働きづめで教育を受けられなかった人、
海外在住で日本語が母語でない人、学校に馴染めなかった不登校生徒など、
本作は夜間中学で学ぶ人々と教える教師たちの姿を丁寧に追いかけ、
夜間中学の"今の姿"を様々な角度から浮き彫りにしている。
実際の授業風景を映し出すカメラは、笑ったり照れ臭そうに発言したり、
時には自身の人生経験を吐露する生徒たちの姿を静かにとらえている。
撮影前に1年近く教室に同席して生徒と先生双方と交流を重ねただけあって、
ありのままの自然な映像となっているのが実に魅力的だ。
昼間学校に見られる効率重視の詰め込み式とは根本的に異なるその授業風景からは、
学ぶことの楽しさや喜びがひしひしと伝わってくる。
生徒たちは様々な理由で夜間中学の門を叩くが、
本作はその経緯と彼らの学校に寄せる思いを丁寧に掬い取っている。その言葉からは、
夜間中学で学んだことが彼らの血となり肉となって生きる力、
その後の人生の土台となっていることがはっきりと理解できるだろう。
学ぶことの本当の意義や他者との連帯感を育む場としての学校の在り方をストレートに訴えかけてくる本作からは、
現在の日本の教育が見失った「学校のあるべき姿」が確かに見てとれる。教育関係者はもちろん、
多くの子供たちに見てもらいたい作品だ。
文:仙道勇人
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