雨宮 慶太
(映画監督・キャラクターデザイナー)
映画「牙狼<GARO>
~RED REQUIEM~」について
2010年10月30日(土)より、
新宿バルト9ほかにて全国3Dロードショー!
雨宮 慶太 (映画監督・キャラクターデザイナー)
1959年8月24日生まれ、千葉県出身。有限会社CROWD代表。1988年に『未来忍者 慶雲機忍外伝』で監督デビューを果たしたのち、『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)でTV作品初演出にして、パイロット版の監督に抜擢される。近年では、『鉄甲機ミカヅキ』(2000)や『魔法少女隊アルス』(2004)などのように自ら原作を手掛けることも多い。また、キャラクターデザイナーとしての顔も持っており、自作を含めた様々な作品のデザインを手掛けている。
●監督・雨宮慶太
――『ゼイラム』という例外はありますが、雨宮監督が自作の続編を手掛けることは、非常に稀ですよね。3Dに対応した新作映画を作るにあたって、『牙狼<GARO>』の劇場版ではなく、まったく新しいキャラクターと世界観を創造するという方向性の企画案はあったのでしょうか?
雨宮 いや、「『牙狼<GARO>』の映画を撮ろう」っていう話が決まってから、「3D映画にしてください」って言われたんだよ。制作途中でデジタル3Dにすることになったから、その時点でお話も全然違うものに変えちゃったんだけど、最初から3D映画をやるっていうことだったら、また違うキャラクターを使ったお話っていう発想も当然あったろうな。それに映画化の話が出た当初は、『牙狼<GARO>』は一度完結した作品であって、苦しい戦いを終えたヒーローに再び死闘を繰り広げさせるっていうのは酷だなぁ、なんて思うところもあったんだけど、それ以上に「『牙狼<GARO>』を3Dで観たい」っていう欲求のほうが強かったんだ。要するに自分の興味。立体で、冴島鋼牙が戦っているところが見たいっていうところから入っていったんで、すごく客目線の作り方だったのかもしれないね。ただ、『牙狼<GARO>』だけが特別っていうわけじゃないよ。『未来忍者』にしろ、『ゼイラム』にしろ、チャンスがないだけで続きを撮ってみたいとは思ってる。『牙狼<GARO>』には、そのチャンスがあった。その差だけだよね。で、そういうチャンスに恵まれた作品があったならば、それを撮るのは自分の使命なんじゃないかな。第三者に委ねて、“『牙狼<GARO>』っぽいもの”になることを考えたら、自分で撮って『牙狼<GARO>』にしたほうが、絶対にいいワケで。新しいものに対する興味もあるけど、それだって巧いこと盛り込んでしまえばいい。今回だったら、ヒロインの烈花がそうだね。テレビシリーズの頃から、「強くてカッコいい少女のキャラクターをやりたいなぁ」っていう想いが、ぼんやりとあったんだよ。テレビシリーズにも邪美っていうキャラクターが出てきたけど、あれは少女というよりも大人の女性で。そういうコンテンツを新しく考えようかと思ったりもしたんだけど、今回の映画に出すことにした。烈花が、ちゃんとスクリーンで魅力を開花させてくれれば、もうそこで自分の(新しいものを)作りたいっていう欲求は満たされるから。今はそういう感じだね。
――先ほど、「『牙狼<GARO>』を3Dで観たい」というお話がありましたけど、一方で3Dとアクション映画は必ずしも相性のいいものではないですよね。その辺りで苦労された点や気をつけられたことはありましたか?
雨宮 基本的に相性は悪いんだけど、バシッとハマるとよくなるんだよ。確かに3Dの場合、距離や空間の誤魔化しが効かないし、何より細かいカット割りをするのが難しいんだよね。そうなると、1カット内の情報量を増やさなきゃいけないんだけど、そうすることで逆に本人がやってるよさが出てきたりもするんで、きちんとそこを計算してやればいい。もちろん、それをやるためには長回しができる環境……たとえば左右にカメラを振ってもちゃんとライティングされてるとか、奥行きがある空間とか、そういうロケーション選びが必要なんだけどね。画に合った環境で撮らないと、絶対にそうはならない。
――『アバター』の世界的メガヒット以降、次々と3D映画が公開されていますが、現実には玉石混合というか、上手に3Dを扱えている作品は少ないように感じられます。雨宮監督の目から見て、「これはいいな」と思えた3D作品はありますでしょうか?
雨宮 『トイ・ストーリー3』とか『ヒックとドラゴン』とか、気になっていて観てみたい作品はあるんだけど、『牙狼<GARO>』が終わってからにしようかと思ってるんだ。今観て、「あっ、こういう風にしておけばよかったな」なんて反省点が浮かび上がってきたところで、もう直せるわけじゃないしね。そうなると、純粋に映画として楽しめないから、どこかの機会で観られるといいなぁ。『牙狼<GARO>』を作る前に観たものだと、『クリスマス・キャロル』がよかったね。光の粉みたいなものが、空中から地面に落ちて跳ねるところの演出は、鍔迫り合いの火花なんかの参考にしたりもしたよ。ちゃんと空間に光の粉があって、地面に接地して落ちてるっていうのかな。一種のレイヤー感みたいなものがあった。そういうエフェクトって、意外と地面にめり込んじゃってたりするのが多いんだけど、そうなってないのがスゴいと思ったよ。
――最後に、主人公の鋼牙についてうかがいたいのですが、あの何処からともなくやってきて、何処へともなく去っていくヒーロー像って、それこそ監督デビュー作の『未来忍者』の主人公・白怒火から一貫したスタイルですよね。なにかルーツはあるんでしょうか?
雨宮 ルーツか……。でも、どこからというよりは、単純に発想のバリエーションに乏しいというか、ああいうのがカッコいいって変わらず思ってるってだけかなぁ。やっぱりベラベラ喋って何もしないヤツよりも、寡黙でも絶対にやることはやる!っていうヤツのほうがカッコいいよね。映画の作り方も一緒なんだよ。「不可抗力でこうなっちゃった」っていうのは、誰にでも絶対にあることなんだ。たとえば、「言い訳してもいいよ」なんて言ったら、どの監督だって2時間くらい話すと思うんだけど(笑)、それでもできあがった作品がすべてなんだよね。きちんと燃焼し切っていれば、「ああいうふうにすればよかったな」っていうカットが多少あったとしても、あまり愚痴は言わなくなる。そういう映画の作り方と、自分の描いてきた主人公は同じ。手抜きをせずに戦ってるよね、冴島鋼牙はね。それは『ゼイラム』のイリアもそうだし、白怒火も、『ミカヅキ』の風雄くんもそう。彼らは、いつだって全力で戦ってるハズなんだ。まぁ、それが空回りすることもあるんだけど、それはそれで。それが人生だよね。やっぱり売れるときと売れないときがある。でも、常にやってることは変わってないよ。フィルムの解像度とか、絵でやってた合成がCGになって、カメラが動くようになったとか、そういう技術的なところは変わったけど、そのくらいしか変化はない。『未来忍者』と『牙狼<GARO>』で、魂が変わったかというと、そこはまったく変わってないつもりだよ。ただ、魂は変わってないけど、俺も50歳を過ぎたのね。「いい歳して頑張って作った作品なんで、是非とも劇場で観てね」くらいは言いたいな(笑)。あと、立体で観てくれないと悲しい。で、気に入ったシーンがあれば、何回も劇場で観てもらえると、すごくうれしいです。どうぞよろしく。
▶原作者・雨宮慶太 ▶デザイナー・雨宮慶太 ▶監督・雨宮慶太
(2010年8月20日 アキバシアターにて) 取材:ガイガン山崎・かとうあきら
- 原作・総監督:雨宮慶太
- 出演:小西大樹(現:小西遼生), 藤田 玲, 肘井美佳, 螢 雪次朗
- 発売日:2010-10-27
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(著):小林 雄次, 雨宮 慶太 発売日:2010-10-30
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主なキャスト / スタッフ
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