フランス映画祭2017 Q&Aレポート
映画『エル ELLE』
ポール・ヴァーホーヴェン&イザベル・ユペール【1/2】
2017年8月25日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
6月23日、ポール・ヴァーホーヴェン監督最新作『エル ELLE』が東京・有楽町朝日ホールで開催中のフランス映画祭2017にて上映され、主演を務めたイザベル・ユペールとともにQ&Aに登壇した。(取材・構成・写真:常川拓也)
STORY 新鋭ゲーム会社の社長を務めるミシェルは、一人暮らしの瀟洒な自宅で覆面の男に襲われる。その後も、送り主不明の嫌がらせのメールが届き、誰かが留守中に侵入した形跡が残される。自分の生活リズムを把握しているかのような犯行に、周囲を怪しむミシェル。父親にまつわる過去の衝撃的な事件から、警察に関わりたくない彼女は、自ら犯人を探し始める。だが、次第に明かされていくのは、事件の真相よりも恐ろしいミシェルの本性だった──。
1938年、オランダ、アムステルダム生まれ。SFアクション大作『ロボコップ』(87)が大ヒットを記録し、一躍その名を知られる。続いて、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFエンターテインメント『トータルリコール』(90)が、まさに見たこともない映像でスーパーヒットを成し遂げると共に、アカデミー賞視覚効果賞を受賞する。1992年には、エロティック・サスペンス『氷の微笑』で一大ブームを巻き起こし、主演のシャロン・ストーンを大スターに押し上げる。その後も“過激”“衝撃”をキーワードに、常に新たなジャンル、映像、物語に挑戦、世界を挑発し続けている。その他の作品は『スターシップ・トゥルーパーズ』(97)、『インビジブル』(00)など。 オランダ出身のヴァーホーヴェンによる初のフランス映画である本作は、ユペールが第89回アカデミー賞主演女優賞にノミネートを果たした挑発的な話題作。自宅で覆面の男に強姦されたゲーム会社のCEOミシェルは、自ら犯人の正体をあぶり出そうと行動を起こしていくが、事件の真相に迫るにつれ、彼女の隠されていた本性が次第にあらわになっていく様を描く。レイプ・リベンジ・スリラーでありながら、ブラック・コメディの面も併せ持つヴァーホーヴェン流の異色のテイストに仕上げられている。
ヴァーホーヴェンが「今回でおそらく5回目の来日になりますが、『エル』は中でも特別な作品です。なぜかといえば、隣にいらっしゃる方のおかげです」とユペールを紹介すれば、2年連続の同映画祭での来日となる彼女は「再び日本に来られたこと、そして監督とこの場にいられることを大変嬉しく思っています」と挨拶。
主人公ミシェルは性的暴行の被害に遭いながらも典型的な被害者のようには一切振る舞うことはない。彼女は、とある過去の事件から警察にも頼ることを拒否し、自ら犯人を積極的に突き止めようとしていくのである。一筋縄ではいかない大胆不敵なミシェルのパーソナリティについて観客から尋ねられたユペールは、「彼女は自分自身を滅ぼしてしまう部分があるかもしれませんが、この経験を通して自分のことをある種再構築するのだと私は考えています」と説明。「彼女が取っていく行動に対して、もしかしたら過去に原因があるのかもしれない、あるいは父親の存在がその説明になるのかもしれませんが、映画ではそのことが必ずしも描かれているわけではなく、あくまでもひとつの情報として提示されています。なので観客の方々にそれは好きに解釈していただきたいと思っています。また、ミシェルはこの悲劇的な出来事をポジティヴとは言わないまでも、何か自分の頭の中で自分の子ども時代や自分が誰であるかということと関連付けていきます。もしかしたら実際に暴力と直面したことで、彼女は男性的な暴力というものがどこから来るのか知りたいと感じるようになったのかもしれません。ミシェルは復讐のプランを持っていたのであり、これらすべては彼女にとって、実存主義的なひとつの体験だったのだと私は考えています」と独自の考察を述べた。
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エル ELLE (131分/フランス/配給:ギャガ) 公式サイト
監督:ポール・ヴァーホーヴェン 原作:フィリップ・ディジャン
出演:イザベル・ユペール,ローラン・ラフィット,アンヌ・コンシニ,シャルル・ベルリング,ヴィルジニー・エフィラ,ジョナ・ブロケ
©2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION – FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP
2017年8月25日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
- 映画原作
- (著):フィリップ・ディジャン
- 発売日:2017/7/6
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