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― 第66 回ベルリン国際映画祭 銀熊(監督)賞受賞 ―
第82 回ニューヨーク映画批評家協会賞 主演女優賞受賞
第42 回ロサンゼルス映画批評家協会賞 主演女優賞受賞
第37 回ボストン映画批評家協会賞 主演女優賞受賞

未来よ こんにちは

パリの高校で哲学を教えているナタリーは、教師の夫と独立している二人の子供がいる。年老いた母親の面倒をみながらも充実していた日々。
ところがバカンスシーズンを前にして突然、夫から離婚を告げられ、母は他界、仕事も時代の波に乗りきれずと、気づけばおひとり様となっていたナタリー。果たして彼女に未来は微笑むのだろうか――。

トークイベント開催
3/26(日) Bunkamura ル・シネマ最終回上映前
ゲスト:上野千鶴子さん(社会学者)× 湯山玲子さん(著述家・プロデューサー)

公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2017年3月25日(土)より Bunkamura ル・シネマ、
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次

INTRODUCTION

エリック・ロメールの後継者、ミア・ハンセン=ラブ
× フランスの至宝、イザベル・ユペール

『未来よ こんにちは』第 66 回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、大きな話題となった『未来よ こんにちは』。数々の受賞歴を誇る、フランスを代表する女優イザベル・ユペールが主役を演じ、彼女の主演女優賞が確実視されていたが、栄誉に浴したのはミア・ハンセン=ラブ、堂々の銀熊(監督)賞に輝いた。
弱冠 35 歳にしてエリック・ロメールの後継者と称されてきた、才能あふれるハンセン=ラブの確かな演出力が評価を受けたのである。第 62 回カンヌ国際映画祭ある視点部門で審査員特別賞を受賞した『あの夏の子供たち』、『グッバイ・ファーストラブ』『EDEN/エデン』など自身と近い年齢の人物を登場させた映画を作り続けてきたハンセン=ラブ。今回、そんな彼女が主役に据えたのは 50 代後半の女性。人生が確立した女性を通して、孤独や時の流れをしなやかに受け入れていく聡明な生き方を提示し、愛に満ちた人間ドラマを生みだした。歳を重ねるにつれて、内面からの美しい輝きが増しているユペールを主役に想定して脚本を書いたというだけあってユペールの魅力が最大限に引き出されている。

歳を重ね、潔く人生と向き合う主人公からから学ぶ、反アンチエイジングな生き方

夫との離婚、介護していた母親の死、仕事の停滞、離れていった教え子……。人生半ばを過ぎた主人公ナタリーは、次々と襲い来る、自身を「孤独」へと追いやる想定外の出来事に、怒り、うろたえ、涙する。だが彼女は、立ち止まらない。教師という仕事を愛し、日々の生活をこなしていく。それは「孤独」には「何ものにも縛られない」という自由の側面があり、老いゆくことは、経験が生む豊穣を受け取ることでもあることを知っているからだ。どれだけ生きていても明日、何が起きるかなど予測はできない。そして、たとえ何が起きても、「時」は留まることなく確実に続いていく。同時に「時」は、老いていくことの不安や孤独に対する怖れを潜ませる。
「孤独」や「時」は残酷であるけれど、それを潔く受け入れ、味方にしていく、ナタリーのしなやかな強さは魅力的だ。過ぎ行く時間に逆らわないことこそ“アンチエイジング”の呪縛から解き放された生き方ともいえる。そして未来を信じる柔らかな心。そんなヒロインの姿は、今を生きる私たちのエイジングへの“怖れ”を吹き飛ばしてくれるに違いない。

『未来よ こんにちは』場面1 『未来よ こんにちは』場面2

美しい自然と音楽、未来を信じる幸福

ブルターニュの波の音や木々を揺らす風の音、パリ市内の公園の緑の輝き、フレンチ・アルプス近くのヴェルコール山の渓谷の水しぶき……。ナタリーを取り巻く身近な自然のなんと美しいことか。その中に身を置いて日々を生きる主人公たちの喜びや悲しみも、ひいては私たちの人生そのものも、大いなる自然の一部分であるのだ、という大らかな感情が湧いてくるはずだ。
そしてさらには、悲しみという感情の中にもユーモアが存在することを本作は教えてくれる。まるで様々な色が混在して成立する点描画のように人生が描かれるのだ。だからこそ、観る者は、どんな“絵”を映画に感じ、どんな未来をそこに見たのか、自分の言葉で語りたい、という強い気持ちに駆られるに違いない。
また、映像の美しさと共に印象に残るのは、ナタリーの人生の断片を物語る音楽だ。水面を進む小舟に寄せて時の流れを歌う、シューベルトの「水の上で歌う」。あるいは、映画『ゴースト/ニューヨークの幻』でおなじみの、「私を待っていて」と歌う「アンチェインド・メロディ」。美しいハーモニーが、未来を信じることの幸福感で観る者を優しく包む。
共演は、良き父で真面目な夫で厳格な哲学教師、しかし結婚 25 年目にして女性を作って出ていくというハインツに、『偉大なるマルグリット』でセザール賞助演男優賞候補となったアンドレ・マルコン。ナタリーの教師としての仕事の“成果”であり、ナタリーが潔く人生に向き合うきっかけともなる、寵愛する教え子・ファビアンを、『 EDEN/エデン』のロマン・コリンカ。認知症気味の母に『夏時間の庭』のエディット・スコブ。“エッジのきいた”母娘の会話、まさかの行動に出た夫との訣別、教え子に垣間見せる女心など、主人公ナタリーの心模様を彩る布陣も秀逸である

『未来よ こんにちは』場面3 『未来よ こんにちは』場面4
CREDIT
監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ
共同脚本:サラ・ル・ピカール、ソラル・フォルト
撮影:ドニ・ルノワール 美術:アンナ・ファルゲール 編集:マリオン・モニエ
衣装:ラシェール・ラウー 製作:シャルル・ジリベール
出演:イザベル・ユペール、アンドレ・マルコン、ロマン・コリンカ、エディット・スコブ
2016年/フランス・ドイツ/102分/カラー/1:1.85/5.1 原題:L’AVENIR/英題:Things to come
協力:フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、ユニフランス
配給:クレストインターナショナル
© 2016 CG Cinéma · Arte France Cinéma · DetailFilm · Rhône-Alpes Cinéma

公式サイト 公式twitter 公式Facebook

2017年3月25日(土)より Bunkamura ル・シネマ、
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次

グッバイ・ファーストラブ Blu-ray グッバイ・ファーストラブ Blu-ray
  • 監督:ミア・ハンセン=ラブ
  • 出演:ローラ・クレトン, セバスティアン・ウルゼンドフスキー, マーニュ・ハーバード・ブレック
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EDEN/エデン [Blu-ray] EDEN/エデン [Blu-ray]
  • 監督:ミア・ハンセン=ラヴ
  • 出演:フェリックス・ド・ジヴリ, ポーリーヌ・エチエンヌ, ヴァンサン・マケーニュ, グレタ・カーウィグ
  • 発売日:2016/07/06
  • おすすめ度:おすすめ度4.0
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2017/03/17/19:39 | トラックバック (0)
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