ロフト.
特別寄稿:高木登(脚本家)
よくできた映画である。目ざといハリウッドはすでにリメイク権を手にしているのではないか。中心となる五人の男たち、取り巻く女たち、端役の刑事たちにいたるまで、役者がモチベーションを刺激されるような役ばかりなので、けっこうなバリューのあるキャストが集結しそうな気がする。
この種の作品が紹介に困るのは、ほとんどなにも言えないことである。公式サイトや予告で触れられている程度の内容さえ、本来は知らずに鑑賞するのが正しい。したがって、ここではいっさいストーリーには触れぬ。
まごうかたなき本格ミステリだが、本格物の弱点として、意外性のために人間性の自然が犠牲になることがある。本作でもところどころほころびが見られるが、許容範囲のうちである。この点が上手くいっているのは、中心に「性」の問題が横たわっているからで、理不尽も不自然も異常性も、「性」のフィルターを通せば違和感が半減する。これは見事である。加えて滑稽で哀しく、二時間弱の悲劇は弛むことなく終局に向けて展開する。
ただし見終えたあとにはなにも残らない。楽しむだけなら充分だが、それ以上になにかできそうな気がするから物足りない。もとよりなにかを残すつもりのない作品なのかもしれないが、どこか惜しい。
特別寄稿:高木登(脚本家) / ブログ
(2009.11.23)
ロフト. 2008年 ベルギー
監督:エリク・ヴァン・ローイ 脚本:バルト・デ・パウ
出演:ケーン・デ・ボーウ(クリス・ファン・オートリブ),フィリップ・ペーテルス(ビンセント・スティーブンス),
マティアス・スクナールツ(フィリップ・ウィレムス),ブルーノ・ファンデン・ブロッケ(ルク・セイナーヴェ),
ケーン・デ・グラーヴェ(マルニクス・ローレイズ),ヴェルル・バーテンス(アン・マライ)
配給:フリーマン・オフィス 提供:角川映画 (c) 2008 WOESTIJNVIS NV
11月20日(金)よりシネマ・アンジェリカほか全国順次ロードショー!
- 出演: ヤン・デクレール, ケーン・デ・ボーウ, ウェルナー・デスメット, ヒルゲ・ベーデメーケル, ヘート・ヴァン・ランベルベルグ
- 発売日: 2008-09-05
- おすすめ度:
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