『牙狼<GARO>~RED REQUIEM~』
完成記者会見/全発言記録2
【STORY】太古より人間の邪心に憑依し、その生命を喰らい続ける魔獣ホラー。
しかし闇に忍び、魔獣を狩る使命を帯びた者達がいた。それが魔戒騎士、魔戒法師である。
ある日、最凶の魔獣・使徒ホラ-7体が復活、人間界へ降臨した。
魔戒騎士を統括する番犬所から指令を受けた冴島鋼牙は、管轄を越え“使徒ホラー”殲滅の旅に出る事となった。数日後、ホラーの気配を追って港町に辿り着いた鋼牙は、そこを管轄する魔戒法師のアカザ、その弟子のシグト、そして烈花と出会う。強大な敵に対し4人の協力が必至と思われたが、何故か烈花は「そのホラーは俺が倒す」と言い残し立ち去ってしまう……。
――原さんに関しては、クライマックスでボディペインティングとか特殊メイクとか多くなりますし、同時に殆どグリーンバックの中で演じられたということでご苦労があったと思うのですが?
原紗央莉 私は3Dの撮影をするのも『牙狼』が初めてだったんです。と言うか、3Dの作品を最初から最後まで通して観るのも初めてで……もう『3Dヴァージン』でしたね(笑)。3Dの撮影で、しかもCGの世界なので、ほぼ撮影は一人だったんです。もちろん沢山のスタッフの方や監督は一緒にいていただけるのですけれど、戦わなきゃいけない所で動いたりとかする時に、相手のことを想像しながら演じなければならなかったりすることがとても大変だったなと思います。
――実際に完成するまで、雰囲気というのは想像できなかったんですか?
原紗央莉 はい、台本を読んでも難しい言葉が沢山書かれていたということもあるのですが、特撮作品を余り観たことがなかったので、(完成した)映画を観て凄い驚きました。「私はこんなに嫌われてたの……」って(笑)。でも、こんなに重要な嫌われ役をしていたんだなという責任感も覚えましたし、感動しました。
雨宮監督 僕のテーマで、女性のクリーチャーで美しくて凶悪なものをずっとチャレンジしているのですが、今回はかなりイメージに近いというか、本当にイラストに近い感じですね。ずっと特殊メイクをやってるチームは一緒なんですけど、彼らも僕が描くデザインでは原さんが一番似てるって言ってますね。
――そうしたシーンを実際に作られたのが迫田さんです。全部CGで3Dを作るというのは実はそんなに難しくないわけですけども、映像の中に少しでも実写の要素が入ってくるともの凄く大変になりますよね。そういった実作業での苦労話は何かありますか?
迫田憲二 フルCGだとCGの世界感だけで構築してしまえば、立体になっても作り方はそこまで苦労しないのですが、そこに一つ実写が入ることで、その実写の撮られた環境などの実写ベースでCGの環境を全部作り上げていかなければいけないわけです。なおかつ3Dになると、立体で観た時に、実際に実写の素材がちゃんとした空間の位置で立体的に見えるかどうかなど、そういう所を気をつけないとなかなか成立しにくい形になります。目合わせでちょっとこの辺かなとか、立体でない普通の作品だとそういうことが出来るんですけど、やはりそういう所がもの凄く一つ一つカットごとに時間がかかって……気をつけて丁寧に作っていったことですね。
――実際3Dを本格的なドラマでやられて、映画の出来上がりについてはどのように感じられましたか?
雨宮監督 まだそんなに客観的に見られないのですが、やれるだけのことは全部やれたかなと思います。特に僕らが始めた時は、3Dのアクションで合成のある作品というお手本がなかったので、そこを手探りでやって「あ、こういうやり方が出来るんだな」と思った時に完成した、みたいな感じですね(笑)。実はTV版の『牙狼』と、同じテイストにするのがもの凄く大変だったということがわかりました。TV版と印象を同じにするために、いかに立体映画でやるかというのが、かなりハードルが高いものにチャレンジしてたんだなと、後で感じました。みんな頑張っていたので、出来に関しては満足しています。
――雨宮監督はデン・フィルム・ エフェクトという合成の会社におられたのですが、私はそこの兄弟会社の日本エフェクトセンターに同じ日に入社したんです。ですから、僕たちは円谷英治の孫弟子にあたる世代なわけですが、そういうポストプロダクションの技術を知っているというのは、監督をやる上でも有効だったということですよね?
雨宮監督 特に今回に関して言うと、今まで合成をやってたのが良かったですね。やってなかったら……出来なかったかもしれないです。素材をみんなで考えたりするのもそうですが、お芝居でも後で原さんや小西にコンポジットされる実際の位置を考えて、立つ場所やお芝居の向きとかを計算して撮らなければいけなかったので、多分その合成とかが頭に入っていなかったら、現場で混乱していたかなという気がします。
――小西さんはTVシリーズと比べて、現場の雰囲気とかセッティングの面倒さとかはどのように感じられましたか?
小西遼生 セッティングは単純に倍くらい時間がかかる感じでしたね。
雨宮監督 休めたでしょ(笑)?まぁ、それも長回しが多かったからなんだよね。
小西遼生 そうなんですよ。1カット1カットの細かい撮り方というのは、TVシリーズの特徴だったんですけど、今回の場合は長回しで送るところとか、ここから先に出したら飛び出てくるという設定があって、そこを意識しての動きというのが多くて。単純に長回しというとアクションシーンは長く演ることになるので……。
雨宮監督 割と多用したのは引きの方で小西が殺陣回りを演って、一瞬スタントの人が演っているのかなと思わせて、手前に来るとちゃんと役者さんが演っている、といった感じで。そういう撮り方をしていると必然的に長いカットになるんですよね。
――ワイヤーも非常に多用されてますね。
小西遼生 そうですね……。アクションチームが一番最初の頃は丁寧に落としてくれたんですよ(笑)。それが手を離してるんじゃないかっていうくらいすごいスピードで落ちて「あ、ゴメンゴメン」って言われたりとかしました(笑)。やっぱり慣れですね(苦笑)。
雨宮監督 まあ、数少ない”空を飛べる”役者さんなので。
――フルで演じないと細かくカットを切っていくということが立体映画では出来ないので、1シーンを長く演じなければならない、と。
小西遼生 そうですね。やっぱりそういう部分により自分で演るという有用性が出るので、そこは逆に凄く新鮮な撮り方と言いますか、TVの時にはなかったことだったので良い挑戦になりました。
――原さんは特殊メイクとかは初めてでしたか?
原紗央莉 初めてでした。8時間くらいはかかるので、寝かせてもらいながらやっていただいたりですとか……。顔とか身体の全身の型を取る作業があるんですけど、それが鼻だけしか穴が空いていない状態で、粘土みたいなものを埋められるんですけど、私は結構恐がりなので、特殊メイクの方々が「大丈夫だよ、息できるからね!」って言われながら、目が見えない真っ暗な中で鼻だけで息をして20分待つとか、未知の世界に飛ばされた感じでした。実際に監督に筆入れをしていただいた時にも感動しました。私は絵とかがすごい苦手なので、ボディペインティングや監督の筆捌きなど、デザインがどんどん身体に仕上がっていく感じとかに凄い感動しました。
――迫田さんとしては、技術的なものは勝算ありで挑まれたのでしょうか?
迫田憲二 いや(苦笑)。今まで『牙狼』シリーズをずっとやらせていただいていたので、『牙狼』のシリーズというのは毎回色んなものへのチャレンジだったりするんですね。そういった意味では、今回は3Dということにチャレンジしつつ、最初の時点では3D以外は今までのやり方+αとガッツでいけると勝算はあったんですけど、最初の段階では立体視という面にちょっとわからないところがあって……。でも、そこは進めていきつつ撮影も流れていき、それと同時に部分的には制作の方もやりつつ一つ一つを踏まえていくことで、「こういう場合はこう見せられる」とか「こう見せたい時はこう出来る」とかが一つずつ分かってきて、「あ、これは時間がかかるけれど、確実にいけるな」というのはやりながら見えてきた感じです。
――今回でオムニバス・ジャパンとしては相当技術のノウハウを積んだのではないでしょうか?
迫田憲二 そうですね。今回の作品もCGに実写合成あり、フルCGのところもあり、実写だけのところに対して2Dの合成をしたりとか、全ての要素が入っていますので、そういう意味合いで言うと色んなノウハウは蓄積できたかなと思います。
――意外に作ってみないと分からないことがあって、例えばワイヤーを消去するという単純なことが3D映画の場合できなかったしますよね。
迫田憲二 そうですね。もともとアクション映画ですので、TVの時はとにかくワイヤー消しというのが多くて、それが今回果たして同じ様な形で出来るのかというのがあったのですけれど、最初のテスト撮影とか踏まえる中で、実際にTVの時と同じような形で消してみたバージョンと、もうちょっと手を入れて作ったバージョンとを社内で検討しつつ、「こういう方法でやるとバレてしまう」とか、線を一つ消すだけでも消し方を間違えると、その部分が飛び出して見えたりとか、奥に見えたりとかしてしまうので、そういった意味ではテストを踏まえて確実な方法を見いだして進めていった感じになりますね。
――雨宮監督としても相当この作品で「掴んだぞ」という感触はありますか?
雨宮監督 いやあ、掴んだぞまではいかないですけどね(苦笑)。なんと言うか、方法論は見えた感じがしましたね。お金をかけるところが何となく分かったという感じです。ある程度お金と時間をかけないと、イメージ通りのものは撮れないと言うか……。ただ工夫もあるので、なんとなく見えた感じはしましたね。
▶会見編1 ▶会見編2 ▶質疑応答編
- 原作・総監督:雨宮慶太
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