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『牙狼<GARO>~RED REQUIEM~』
完成記者会見/全発言記録

『牙狼<GARO>~RED REQUIEM~』完成記者会見
(左から、雨宮慶太監督、小西遼生、原紗央莉、迫田憲二/CGスーパーバイザー)

10月30日(土)から全国で公開される『牙狼<GARO>~RED REQUIEM~』は、人間の邪心に憑依してその生命を喰らう魔獣<ホラー>と、人間界に侵入する魔獣<ホラー>を狩る魔戒騎士の戦いを描いた特撮深夜番組『牙狼<GARO>』の劇場版にあたる。作品タイトルになっている『牙狼』とは、小西遼生扮する主人公・冴島鋼牙が有する魔戒騎士最高位の称号であり、彼が魔界より召喚する黄金の鎧の名前でもある。
簡単に言ってしまえば、本作は黄金騎士・牙狼になって魔獣<ホラー>と戦う鋼牙の活躍を描いた剣劇特撮アクションということになる。いわゆる『変身ヒーロー』の系譜に連なる特撮作品であり、緻密に構築された独特の世界観、役者自身による気合いの入ったアクション、情け無用で魔獣<ホラー>達を斬り伏せていく主人公のダークヒーロー的佇まい、特撮活劇の王道を行くヒロイックなストーリー展開といった、特撮に慣れ親しんだ視聴者を魅了せずにはおかない多くの要素が練り込まれ作品だった。
『牙狼<GARO>~RED REQUIEM~』特に深夜枠の大人をメインターゲットに据えた作品ということで、一般に子ども向けとされる従来の特撮ヒーロー作品に比して、各話で扱われるテーマやシーン描写に自由度の高い表現を実現していた点は、『牙狼<GARO>』を語る上で欠かすことのできない特徴と言える。子ども向けの作品では通常許されないであろうエロスや残酷、グロテスクな表現が随所にちりばめられ、雨宮慶太監督を筆頭に金田龍、梶研吾、横山誠といった各監督の個性と作家性を際立たせ、シリーズ全体に深みをもたらすことにつながっていた。
もちろん、『牙狼<GARO>』は単にエロ・グロ表現だけの作品というわけではない。ここで注目すべきは、『牙狼<GARO>』の世界における敵・魔獣<ホラー>の「人間の邪心に憑依する」という設定であろう。「人間の邪心」と書くと妙に漫画じみて聞こえるが、これは要するに、人間の情念や欲望、願望、執念、憎悪、恨み、妬み……といった、人間性の本質的な部分に光を当てることであり、同時にそれは魔獣<ホラー>を呼び込んでしまう人間の愚かさや弱さ、悲哀を浮かび上がらせることを意味しているのだ。

『牙狼<GARO>』がそうしたハードコアなテーマ性を内包しながらも、露悪的で悪趣味なだけの作品に堕さなかったのは、ひとえに人間の暗部を見つめながらも人間の可能性や”愛”に代表される善なる部分を主人公・冴島鋼牙(と彼の周囲の人々)に担わせ、人間存在の明暗をバランスよく描き出すことに成功しているからに他ならない。むしろ魔獣<ホラー>を呼び込む人間描写がグロテスクであればあるほど、そうした人間の愚かさや弱さに対峙しながらも、なお屈しない主人公の強さが逆照射されることになる。作中での鋼牙の勝利は、言うなれば人間性の勝利そのものを告げる凱歌として、視聴者の胸に熱く響き渡るのだ。
と言っても、主人公・冴島鋼牙は人間の善性を象徴するため完璧な人間ではない。一見ストイックな完璧人間に見えるが、実は脆さや不器用な部分のある一人の人間であることが少しずつ明らかにされる。そうしたヒーローとしての生き様や孤独、人間としての弱さ、それらを超克する成長の物語として、TVシリーズはこれ以上ない形で完結している。だからこそTVシリーズを観終わった視聴者の多くは、牙狼というヒーローの行く末と共に冴島鋼牙という人間の行く末を思わずにはいられなくなるのではないだろうか。

『牙狼<GARO>~RED REQUIEM~』2さて、『牙狼<GARO>』の魅力について駆け足で見てきたが、ここまで読んだ人の中には「TVシリーズ未見じゃ映画は楽しめないの?」という疑問を抱く向きもあるかもしれない。が、本作『牙狼<GARO>~RED REQUIEM~』に関しては、この点は余り心配しなくていい。実は、この劇場版にはTVシリーズで登場・活躍したサブキャラクターは登場しない。描かれるのは、主人公・冴島鋼牙(とその相棒・魔導輪ザルバのコンビ)による全く新たなる戦いだからである。この為、TVシリーズを観ておいた方が本作を何倍も楽しめることは言うまでもないが、基本的に初見の人でも『牙狼<GARO>』の世界と魅力を存分に堪能できるに違いない。アメコミは知らないけれど『スパイダーマン』や『バットマン』『Xメン』といった劇場用にリメイクされたハリウッド謹製のアメコミヒーロー映画を観に行ったことがある人なら、絶対に観て損はない一本と断言しておこう。( 仙道勇人 )

以下は、去る8月20日にアキバシアターで立体映像ジャーナリストの大口孝之氏の司会の元で行われた完成記者会見の模様をお届けする。

【STORY】太古より人間の邪心に憑依し、その生命を喰らい続ける魔獣ホラー。
しかし闇に忍び、魔獣を狩る使命を帯びた者達がいた。それが魔戒騎士、魔戒法師である。
ある日、最凶の魔獣・使徒ホラ-7体が復活、人間界へ降臨した。
魔戒騎士を統括する番犬所から指令を受けた冴島鋼牙は、管轄を越え“使徒ホラー”殲滅の旅に出る事となった。数日後、ホラーの気配を追って港町に辿り着いた鋼牙は、そこを管轄する魔戒法師のアカザ、その弟子のシグト、そして烈花と出会う。強大な敵に対し4人の協力が必至と思われたが、何故か烈花は「そのホラーは俺が倒す」と言い残し立ち去ってしまう……。

――近年、アメリカを始め様々な国で3D映画が作られていますが、本物の3Dというのは実は殆どないんです。『アバター』や『バイオハザード3』など幾つかは本物の3D――カメラを二つ使用して撮影する真っ当な3D映画というのは、実は結構少ない。今年公開される3D映画の大半は普通のカメラで撮影して、それを後処理で2D3D変換というやり方で擬似3Dにしている作品が殆どなのです。そうした中にあって、本作は本当に真っ当なやり方を使った、日本だけでなく世界でも珍しい作品になっています。
雨宮監督この『牙狼』は、2005年12月から翌年の3月まで深夜放映され、雨宮監督独特の筆文字を使ったようなスタイリッシュなデザインカットやダイナミックなアクション、スケール感の大きさなどが多くのファンを惹きつけ、番組終了後も(ファンの支持が)段々広がっていって、ゲームやフィギュア、シルバーアクセサリー、小説、パチンコ「CR牙狼XX」といった形で発展していき、遂に今回の劇場版、しかも本格的な3Dという形になりました。
今回の3Dは非常に冒険だったと思うのですが、実は余り知られていないことなのですが、日本では極めて珍しいことに、雨宮監督は3D作品を複数監督された経験がある方なのです。

雨宮監督 本格的に(3D作品に)入るのはこれが初めてなんですけども、ずっと展示映像ですとか常設館ですね。例えば東京電力館で過去に流していた作品などは演出をやらせていただいていました。

――89年の『生命の誕生』ですね。

雨宮監督 はい、まだフィルムの時ですね。

――今回はデジタルでしかも3Dという形で撮影されたわけですが、小西さんは実際に作品をご覧になっていかがですか?

小西遼生 僕個人としましては、この『牙狼』という作品自体が映画化するというのは念願というか、TVシリーズをやっているときからスタッフの人たちとも「これは映画の様なサイズで観たいよね」と言っていた作品だったので、まずはそこの感慨深さが凄いありました。あとは3Dというのも、オープニングから監督が作った魔導文字だったり、アクションのシャドウだったりが凄くアクティブに動いていて、普通の平面であればそれが横に動くだけだったりなんですけど、迫ってくるとか3D特有の迫力というのが本当に感動しましたね。それをやっぱり自分で演じることができるというのは、日本でも自慢できることでもありますし(笑)。

――本来平面である文字がああいう風に立体的になっているというのは、非常に面白いアイデアですね。

雨宮監督 そうですね。よく3D映画だと石が飛んできたり、槍が飛んできたりというのは常套表現なんですけど、『牙狼』の場合は、極力そういうよくあるような3Dカットは無くそうとしました。その代わり『牙狼』でしか観られない飛び出し感のものを作りたいな、と。『牙狼』であればやっぱり魔導文字――僕の描いた文字を立体であるように見せるにはどうしたらよいのだろうと試行錯誤して作りました。

小西遼生1――映画用語では『ぬすむ』と言って、アクションをやる時に本当に当ててないんだけど、カメラの位置のトリックで本当に当てているように見せるという撮り方がありますが、この作品は3Dであるがために実際に当てないとダメだったそうですね。

雨宮監督 そうですね。いつもは空振りでやるのですが、今回は本当に当てないとバレちゃうんですよね、3Dだから。当たっていない状況が分かっちゃうので。大分当ててもらいましたね。

小西遼生 そうですね(苦笑)。

雨宮監督 この作品は刀を使う話なので、いつもはジュラルミンの刀で当ててやるんですけど、それも「ぬすみ」がバレちゃうので、今回は特別にゴムにメッキをかけるという新技術を開発しました。劇中で皆さんがご覧になっているのは殆どゴム製の剣なんです。これで大分、役者さんのストレスが無いよう立ち回りが出来たかなと思います。

小西遼生 斎藤洋介さんと一緒のシーンで、斎藤さんの首元に剣をグッとやる所があったのですが、3Dだからギリギリを狙った方が良いかなと思って本番でやった瞬間に(雨宮監督「あごに当たりそうになってたよね」)後ろで「ひっ!」って声がして(笑)、カットがかかって観てみたら凄いギリギリだったみたいで。まぁ、成功はしたんですけど……。

雨宮監督 でもあれはゴムの剣だったから思いっ切り振れたわけだよね。

小西遼生 そうですね。

会見編1 会見編2 質疑応答編

牙狼<GARO>~RED REQUIEM~ 2010年 日本
原作・監督:雨宮慶太
出演:小西遼生,松山メアリ,斎藤洋介,倉貫匡弘,笠原紳司,江口ヒロミ,原紗央莉,時東ぁみ
影山ヒロノブ(声の出演),津田寛治,中尾 彬
エグゼクティヴ・プロデーサー:二宮清隆 脚本:江良至、雨宮慶太 設定:田口 恵 アクション監督:横山 誠
特別協力:サンセイアールアンドディ 技術協力:オムニバス・ジャパン 製作・制作:東北新社
配給:東北新社/ゴー・シネマ (C)2010 雨宮慶太/東北新社
公式

2010年10月30日(土)より、新宿バルト9ほか全国3Dロードショー!

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  • 原作・総監督:雨宮慶太
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2010/10/13/21:31 | トラックバック (0)
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