第74回ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ受賞
イスラエル・アカデミー賞2017 最多8部門受賞
運命は踊る
ハエルとダフナ夫妻のもとに、軍の役人が、息子ヨナタンの戦死を知らせるためにやって来る。ショックのあまり気を失うダフナ。ミハエルは平静を装うも、役人の対応にいらだちをおぼえる。そんな中、戦死の報が誤りだったと分かる。安堵するダフナとは対照的に、ミハエルは怒りをぶちまけ、息子を呼び戻すよう要求する。ラクダが通る検問所。ヨナタンは戦場でありながらどこか間延びした時間を過ごしている。ある日、若者たちが乗った車がやって来る。いつもの簡単な取り調べのはずが……。遠く離れたふたつの場所で、父、母、息子――3人の運命は交錯し、すれ違う。まるでフォックストロットのステップのように。
2018年9月29日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
人は、運命を避けようとしてとった道で、
しばしば運命に出会う。――ラ・フォンテーヌ
監督は、デビュー作『レバノン』(金獅子賞)に続き、本作で第74回ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリを受賞したサミュエル・マオズ。『運命は踊る』では、自らの実体験をベースに、運命の不条理さ、人生のやるせなさを緻密に描きだす。残酷な誤報から浮かび上がる、それぞれの愛、傷、罪、過去、記憶――。
まるでギリシャ悲劇を思わせる緻密で独創的なストーリーが、スタイリッシュな映像、圧倒的で流れるようなカメラワークと相まって、ミステリアスに展開する。
「ホロコースト」「終わらない戦争」「人々の心に刻まれた傷」――トラウマを抱えた国イスラエル。サミュエル・マオズ監督は、現状がどうであれ、いまだ癒えないトラウマは世代から世代へと受け継がれて、我々は常に実存的な脅威と戦っていると思いこんでいるのだと語る。「この世代ではトラウマのループを抜けて大きくステップを踏み出すんだと思っても、結局元のところに戻ってきてしまう。原題となったフォックストロットのステップはそんな我々の社会の象徴です」
また、個人レベルでもトラウマは受け継がれているのだとサミュエル・マオズ監督は語る。「私もホロコーストを体験した母に育てられたので、『ホロコーストの体験に比べたらなんてことはない。文句を言ってはいけない』と抑圧され、辛さを封印して生きてきました」抑圧されていた感情を爆発させるように突如マンボを踊りだす兵士のように、本作ではフォックストロットから抜けて大きくステップを踏み出そうと登場人物らはある行動をとるが、果たしてこの不条理なトラウマの無限ループから抜け出すことはできるのか。それとも……。
かすかな愛の光が彼らを照らし出す。
出演:リオール・アシュケナージー、サラ・アドラー(『アワーミュージック』)、ヨナタン・シライ
2017年/イスラエル=ドイツ=フランス=スイス/113分/カラー/シネスコ
後援:イスラエル大使館 配給:ビターズ・エンド
© Pola Pandora - Spiro Films - A.S.A.P. Films - Knm - Arte France Cinéma – 2017