,菅谷英智 音楽: YAS-KAZ 撮影:高木風太
照明:藤井 勇,宮永アグル 録音:小川 武 美術:井上心平 編集:木村悦子 VFX:菅原悦史
スタイリスト:兼子潤子 特殊メイク:KENJI 装飾:早坂英明 助監督:山下 司 制作担当:柿本浩樹
演技事務:荒川栄二 プロデューサー補:坪田駿作 ラインプロデューサー:坪井 力
制作: T-ARTIST/制作協力: ROBOT/制作プロダクション:トライアムズ
2019 年/日本/カラー/106 分/DCP5.1ch/アメリカンビスタ
配給:アークエンタテインメント © 2019「赤い雪」製作委員会