次回作でついに故郷タイを離れ、南米コロンビアで撮影するタイの天才監督 アピチャッポン・ウィーラセタクンこれまでの代表作を特集上映

個展「亡霊たち」、シアターピース「フィーバー・ルーム」を経て、
次の長編映画が待ち遠しいアピチャッポン

『世紀の光』© 2006 Kick the Machine Films 2010 年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた『ブンミおじさんの森』が劇場公開されて以来、日本でも 多くのファンを獲得して来たタイ出身の映画監督・美術作家アピチャッポン・ウィーラセタクン。 2016年には東京都写真美術館での個展「亡霊たち」 が開催され、 2017 年には TPAM で「フィーバー・ルーム」が上演されて、 アート界でも大きな話題と多数のファンを集めたことは記憶に新しい。

タイを離れ、南米コロンビアで
ティルダ・スウィントン主演の次回作撮影が決定

『ブンミおじさんの森』© Kick the Machine Films そんなアピチャッポンは 2015 年のカンヌ国際映画祭に出品した集大成的な傑作『光りの墓』を最後に、長編映画を発表していないが、現在は次回作の準備中であることが知られ、しかもその作品で、初めてタイを離れて南米コロンビアで撮影すること、昔から親交があり、ビデオインスタレーション作品に出演したこともある女優ティルダ・スウィントンが主演することが話題を呼んでいる。
これまで故郷であるタイ東北部の伝説や民話、個人の記憶、土地の記憶から数々の映像作品を制作し続けてきたアピチャッポンの新たなステージが始まるこの機会に、もう一度、彼の長編映画の代表作3作をスクリーンで見よう 、 というのが今回の特集上映「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ 2018＜船出の前に?もう一度アピチャッポン＞」だ。

何度見ても発見が生まれ変わり続ける傑作群を特別な短編や動画とともに

『光りの墓』© Kick The Machine Films / Illuminations Films (Past Lives) / Anna Sanders Films / Geisendorfer Film-und Fernsehproduktion /Match Factory Productions / Astro Shaw (2015)今回上映されるのは『世紀の光』（2006）『ブンミおじさんの森』（2010）『光りの墓』（2015）の3作。ユニークな企画として『光りの墓』上映前に短編『国歌』が上映されることがある。タイの映画館では、映画本編を上映する前に国歌が流れ、観客が起立する慣習があるが、それをアピチャッポンらしいやり方で映像にした短編作品が『国歌』だ。そして長編『光りの墓』の中には、さらに独特な描写で国歌が流れる映画館のシーンを描いている。アピチャッポンのイメージ内の映画館にいるような感覚で、ぜひ『国歌』と『光りの墓』を見て欲しい。また『世紀の光』と『光りの墓』 (一部の回)上映前には、 アピチャッポンから日本のファンに贈られたメッセージ動画を紹介。 シアター・イメージフォーラムでしか上映できない動画なので、これも貴重だ。
アピチャッポンの船出の前に、何度見ても発見が生まれ変わり続ける、その傑作群をスクリーンで堪能していただきたい。

特別上映：国歌 The Anthem｜ 2006｜ 5分｜ DCP